陽光臨戦〈3〉
ルーク=バースはハーゲ=ヤビンが率いれる軍隊と対峙の最中、ロウスに転送装置を託す。バースの意図は何を目的とするのか?
【ヒノサククニ】を目指す陽光隊。彼等は運命の扉の鍵を手にする事は出来るのだろうか?
物語は、急行……。
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「タッカ“防御の力”をタクトとアルマに被せろ」
「ああ。しかし、あのお方と闘うのは正真正銘〈軍〉を敵に回す事になるぞ? バース」
「嫌ならハゲ茶瓶側に行けよ。心置きなくおまえを仕留めてやる」
「お断りだ」
タッカは前髪を掻き分けた掌で“緑色の光”を輝かせて帯状に象らせると、タクトとアルマに向けて解き放つ。
「バース、おまえは次から次へと何を考えているのだ?」
アルマは“光の帯”の端を握り締めると螺旋状にして身体に巻き付かせる。
「ご覧の通りだアルマ」
「話が見えないっ! タクトも何か言うのだ」
タクトもアルマと同じく“光の帯”を伸ばす腕に巻き付かせると全身を緑の光で瞬かせながらバースと目を合わせる。
「僕達にタッカさんの“力”を被せるくらいだからあの方は凄まじい“力”を持っている。先を目指す為には避ける事は出来ない闘いになる。そう、受け止めます」
「タクト、おまえを巻き込んですまなかった」
「謝らないでください【国】に辿り着く為の関所が此処でしたよね?」
「その前に扉と鍵が今いる場所の何処かに隠されている。手掛かりは『16』と『血』だ」
バースは掌を“橙の光”で輝かせると剣に象らせて握り締める。
「あの人がご存じと、いうことでしょうか?」
「色々考えてもきりがない。 タッカ、ザンル。援護を頼む」
ーー了解っ!
バースは駿足してハーゲに“橙の剣”を振り上げる。
タッカとザンルも後を追ってそれぞれの“力”を発動させて立ち向かっていった。
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タクト=ハインは双方の激突に目を瞬きをする事なく、息を呑んで見つめていた。
目の前で繰り広げられている出来事は、タクトにとっては空想的と思う一方、紛れもない現実に戸惑いも覚える。
バースは本当に軍人だった。
自分もこうして彼の傍にいると言うことは、いつかは本物の武器を手にして〈戦〉に赴くのだろうか?
もしも関所を潜り抜けて先を目指す最中に〈戦場〉と遭遇した場合、自分はどうなるのだろうか?
「タクトッ! 何をぼんやりしているのだ」
アルマの叫び声で我に返るタクトは迫り来る“力の弾”を両腕を伸ばして掌から解き放つ“蒼の光”で消滅させると同時に衝撃波が反動となって、後方に弾け飛ばされる。
「ごめんなさいアルマさん」
「実戦と全くもって同じ状況だっ! バース達はおまえはおろか、この私を護る余裕はない」
「だから、バースさんはタッカさんの“防御の力”を僕達に被せるようにと指示をした?」
タクトは背後のアルマに身体を支えられていた。そして両腕に僅かながら痺れを覚えるのであった。
「あの人の“力”の輝きは燻んでいるのですね?」
「何だと? タクト」
「バースさん達の輝きは眩しくて堪らないのに、あっちはまるで煙りが立ち上るみたいに黒ずんでいます」
アルマはタクトの言葉通りの光景に険相して身震いをする。
「こんなこと……信じて堪るかっ! バースはあのお方の身に起きた事を察していた。私はそれすらも見抜けていなかった」
「アルマさん。僕が言った事に対して物凄く怒りを表しているように見えますけど?」
タクトは恐る恐るアルマに訊くとアルマは吐き気を伴うような仕草で足元に崩れ墜ちる。
「おまえの所為ではない。あのお方は最悪なものに染まっていた」
ーー《闇》が入り込んでいる。
アルマの啜り泣きとともに突かれた言葉がタクトを震え上がらせていった。