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完結済の「ヒノサククニ」の改稿版です。

〈急行〉と加えたのは、連載中では反映されないエピソードを割愛する目的も含まれています。が、新たな展開も有るかもしれません。今一度、彼等の物語にお付き合いを宜しくお願いします。

紅い列車は闇夜に橙色の光を照らして発車する。


ルーク=バース“力”を持つ子供の護衛任務の責任者。


隊員のタイマンと共に罠を突破する為に列車を降りた。


其から数日後再び列車に乗る。

迎えたのは弟分のタクト=ハイン。そして――。


「アルマ」

 バースはアルマを腕の中に手繰り寄せると息を耳元に吹き込ませる。

「場をわきまえろ」

 アルマは爪先を伸ばしてバースの頬に唇乗せる。


「久し振りのロウスの飯旨かった」

 がふり、とバースより吐かれる息にアルマは険相すると自室に入り扉の錠を掛ける。


「あっちに挨拶させろよ」


 ーーこの馬鹿野郎!


「おーい」


 ーーしぶといっ!


 激昂のアルマに落胆して渋渋とバースも自室に向かい、扉を閉める。


 バースは間接照明に照らされ淡く茜色に染まる室内のベッドに身体を押し込めて、目蓋を綴じながら時を遡らせる。


 ――バース。いつかこの地に風を吹かせて――。


 四年前〈あいつ〉が言い残して《陽が咲く大地》の向こうにある【国】を目指していった。

 

任務離脱のどさくさに俺はあいつが向かった先の手掛かりを探しまくった。


〈あいつ〉それはタクトの母親。

その事実を伏せて誤魔化し騙かしでタクトを俺の部隊に誘い込んだ。


 タクト、アルマから聞いたぞ。おまえ『先を見たい』と言ったのだと。


眠い……。まあ、詳しい経緯は明日にでも訊く。


布団で寝るがやっぱりいいな。


――野宿はさすがに懲りた――――。

 

「バース」とアルマがバースの部屋の扉をノックする。


「まだお休みされていなかったのですか? アルマさん」

「人の事を言えるのか? タクト」


タクトとアルマが通路に佇んでいる頃、バースは時々噎せながら鼾を高らかに寝返りしてベッドから床に落下するが、微動せずに夢心地を貪り続けていた。



 ========



「曇りですよ、アルマさん」

「つくづくおまえというやつはーー」

「何ですか? 言い掛けて引っ込めるなんて、嫌ですよ」

「いい加減私を困らせるな!」

「その言葉、そのまま返します」


「朝っぱらから何をケンケン言い合ってるのだよ?」

タクトとアルマは押し問答を止めて振り返るとバースが欠伸をする姿があった。

「何だ? 寝癖かどうか分からない髪の形は!」

アルマはバースの出で立ちに呆れた形相を剥けて言う。


「寝坊したもんだから、髪のセットまで手が回らなかった」

「その様子だと洗顔もしてないだろう?」

「バレた?」


ーーすぐ、洗ってこいっ!


左足を軸にアルマの振り上げる右踵がバースの右脇腹に命中する。


「手加減しろよ」

バースは通路の床下に転倒して激痛に涙目となっていた。


「なん、てや?」

「アルマさん。ハケンラットさんの国なまりです」


ーーせからしかっ! タクト。


秋の訪れを思わせる紅葉深い谷間を走る紅い列車内に、耳を裂く絶叫が響き渡っていた。


 

 ========



通信室に隊員は集って着席しているバースに安堵の息を吐いていた。


「朝からご苦労だ。此処数日の護送列車の出来事はアルマとタクトから報告を受けている。ところでハケンラット、タイマンの容態はどうだ?」

「心配せんでよか。脚の骨折以外はピンピンしとるばい! 今朝も飯ば、ひこけて食いよった」

「そうか……」

バースより、笑みが湛えられていく。


「おい、バース。早く話しを聞かせてくれ!」

「タッカ。若い娘達の相手はさぞかし充実していただろう?」


「『おじさん』を連発されていましたっけ?」

 タクトの言葉に隊員達は大爆笑をする。

「余計な事を言うな!」と、タッカは激昂していった。


バースは漸く笑いを止めると口を開いていく。

「お前達に是非言おう。この数日の俺とタイマンで調査したその内容をな」


ーー【ヒノサククニ】其処が子供達が最終的に辿り着く〈場所〉だーー。


 室内に静寂が訪れる。


 バースは更に言葉を続ける。

「《陽》が咲く。つまり《太陽》が真っ先に昇る【国】が何処かにある。何の目的かは護衛する子供に関係している」


 ーー“力”の〈育成〉それが《団体》の狙いだ。


 バースは言葉が放たれた方向に険相を剥ける。


「たった今、ロウスが発言した《団体》についてはまだ謎が多い。護衛任務終了地の【サンレッド】で恐らく解明するだろう」


「バース。おまえはそれを探る為に自ら列車を降りたのか?」

アルマは声を震わせながらバースに訊く。

「あの時はあくまで任務を続行させる為にだ。俺達の任務は、重ねて言うが〈子供〉の護衛。護送先に着いてそいつを終わらせたならば、子供達に待ち構える何かを見れない。罠を仕掛けた奴が何処の回し者かもだ。黙って引っ込んで堪るかと思いもした」


ーータクト、おまえは《その先》を目指したいと提案したのだよな? 俺も同意する!!


「バースさん?」

「何を鳩が豆鉄砲を喰らったような顔している? これは俺達も必要な《志》だ。見つけにいこうではないか!」


バースの声が通信室に高らかと響き渡ると隊員は立ち上がり拍手喝采を始めていく。


「行くぞっ! タクト、アルマ」

「僕達の物語は、此れからですね?」

「そうだ、何としてでも辿り着こう。バース、その道案内を頼む」

「任せろ」

バースはタクトとアルマが差し伸べる掌を両手で包み込んでいく。



 ※追記 〈陽光隊〉と部隊名を変更する。


 ロウスが作成した議事録の確認欄にバースは直筆サインをすると、朱肉で染めた認め印を押し込んでいった。


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