一話 誘拐、拷問、そして...
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ん?なんだ?真っ暗だ、どうなってる?
現状確認、俺は今椅子に座っている。そして後ろ手に手を縛られ足も椅子の脚に縛られているようだ。
視界が真っ暗なのは目隠しをされているからか。口は塞がれていないと……。
なるほど、どうやら拉致監禁されているようだ。
心当たりは... 正直あり過ぎてわからん。
「よぉ、お目覚めか? 死神さんよぉ」
「あぁ」
男が話しかけてきた、声的に男だ。俺が現状確認するためにモゾモゾしてたのに気付いたらしい。それに答えてやった。死神と呼ばれた事も肯定してやる。
「なんでこんな事になってるか分かるか?」
「いや、心当たりがあり過ぎてわからん」
「ハハッ! だろうな! テメーのせいで俺たちはもう終わりだよ! 俺たちはな、お前に壊滅させられた組織の生き残りだ!」
生き残り?にしては多すぎるようだが。
「そうか、どこの組織だ?」
「全部だよ! お前にやられた全部の組織から集まったんだ! みんなお前に恨みを持ってる! 今すぐブチ殺したくてたまんねぇ!」
「なるほどな、多すぎると思った。 じゃあ今すぐ殺したらどうだ?」
正直もう自分が助かるとは思ってない。
俺の周りから200ぐらいの気配がする、全部から殺気が放たれているしな。
俺は死神という通り名のとおり、たくさん殺してきた。それが仕事だったからな。いつかこんな事になるとは思っていた。
「いや、今すぐは殺さない。 お前がどこの組織のやつなのか吐かせてやる! 一体お前は何なんだ! 一人であんな事が出来るわけない! 他の仲間はどこにいる!」
言うわけがない、こいつは尋問には慣れてないようだな。俺が色んな組織の重要人物、その配下まで殺して壊滅させてるから下っ端の奴らしか残ってないんだろう。
よく俺を見つけ出して誘拐出来たな、そこだけは褒めてやろう。
「よく俺を見つけて捕まえる事が出来たな、なかなかやるな」
「ハッ!簡単だったぜ?酒で酔って寝てる所を掻っ攫ってバンに乗せて連れてきたのさ!」
あぁ、確かに今日は酔い潰れるまで飲んだ。 次のターゲットを尾行してキャバクラに入ったらちょっと楽しくなっちゃったんだ。 まぁ必然ではあった。
「しかしどうして俺が死神だとわかったんだ?」
「ハッ! それはだな、とある情報屋が...」
「アニキッ!」
「おお、言う必要はないか。 これからはこっちの質問タイムだ!」
部下の一声のせいで聞き出せなかったか。まぁいいさ。
そして拷問が始まった。
………
……
…
「いい加減吐けや!」
何度も殴られて俺の顔はボコボコだ。それでも口を割らない俺に業を煮やしたか。
それにしてもこいつら拷問する気あんのか?ただ殴るだけじゃ苦痛にもならん、いや痛いけど。
しょうがないから口を開いてやろう。
「おい、一ついい事を教えやろう。」
「お?やっと口を割る気になったか!」
「あぁ、死神は俺だけじゃない、たくさんいるんだ。 もしかしたらもうお前達の事は目に入ってるかもな。 俺を殺したところで奴らはお前達全員を刈りに来るだろう、せいぜい頑張る事だな。 クハハハハ!」
「「「ひっ!」」」
ハハハ! 揃ってビビってやがる!
まぁたくさんは嘘だ。 俺の後輩が2人いるだけだ。
こいつらは俺の後輩達がなんとかするだろう。 俺に付いてる仕込みマイクでこの会話はあいつらに届いてるはずだ。 まぁ俺の救出は無理だろうが。
「くそっ!さっさとそいつを殺せぇ!」
やけになった男が叫び、銃声の音が響いた………
……ん?なんだ?やけに静かになったな。 俺は...死んでないな。
少し身動ぎすると額に硬いものが当たった。 これは…… 銃弾か? 時間が止まってる?
突然足元が光り出した。 目隠し越しでも分かるほどの光が一気に広がっていく。
なんか、魔法陣みたいだな。 なんだ? 後輩が助けに来てくれたのか? なかなかやるな。
でも、なんか変だ。
光に吸い込まれるような……
視界が白く染まって行く……
発砲された銃弾は目標の人物がいた場所を通り抜け、そのまま壁に着弾した。
「き、消えた……?」
そしてその場に残された男達の声が響いた。