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SOLITUDE WAR  作者: トロワ
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FILE1 プロローグ

ご拝読ありがとうございます。皆様の暇を潰すお供になればと思います。ちなみに、内容的にはアクションとホラーの中間に位置しています。のんびりと応援よろしくお願いします。

目眩がする‥

ぼんやりと目を開けるとそこは銃弾が飛び交い、爆発が起こり、地面に銃弾があたり砂がはぜ舞い上がる世界‥

意識が朦朧とする中、俺の頭の中には一人の人が浮かんでいた。


「こんなとこで死ぬ訳にはいかんな。」


俺は軽く頭を叩き意識を戻し、横に落ちている相棒でもある銃を拾い上げた。

「この銃はな、陸自の誇る89式小銃だ。口径は5.56mmで装弾数は30発。お前の黄泉路への案内者だ。」


乾いた銃声が辺りに響いた‥


事件の発端は、それから数ヶ月前に遡る。


とある気持ちいい秋晴れの平日。

訓練に勤しむ男がいた。

男の名は田中渓斗。

陸上自衛隊の通信科に勤務する陸士長だ。外国軍で言う上等兵の階級と言えばわかりやすいだろうか。

年齢は20歳。特徴はと言えば大柄で、あまり銃を使う事のない通信科だが銃には精通している。

しかし、別にレンジャー並みの体力があるわけでもなく、至って平凡な自衛官だった。


「ほら、ラスト一週だ、頑張れお前ら!」


今は武装走の訓練中で、重装備で銃を持ち走るという競技の練習中だ。

しかも銃は旧式の64式小銃。新型(とは言っても配備されてから20年近く経過しているが)の89式と比べると顕著に重量の違いが身に染みる。


上官の激が飛ぶ中、田中は汗だくになりながら走る。

息は切れ、迷彩服も汗だく、足も痛みだしている。


「クソッ、早く終わらねぇか。」

田中は苦虫を噛み潰したような表情でラストスパートをかけて疾走する。

ようやくゴールに到着し、肩で息をしながらゆっくりと歩くと、同期からお疲れさまとスポーツドリンクを渡された。


「ありがと。助かるぜ。」


一気に飲み干して同期を見ると、同期でもあり親友でもある高西士長に礼を言った。


「これメチャクチャキツいからしゃあないて。」


笑いながら田中の肩を高西士長が叩く。

教育隊からの付き合いだが同期の中では一番気が合い今に至る。


「とにかく今日はこれで終わりだから課業後はのんびりしようや。」


そう高西に話すと、高西は険しい顔付きになる。


「今日はそうもいかんっぽいで‥」


関西弁の訛りでしゃべる高西がそう言った。


「え?なんかあったのか?」


田中がそう聞くと高西は小声で話しはじめた。


「なんかな、最近俺らの管轄内のある田舎の村で不穏な動きがあるらしいで。」

不穏な動きってなんだ?と田中は考えたが、スッキリする答えは得られなかった。


「不穏な動きというと?」


高西が答える。


「なんかどこかの外国人やらが村でコソコソやってるらしい。詳しくは知らんけどその事で何か話があるんだとさ。」


説明した高西に田中がため息をつきながら答える。


「そんなん警察の管轄じゃねぇか。わざわざ俺ら自衛隊が動くような事でもないだろ。」


「それがそうでもないっぽいで。とにかく1600に会議室集合だ。」


そして田中と高西は会議室へと向かい、事の概要を聞く。部屋には部隊の面々が揃っていた。

いつもの陽気でおちゃらけた雰囲気は消し飛び、皆真剣な表情でプロジェクターに映された映像を見る。


映像は田舎の寒村の航空写真に始まった。

田舎の村と聞いていたのでもっと小さなのを想像していたが、意外と大きな村だった。

田舎によくある木造の建物が無数に並び、集落の中心と森の中に巨大な屋敷が広がっていた。

後は木々が生い茂った森や山、田畑や川、集落があるだけだった。

プロジェクターが次の映像を映し出す。

森の屋敷に人がわらわらと集まっている。


「これのどこが有事なんだ?」


田中は一人ぼんやり考えていた。

上官から説明がある。


「えー、現在この白鳥村では非常事態が発生している。」

非常事態?なにが起こってるんだ?

嫌な予感が体を駆け巡る。


「白鳥村では現在、東欧系テロリストが占拠している。この屋敷内が東欧系のテロリストと思わしき集団が拠点としている場所だ。」


テロリスト!?

最近物騒になってきたが未だ平和な日本にテロリストぉ!?

田中は驚愕して話を聞いた。


「ちなみに警察が地域住民からの要請を受けて出動したがことごとく殺害されたらしい。今回の事はマスコミには報道されていない。」




そこまで重大な事件なんて今まで無かっただろな。



「それと、世界的企業の暁グループのご息女の暁鈴音が数日前に誘拐された。

身代金を要求している。

額は50000ドルだ。

我々が作戦の要として出動する。」


田中は、聞きなれないドルに戸惑いつつも、人質を取ったテロリストに嫌悪感を募らせた。

さぞかし親は苦しんでるのだろう。いくら金持ちでも子供を誘拐されれば眠る事もできないだろうし食事も喉に通らないだろう。


「作戦開始は明朝の0500時。各員装備を準備するように。質問は?」


咄嗟に田中が挙手をする。


「なんだ田中士長?」


直属の隊長でもある1尉が目を向ける。


「何故我々なんですか?いえ、何故空挺部隊等が先に行かないんでしょうか?それに、我々通信科だけというのも疑問に思います。」


先ずは特殊部隊等のエリートが真っ先に向かうが常だ。

しかも、後方支援の通信科だけだなんて聞いた事がない。

「それがだな‥言いだしにくいんだが‥」


隊長が言いだしにくそうに続ける。


「暁グループの総帥である暁源一氏が大事にしたくないと言ってるんだ。もし過剰な反応をして娘を殺されたらとんでもないと聞かなくてな、無線等で連絡系が確実にできる我々だけの小人数での作戦になってしまった‥

こんな事では連携もとれる訳ないが、やるしかない。」


隊長は苦悶の表情で語った。

それはそうだ、部隊は他部隊との連携があってこそ効率良く作戦を進められる。

我々だけでは連携もくそもない‥


「分かりました。ちなみに第1中隊や本部管理中隊は出動しますか?」


「いや、我々第2中隊だけだ。これはかなり厳しい作戦となる‥」


なんてこった!

2中隊だけでの作戦なんて規模が知れてる。

田中は今改めて自分に死が近づいているのを感じた。


「よし、各人準備をせよ!別れ!」

隊員が敬礼をし、作戦に向けて準備を始めた。


この先地獄が待ち受けていることをまだ田中は知らなかった‥

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