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SOLITUDE WAR  作者: トロワ
4/4

FILE4 遭遇

田中は、近くにある小高い丘へ移動し、集落を双眼鏡で覗いていた。

眼下には隔絶された集落が広がり、田中は白鳥村の大きさに驚いていた。


吊橋が落ちた今、唯一の道は村の中央へ続く大きな道のみだったが、そこはテロリストによって封鎖され、車両はおろか人さえも通れない。

無理に通ろうとすれば射殺されるだろう。


その道が事実的に封鎖され、白鳥村は今、文字通り陸の孤島となっていた。


「ここからだとよく見えるな。中央の道とはあの事か。」


田中は双眼鏡で白鳥村内の偵察を行っている最中、封鎖された道(中央道)を発見した。


その先にはテロリストの車両が何台も配備され、道には手製の要塞が築き上げられている。

道の両端には土嚢が積み上げられ、RPKと思わしき重機関銃が二門配置されていて、その後ろには家具やら廃車両が道を塞ぎ、土嚢も積み上げられている。

そのまた後ろではテロリストの門警の詰所になっていると思われるプレハブが何個もおかれていて、プレハブ内にはパイプ椅子に座って酒を飲んだりタバコを吸ったりしているテロリストが大勢いる事を確認できた。


「アイツら、朝っぱらから酒飲んでやがる。さすがロシア人と言ったところか。」


田中はそう呟くと村内部へ視線を移す。

村の内部はテロリストが銃を持って徘徊していた。


「ん?なんだあれは?‥」


田中が不信に感じ、ある集団を見た。

数名のテロリストが日本人を6名銃で脅して建物へ入れている。

年代も性別もバラバラだ。


「民間人を処刑するのか?急がなきゃヤバイな‥」


そう思った時、丘の下の方から誰がが数名こっちに向かってるのを発見した。

伏せた体勢のまま、田中は腰につけた弾帯の中からドーランを取出し、顔に塗り付けた。


ドーランというのは、茶色や黒や緑や黄色といった顔にまばらに塗って迷彩効果を高める物である。

さながら自衛官の化粧道具だ。

田中は素早い手つきで、顔を塗り、更に唇、まぶた、耳や耳の中、首、に各色を塗り付ける。

顔を塗っても、耳や首を塗ってないと結局見つかる羽目になるのだ。

このドーランという道具は夜間特に効果を発揮する。


夜間というのは白い物は特に目につきやすくなる。

一度試してみてほしいが、夜に肌をさらすのとさらさないのとでは歴然の差がある。


田中はその後、少し離れた草むらに移動し、ゆっくりと伏せの体勢に移行した。


足音が段々と近くなる。

何やら話してるようだ。

ロシア語が近くになればなるほど、田中の心拍数が上がっていく。

田中との距離約3メートル。

テロリスト達は手にAK47を持ち、防寒のためか顔にはフェイスマスクをしている。


(こいつら期待を裏切らないようなテロリストの格好だな。)


田中はそう思い、見つからないことを祈った。

今少しでも音を立てれば自分はAK47から放たれる7.62mm弾によって蜂の巣にされるだろう。


足音と話し声は段々と遠ざかり、田中はほっとため息をついた。


「多分吊橋を確認しに行ったんだろうな。ヤツらに見られたら誰がが通ろうとしたことがバレてしまうな。さぁて、どうするか‥」


田中は考えた挙げ句、取り敢えず今は無視する事にした。

相手は3人でアサルトライフルを持っている。

ヘタにやりあわない方が得策だろう。


田中はまた場所を移動して、丘を警戒しながら下る。


木立に囲まれた場所で腰を下ろし、弾帯のタバコケースからタバコを一本取り出してジッポライターで火を着けた。

あまり戦場でタバコはよくないのだが、田中は張り詰めた気をほぐすために一服も必要だと考えていた。

それにここは敵も通らないだろう。

地面には足跡が一つもない。


田中はタバコをくゆらせながら今後の行動を考えていた。


(まずはテロリストの手薄な場所から侵入するとしよう。南側から侵入するのがよさそうだ。その後、村を偵察。テロリストは一人で排除するのが難しいから二の次だ。今は暁鈴音の捕われているあのばかでかい屋敷に潜入して暁鈴音の位置を特定しなければならんな。)


田中は紫煙をうまそうに吐き出し携帯灰皿にタバコを捨てた。さすがにそこらに吸殻を捨てると見つかる可能性がある。



田中はリュックから陸自迷彩柄のテープを取出し、89式小銃に巻き始めた。

銃もテープ等を巻いて擬装すると見つかりにくくなる。

ストックとハンドガード、マガジンに滑り止めの機能のついたテープを貼ると、握りしめ感じを確かめる。


満足した田中は89式小銃を握りしめ村へ向かって進んでいった。



「こちら山蛇。ただ今白鳥村へ向けて前進中。先ほど、テロリストと思われる集団に遭遇した。以上。」


田中は無線機で本部に連絡を入れるとすぐに返信された。


「こちらHQ。了解した。大丈夫だったか?詳しく報告せよ。」


「こちら山蛇。草むらに伏せていたのでバレなかった。テロリストは3人。AK47で武装し、多分吊橋の方面に巡察に行ったと思われる。以上。」


「こちらHQ。把握した。引き続き前進してくれ。」


田中は、話してる相手が自分の小隊の上官だなと思いながらどこか安心した。


「こちら山蛇。了解した。引き続き任務を続行する。」


そのまま集落へ続く道を歩くと、集落の向こうにある大きな屋敷を目指した。


「とにかくあそこまで行かなければならんな。だが昼間に村へ入るよりも夜間に潜入する方が無難か‥偵察しながら様子を伺ってみよう。」


89式小銃を構えながら森を進んで行くと、前方からまたしてもテロリストが二人こちらに歩いてきている。


(またかよ!取り敢えず隠れてやり過ごそう‥)


田中は木が生い茂った中に身を潜めた。


その時、甲高い叫び声が聞こえ、テロリストが手に持った拳銃を構えて辺りを警戒し始めた。


(なんだ今の声は?人間にしては動物みたいだったな。にしても、状況が悪くなったぜ‥)


身を潜めながら89式小銃をテロリストに向けて構える。安全装置をゆっくり外し、タ(単発)に合わせた。


テロリストに狙いを定めると、ふいにテロリストの側面から何かが飛び出してきた。


それは、半裸の女だった。

むき出しにされた体からは胸を曝け出し、一見した所こいつは狂ってるのではと思える出で立ちだった。


「まさかテロリストに捕まえられてた人間が逃げ出してたのか?ならば助けなければ!」


田中が動こうとした瞬間、意外な事が起きた。

ふいを突かれたテロリストが拳銃を向けようとした刹那、女は相手を押し倒して一気に喉元に噛み付いた。

男は必死になって抵抗しようとするが虚しく、女が喉笛を噛みちぎった。

あふれ出る鮮血を体一面に浴び、女の白い身体が赤く染まった。それを見たもう一人の男が腰を抜かし、後退りする。


女は食い千切った男の傷口に指を突っ込み中身を抉る。

ぐちゃぐちゃという湿った音がこちらにも響いてくる。

その後、首を捻り力任せに引きちぎった。

胴体からあふれ出る鮮血は辺り一面を真っ赤に染め、枯葉をも赤く彩る。


男がロシア語で叫びながら背後へと後退るとちぎれた首を舐め回していた女は首を捨て、新たに獲物を選定した。


「おいおい‥こいつ狂ってるにしてはやりすぎてないか?‥」


田中は愕然としながら目の前で行われている殺戮を、ただだ見るしかできなかった。

田中も自衛官だ。故に凄惨な死体もその手の教育でプロジェクターを使って見させられたが、生でこのような殺戮を見せられるとは思いもしなかった。


後退りする男は努力虚しく捕まえられ、同じように首を噛みちぎられ絶命した。


その後、女は周りを見渡している。

気配がしたのだろうか?

田中は額から冷や汗を流し息を潜める。


(襲ってきたら発砲するしかないな‥だが銃声でテロリストにバレる事は避けたい。万事休すだ!)


キョロキョロと辺りを見渡している女を観察すると、おかしな点が目についた。


まず、あの女は元々奇形なのか?

皮膚は爛れ、あちこちから何かをポロポロとこぼしている。

手も異常な程長い。

顔もしわだらけで落ち窪んだ眼窩からは爛々と光る目が獲物を捜し求めている。

醜い顔だ。

一言で言えば、

「化け物」だった。


化け物はしばらく探していたが、田中を見つけられなかったようで森の奥へと去っていった。


田中は10分程様子を見て戻ってこないのを確認すると、死んだテロリストの下まで向かった。


テロリストは凄まじい苦痛の表情で絶命している。

大量に出血したせいか、白人だったのにそれ以上の白い肌になっていた。


「ひでぇなこりゃ‥」


田中は苦虫を噛み潰したような表情をし、テロリストから視線を外した。


テロリストの足下に落ちている拳銃を手に取り確かめる。


拳銃は、コルトガバメントM1911A1だった。

口径は45口径、弾は45ACP弾、装弾数7発の大型拳銃だ。

第二次世界大戦で米軍が使用し、それから半世紀程は米軍の制式採用拳銃だった。

信頼性も高く、威力も申し分ない。

死体のポケットからはマガジンが大量に出てきた。

銃に装填されてるのを含め、合計7個だ。

田中は、マガジンを胸に装備したアサルトベストのマガジンポーチに全て入れた。


もう一つの銃はロシア製のマカロフだ。

正式名はPM。弾薬は9mm×18で装弾数は8発。

ロシアで使われている小型の拳銃だ。

反動が比較的小さく、扱いやすい。

この男もマガジンを計五つ持っていた。


田中は男からレッグホルスターを取り、自分に装着し、ガバメントをホルスターに収めた。

マカロフはもう1つのホルスターを奪い、リュックに入れた。


「これでよしっと。ライフルだけじゃ近接戦闘ができないからな。にしても、敵はテロリストだけじゃないのか?あの化け物はなんだ?‥とにかく俺は進まなきゃならん。」


田中は、改めて装備を点検し、集落へ向け前進した。

なかなか話が進まないんですがすみません。今までが序章的な物なので、これからが本番だと思って下さい。暖かい目で見守ってください。

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