追跡
16名の〈宝〉が最終的に辿り着く場所は【ヒノサククニ】だと、ルーク=バースを筆頭にする〈陽光隊〉も目指すと誓う。漸く【サンレッド】に到着をするが《関所》を潜り抜ける為に再びアクシデントが起こる。
陽光隊の一員であるタッカを連れ戻す。
ルーク=バースはタクト=ハインとバンドを引き連れて、タッカが居ると思われる【センダ坑遺跡】へと転送装置で移動をするーー。
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月は雲に被り路は闇に覆われる。
それでもルーク=バースは僅かな月明りに照らされる錆び付いた鉄の櫓に視線を注ぎ込む。
バースが見るのは【センダ坑遺跡】のシンボルタワーだった。
「不思議です。とっくに崩れて無くなっているだろうの『歴史』が形を留めている。まるで此処だけは何かの“力”が働いているとさえ思えてしまいます」
タクト=ハインは夜風で髪を靡かせてバースが見つめる先に目を凝らしながら言う。
「アニキ、あんたはタイマンと此処に来ていた。その時に見つけたのは何だった」
「大したものはない。バンド、今はタッカの足取りを追っている。まあ、タクトが言うことにはビンゴだろう」
バースは右の親指で鼻を擦ると膝を曲げては伸ばすを繰り返す。
「準備体操はしっかりとする。ですね、バースさん」
「ああ、でないと擦り傷だけでは済まないからな。タクト」
「“闘いの力”のロック解除はどうする」
「一応しろ、バンド。タクトは俺から絶対に離れるな」
「いえ、僕だって陽光隊の一員。バースさんの足手纏いは致しません」
タクトは左手首に巻く装置のスイッチを右の指先で押すと、闇の奥へと突き進むバースとバンドを追い掛けていくーー。
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コンクリートの壁に塞がる鉄の柵をバース達は飛び越える。
「待て、バンド。そっちに行けば何処に出るのかは分からない」
バースは右に見える坂道へと駆けて辿り着くトンネルの入口で佇むバンドを呼び止める。
「アニキ、こいつは意図的に破壊されている。何者かが此処を通っているという可能性はどうなのか」
バンドは石畳に落ちている板の破片を拾うとバースへと差し出していく。
「〈遺跡荒し〉の仕業でしょうか。バースさん、炭鉱内の鉱石は大昔に堀尽くされて一片たりとも残ってはいないのでしょう」
タクトは足元の黒い塊に手掴みをする。
「タクト、この奥は一説によれば炭坑と炭坑を繋ぐトンネルとなっている。遺跡の研究者が調査に入ったは良いが、誰一人戻っては来なかった」
「……。僕達が知らない【何処】かがあるのでしょうか」
「【何処】かがあっても俺達は行くことは出来ない。さっさとタッカを探すぞ、タクト」
「了解」
タクトはバースに手招きをされると、敬礼をして付いていくーー。
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ーー大声を出すな。
ーー矢鱈に手を触れるな。
ーー足元に気をとるのではない。
煉瓦作りの建屋、人が活気に満ちていただろうの痕跡。狭くて暗い通路。
バースは【遺跡】内を進んでは尽くタクトとバンドの足を止めるを繰り返す。
「バースさん、何だか焦ってるみたいですね」
タクトはバースの態度にうんざりとなっていると云わんばかりで右隣にいるバンドに言う。
「ぼやくな、タクト。此れだけ探しまくっているのに肝心の『奴』どころか手掛りとなるモノに出会さないのだからな。おっと、今度は『伏せろ』とアニキが合図を送っている」
バンドはタクトの右腕を掴むとコンクリートの床へとうつ伏せになる。
「バンドさん、そんなにくっつかないでください」
タクトはバンドに背中から押し潰される苦しさで藻搔く。
「黙れ。ホレ、前をよく見ろ」
タクトは渋渋とバンドが示す顎の先を目で追う。
生温い風が吹き込み、間を置くことなく鈍く光る塊が次から次へと通過していく光景に、タクトは息を吐くことを忘れてしまうほどに驚愕をする。
「へっ……。随分と丁寧な歓迎を受けたぞ。だよな、バンド」
「ああ【遺跡】の亡者と〈闇〉そのもの。どっちだろうな、アニキ」
「バンド、そんなもん決まってるさ。タクト、俺とバンドがくたばったら後を任せる」
「『ノー』です。バースさん、さっき僕が言ったことを忘れたのですか」
「ははは、悪かった。ならば、頼むぞーー」
ーー『相棒』よ……。
バースが歯を見せて笑みを湛えると、タクトとバンドは立ち上りながらそれぞれの“光”を掌から輝かせるーー。