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部下との意志疎通も大変重要です



スタイルの良い若い女性がスケスケ衣装だと、思わずそのボディラインに目が行ってしまうのは、男女関係ないことなんだね。


(そこに含まれる感情は男女で違うけどさ。でも見ちゃうよ)


しかもこのスケスケ衣裳、要所要所をアクセサリーや飾り布で補強してあるだけで、ひどく無防備!

下着と言っても良い気がする。


「どうぞ。お口に合えば良いのですが…」


「…」


「どうかなさいましたか?」


はっ!


「すみません、いただきます」


まずいまずい。見つめ過ぎちゃった。

自重しなくては。




あの時―――渡すよう頼まれた手紙を渡した時。

手紙を見たとたん、濃い3人組は顔を引きつらせ、何とも気になる「逃げた」発言に説明もないまま、

「少々ここでお待ちください」

と、言い残して出ていってしまった。


「えー…」


仕方がないので、おとなしく部屋で探索をしながら待つことにした。

何故か文字が読める便利機能を備えていたから、本棚の端から目を通してゆく。

『術式の探求』

『術式の応用〜生活に役立つ術式編〜』

『移動術式の発展と衰退』

『魔術術式概論』


「概論ってことは、基礎知識とかかな?」


魔術なんてモノのおかげで、こんなところに喚びだされてしまった。

でも来てしまった以上、帰れるかどうかも魔術に掛かってる。

それなら、基本ぐらいは知っていても損はないはず。

(理解できない言葉ばかりだったら、潔くあきらめよう)


「…へぇ、結構面白いかも」


思った通り、内容は基礎的な仕組みや成り立ちについて。

(なるほどねぇ)

魔術術式とは、簡単に言うと化学反応式のようなものみたい。

いろんな特徴を持つ、特殊な文字があって、その文字に不思議な力があるらしい。

で、その文字をどう組み合わせるかで、いろんな効果を発揮するそうだ。

こういうモノは、呪文を唱えて杖を振るって言うイメージだったけど、これは学問に近い。研究するって感じかな?


「もっときちんと勉強したら、私にも使えそうかも…」


それは何だか、ちょっと興味ある。


(もう少し読んでみようかな…)


コンコン


「ぅひゃっ!?」


あわわ!


「召喚魔術師長カレン・マクリーンです。失礼してよろしいでしょうか」


びっくりした!びっくりした!びっ―――とにかく、早く本をしまって、へ、返事しなくちゃ!


「はいぃ! ど、どうぞ」


「失礼します。お待たせして申し訳ありませんでした」


「いえ、お気になさらず」


あぁ…よく考えたら、別に慌てる必要無いのか。

読んじゃダメって言われてないし。


「お茶をお持ちしました。どうぞ、ソファーへおかけ下さい」


「はい」


そんなことがあって、今お茶を口にしたわけなんだけど…


「っ!!!」


(っんあまっ!)


緑茶のような澄んだ緑色の液体は、見た目を裏切る信じられない甘さ!

(シロップ…これはシロップの原液! 申し訳ないけど、これは口に合わないです)


「改めましてご挨拶させていただきます。

召喚魔術師長 カレン・マクリーンと申します。

カレンとお呼びください」


「っく、あま―救、雨宮です。

救と呼んでください」


甘さに痛みを感じる喉を必死に動かして、辛うじて働いた頭でファーストネームからの自己紹介。


(甘くない飲み物が欲しい…水かなんか)


「救…様。何とも運命的なお名前でいらっしゃいますね」


うわぁ、カレンさんシロップ普通に飲んでる。

ん? ちょっと待てよ? もしこの世界の食べ物がみんなあの甘さだったら…私、糖尿病になるか餓死するかのどっちかじゃない?


「救様、よろしいでしょうか」


「は、はい、何でしょう?」


「国王の手紙は読ませていただきました。

救様に宛てて手紙を書いたことと、その内容についても書かれていました」


「なるほど」


「すぐに調べさせましたところ、私の部下から召喚術式について連絡がありました。

あ! あの、術式とは救様にこちらへ来ていただくために使った手段のことなのですが。…どうやら、たくさんの細工が施されているようなのです」


「はぁ」


「まだ詳細は不明ですが、帰還に関して制限を付けられているのはどうやら事実のようです」


「はぁ………ん? え?」


それって、カレンさんは知らなかったってことなの? つまり…王様の独断?


「さらに―――」


言いにくそうだ。絶対に悪い内容だ!


「単刀直入に申し上げます。

この国の国王、パル・リングリアが職を放棄し逃亡しました。よって、現在この国…この世界の最高権力者は、執政官である救様ということになります」


………


「は?」


「全ての国民は、救様のお考えに従います。どうか、我らをお導きください」


いや、いやいやいや!


「ち、ちょっと待ってください! どういうことですか!? なんか今色々―」


「失礼する。

書記官補佐 ファン・エイジだ。

本日付で執政官殿の筆頭書記官となった。慣れるまでは大変だろうが、よろしく頼む」


魔女ローブが来ちゃったよ。またややこしくなるじゃん!


「あの、ちょっと私の質問に…」


「失礼しまぁすー。

執政官付きの騎士団長 レティー・ビートでぇす。これからはぁ、どこに行くにも付いていくのでぇ、よろしくでぇす」


「―――うあぁ」


ひどい。ひどすぎる。

聞きたいことはたくさんあるのに、この人たちは問答無用で畳み掛けてくる。


(て言うか、逃げたって何よ? 人のこと勝手にこんな世界に喚び出して、帰れなくさせたうえ…逃げる?)


話が違うじゃないか! 私が読んだ手紙には―――


(あれ? 何かそれって、おかしくない?)


仮に、王様が本当に逃げたとする。


私にだけ『探し物を見つけたら必ず帰る』なんて書き残すメリットって、何?

必要ないんじゃない?


(そもそも…なんであの手紙は消えたのかしら)


何やら言い合っている3人に目をやる。

魔女ローブ、ファンさんが握りつぶしている紙は、恐らく先ほど私が手渡したものだろう。

つまり、そちらの手紙は消えてないのだ。


(何だかしっくりこない。王様は、何が目的でわざわざ『逃げます』なんて書いたんだろう? ごまかしようはいくらでもあったんじゃないかな?)


「聞いてるのか? 執政官殿の話をしているんだぞ」


「え? あ、すいません…ちょっと考え事をしてまして。何の話でしょう?」


「あははぁ。君、大丈夫? ショックでおかしくなっちゃったのぉ? それともぉ、もともとぉ?」


今…さらっとひどいことをきらきら笑顔で言われましたよ?


「自分たちの世界、自分の治めるべき国を見捨てるような国王に、期待する事はもはやありません。

我ら全ての国民は、救様の執政の下にこの国を再興させることを誓います。

早急に救様の執政官就任を国中に広め、全国民が認識を共にするように手配いたします。

きっと、全ての民が救様を心より慕うことでしょう」


困った…カレンさんの言い回しは、堅苦しくて分かりにくい。

けど、最後の『すべての民が慕うだろう』という言葉の示すことって、


(もしかして…支持率って奴?)


私に同情し、王様を恨むことで、私に対する信頼度を上げる。

まさか、王様はこれを狙ってわざわざ逃げると書き残した?


(もちろん証拠はないけど…でも、そう考えたほうがしっくりくる)


「救様?」


王様が腹心だと書いていた3人。この人達は、本気で王様が逃げたって思ってるのかな?


「………」


表情から感情は伺えない。それどころか、1人は表情すら伺えない。


私の仮説を、話してみるべきなのかもしれない。

良心に従うなら、そうしなければならない、だろう。

でも…


「…出来ることしか出来ません。でも、全力を尽くします。

サポート、よろしくお願いします」


「承知しましたっ! 我ら3人が救様の直属の部下となります。何なりとお言い付けください」


「あははぁ。あんまり調子に乗って言い付けないでよぉ? よろしくぅ」


「では、早速会議を始めよう。あぁ、今日からここが執政官殿の執務室だ。自由に使ってくれ」


王様、ごめんなさい。でも、何の武器も切り札も無い私には、これくらいの補助が無いと進んで行けないんです。


(それにしても…何か引っ掛かる)


何が? 分からない。でも、さっき手紙のことを考えてたときに―――何かが気になった。


あの手紙が消えたのには、何か他に理由がある。


何だか、そう思えてならなかった。


「それでは救様、まずは早急に解決しなければならない―食糧問題について、お知恵をお貸しいただけますか」


正体不明の不安を抱えたまま、未だ満足に意志疎通も出来ていない部下たちと…さぁ、最初のお仕事を始めましょうか?

カレンさん、設定当初はないんぺたん(古!)でした。が、着せる服がイメージできず、段々ナイスなバデーになっていったという裏話。ちなみに、皆様がイメージしてる3割増しでエロい格好です。

あとちょっと!って、言いたくなります。

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