私
「お姉さまが、私のたった一人の味方を……………
私のことをちゃんと見てくれる唯一の人を奪ったの!!もうこれ以上私から大切なものを奪わないで!!」
そう言って、癇癪を起こした妹によって私は……………。
「ご、めんな……さい、メア…リー………どうか……」
重くなっていく意識の中に呆然となり真っ青な顔の妹を見た気がした。最後は言葉にならず、口だけが動いていたのだろう。いや、もしかしたら口すら動いていなかったのかもしれない。そんな最後の言葉は妹の耳には届かず、ただただ風に吹かれて流されていった。
(どうか、幸せに暮らして……)
伝えることが最後までできなかった悔しさは次第に薄らいでいくのを感じた。
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現実的で辛い夢を見た咲はいつもよりかなり早い時間に目が覚めた。普段はのんびりする時間もないくらいゆっくり起きる(何故か土日は早い)のだが、今日は散歩くらいできそうだ。
「ふぁ~」
大きな欠伸をして、目を閉じる。昔から目を閉じると、そこには、視覚で捉えられないようないろいろな事が観えてくる。そして何より落ち着くのだ。自分が見えてくるようで。
寝転がりながら、さっき見た夢を思い出してみる。
夢はすぐに忘れてしまうというが、この夢だけはいつまでも鮮明に残っている。年に一度、決まった日に夢となり出てくる。生まれた時その日から。
物心がつく頃には既に見えていた。私はこの夢のみ覚えるようになった。夢なのに現実のようで辛くて悲しい。私は“お姉さま”の立場で“妹”は叫んで私に対して憎しみ、悲しみいろんなものを持っている様な目で睨んでいる。そして何かを叫んだ瞬間、私の視界は歪み、体は痛み、意識が遠のいていくというものだった。私は夢だというのに、痛みが全身に走る。まるで体がその痛みを知っているかのように……。
「・・・き・・・きねえ、咲姉!」
「あれ?」
「ったく、咲姉はいつも自分の誕生日だけ起きるの遅いよな。」
いつの間にか寝ていたのか。
「もうこんな時間か……おはよ。蒼ちゃん」
「蒼ちゃんいうなw。おはよ咲姉。そんで誕生日おめでと」
「うん、ありがと。」
「んじゃ、先に下行っとくよ。早く準備してこいよな。」
「分かった。ありがと」
「気にすんないつものことだろw」
そう言って扉を閉めていったのは咲の弟である蒼だ。昔はもう少し丁寧な言葉遣いだったのだが、最近は少し乱暴になってしまっている。しかし、言葉遣いは変わったものの、態度というか基本的なところは何も変わっていないところが咲にとって嬉しいことだった。
「そろそろ行かないとな。」
家族が待っているであろうリビングへ向かうために準備を始めた。