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1-1

ハァハァハァハァ


僕は必死に逃げている。

後ろから追ってくるモンスター逹から。ちらりと後ろを振り返る。


あーもう!数が多すぎる!


狭くも広くもない通路にネズミのようなモンスターが集まり過ぎていて、もう別のモンスターなんじゃないか?と思うほど蠢いている。正直気持ち悪い。


僕は魔法陣を描き、呪文を唱えて広範囲魔法をモンスターに放つ。


さっきから何度も何度も打ってはいるが、一向に減る気配がない。むしろ増えている。


この程度のモンスターは、一体なら、いや、十体もしくはそれ以上いても魔法だけで勝てる。 でもこの数は無理だ。


正直このダンジョンを甘く見すぎていた。前に来たときはこんなに苦戦はしなかった。以前は仲間もいたが、前より強くなっている実感はあったし、自信もあった。それでも苦戦しているのだから、甘く見ていたとしか言いようがない。


「正直使いたくなかったし、使う気もなかったけど……はぁ、使うか……もったいないなぁ……『爆石エブラル』!」


ポケットから取り出した石を……『爆石』を発動させてモンスターに投げつける。ピカッと光って、凄まじい爆発音がし、モンスター達の悲鳴が飲み込まれる。


後ろにはモンスターの焼死体がたくさんあった。たくさんあるけど全ては殺せなかったはずだ、逃げたのだろう、自分達より強者と知って。


あれほどの爆発があったというのにダンジョンの床は少し焦げているだけで、崩れる気配もない。


「こんなとこで『爆石』を使うとは……神器が『爆石』だったら泣くかも……」


ダンジョンは、各階層のボスを倒すと神創神器……略して神器と呼ばれるものを入手できる。

地下1~15階層までは初級

16~50階層までは中級

51階層からは上級という風になっていて、階層が深ければ深いほど、神器が豪華な可能性が高い。


1階層なら木の棒をもった村人の子供でもクリアできるレベルだが、15階層は剣をもった大人でも死ぬことがある。同じ級でも難易度は変わるが、級が変わると難易度は急激に高くなる。簡単にいうと、モンスターが強くなり、罠が仕掛けられたりする。


ちなみに僕がいるのは29階層で、僕が単独ソロで入れる限界の階層は38だ。

『爆石』が出やすい階層は15~30で、もし今回の戦利品が『爆石』なら、プラスマイナスゼロ、むしろ時間と労力の無駄でマイナスだ。


「止まっててモンスターが来ても嫌だし、ボスを倒しにいきますかっと」


少し歩けば大きな扉があるはずだ。ボス部屋の扉が。


「前来たときのボスはムカデみたいだったけど、今回はなんだろうなぁ、毎回変わるらしいし」


大きな扉を開ける。中は暗い。

中に入って扉を閉めると部屋が明るくなる。

今回のボスも、どうやらムカデらしい。

僕の体の3、4倍はある大ムカデだ。

前と同じなら、だいたい行動パターンはわかっている。


「『名刀ミノウ』」


僕の手から刀が出てくる。


名刀ミノウ


僕が以前、上級攻略者から買いとった神器だ。 安くはなかったが、いい買い物だったと思っている。


自分の体に、刀身を納めることができる。

荷物にならないし、切れ味もいい、僕がよく使う神器の一つだ。


「キシャャャャャァァァァァ」


ムカデがこっちに向かってくる。速いけど、一直線で単調な動きだ。


ムカデを避ける。そして刀でムカデを切る。が、殼が固くて切れなかった。


弱点は確か腹だったな。


またムカデが向かってくる。


ポケットから紙を取り出す。


「『土壁』」


目の前に土でできた壁が現れ、ムカデがそれにぶつかりひっくり返った。

僕はムカデの腹にミノウを突き立て、殺す。


終わった。


以前、四人で挑んだときはあんなに苦戦したのに……やっぱり自分が強くなったことを実感した。神器の力が大きいが……。


目の前に宝箱が現れた。


今回の神器はなんだろうか。やっぱり宝箱を開けるときはドキドキする。何が入っているかわからないという緊張。未知のものに対する少しの恐怖。何より凄いものが欲しいという期待。この感覚を味わうために僕はダンジョン入っているんだ。


宝箱を開けると、箱が入っていた。


タイプ<ボックス>か。

ちなみに『爆石』はタイプ<ストーン>、『名刀ミノウ』はタイプ<ソード> だ。神器にはそれぞれタイプがある。


タイプ<箱>の特徴は、使ってみないとわからないだ。

他の神器は触れればなんとなく感覚で使い方がわかるようになっているが、タイプ<箱>は魔力を流してみないとわからない。わかってもすぐに発動し、消費型が多いので、扱いづらい。


12階層で出たタイプ<箱>は、魔力を込めた瞬間、中から鳥がでできた。そして、手元には空の箱だけが残った。


そんな苦い思い出を思い出しつつ、僕は箱に魔力を込めた。




何が興ったのかはその時は、わからなかった。


ただ、人影を見た気がした。


僕は意識を失った。



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