のに、一体何事?
少し長めです。
一昨年の夏、庭にビニールプールを出した。
助と助のお友達が来て、3人で大騒ぎ。
とっても楽しかったんだけど、ふと立ちあがったときに視界が真っ暗になって・・・きっと、ブラックアウトってあんな感じなんだと思う。
今回のは、その時以来2回目の経験。
(鉄分、足りないのかな?今夜は何か・・・血になるものを食べなくちゃ)
「・・・レバーとか」
考えていたことが言葉になって、自分が覚醒したことに気付いた。
目を開けると、まだちかちかした感じがあった。
一度ゆっくり瞬きをして、慎重に体を起こす。
「・・・・・・・・・」
心臓が、どくん―――
痛みを伴って、存在を主張した。
声が出ない。急に、口内の水分がなくなって、喉が引きつる。
脈は、気分が悪くなるほどに速く速く、速くなっていく。
異常事態―――そう、これは異常だ。
起き上がって知覚したのは、ゆったりとしたソファーと大きな窓。
そして、そこから見える景色。
―――日本じゃない―――
(吐きそう・・・)
私は、膝を抱えて小さくなった。
怖い―――怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「怖い・・・よぉ・・・」
涙が、頬を伝うのを、どこか他人事のように感じる。
「どうしよう・・・やだやだ、どうしよう・・・」
体が震える、涙は止まらない。
吐きたい。
「誰か・・・」
(っ!!)
「たす―――助!!」
馬鹿だ・・・どうしよう、大馬鹿だ!
「助!」
部屋を見回すけど、他に人は居ない。
(どうしよう!助に何かあったら・・・)
パニック寸前―――いや、パニック状態だった。
「ダメ・・・ダメよ・・・落ち着いて」
体を抱き締めて、蹲って小さくなって、必死に深呼吸した。
何が起こってるのかは分からない。ここがどこかも分からない。
でも、何があったにせよ、最後の記憶が貧血で倒れるところだったのだから、何らかの形で、助もこの異常に関わっているはずだ。
最悪の事態も、あり得る状況。
(―――大丈夫。
大丈夫よ、救。もしも、助に何かひどいことがあったとして、それを私が感じれないはずが無い)
私たちは、双子ゆえかお互いの感情や痛みを感じあう、シンパシーのようなものが強かった。
「大丈夫、落ち着いて・・・」
言い聞かせて、もう一度深呼吸した。
ゆっくり立ち上がり、先ずは自分自身のチェック。
(制服のままだ・・・特に乱れてない)
ローファーも履いたままだし、眠っていたソファーの横には、通学カバンもあった。
(あの時の・・・登校するそのままの状態ってこと?)
「あ、携帯・・・」
さっき目にしたものを考えると、とても電波があるとは思えない。
それでも、一縷の望みをかけて、ブレザーの内ポケットにある携帯電話を取り出した。
「やっぱり・・・そうよね・・・」
予想はしてた。けど、はっきり目にするとやっぱりがっかりしちゃう。
「あれ? 時計も狂っちゃった」
役立たず決定のそれをしまって、腕時計を見てみる。
「・・・え?」
時計は、9日の7時45分を指している。
時計が狂っていないとすれば、それは・・・
私が最後に記憶している時間の、10分後―――
「た・・・すく?」
へなへなと座り込む。なんて体験は、これが初めてです。
窓の外、石造りのお城、そのどこからか、鐘の音が聞こえていた。
天宮兄弟は、温泉旅行の前日、そろって給食に中ったことがある。
という、この先出てくることのない設定。