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10話「セイタの視点 」

翌日。


セイタは遅れることなく学校に到着した。


教室にはすでに何人かの生徒がいたが、

イナオカの席だけが空いている。


いつも自分より早く来ているはずのイナオカがいないことに、

セイタは違和感を覚えた。


席に座り、

後ろのイナオカの机を見つめながら考え込む。


「……遅くても、

 この時間には来てるはずなのに……

 どうしたんだ……?」


校内では相変わらず、

あの動画の話題が飛び交っていた。


プラズマについて、

声をかけてくる生徒も、まだ少なくない。


「ねえ、プラズマの中って、どうなってたの?」

「中で何をしたら、消えるの?」

「すごいよな。やり方、教えてよ」


同じような質問を、

休みなく浴びせられ続け、

頭がじくじくと痛み始める。


セイタは大きくため息をつき、


「……わからない」


そう答えると、

大げさな動作で机に突っ伏した。


その素っ気ない態度に、

生徒たちは顔を見合わせ、

気まずそうにそれぞれの席へ戻っていった。


「はい、静かに。

 全員、席に着け。

 ……イナオカは、まだ来ていないのか?」


「わかりません」


「イナオカと連絡が取れる者は、

 すぐ先生に知らせなさい」


「はい」


教師の言葉を聞いた途端、

もともと痛んでいた頭が、

さらに締めつけられるように感じられた。


「……イナオカが?

 学校に来てない……?」


思考のすべてが、

一斉にイナオカへと向く。


セイタはこれ以上考えるのをやめ、

その場でスマートフォンを取り出し、

イナオカに電話をかけた。


――だが、

呼び出し音が虚しく鳴るだけで、

最後まで応答はなかった。


登校してからずっと積み重なっていた不安と心配が、

一気に噴き出したのか、

頭を強く殴られたような感覚に襲われる。


思考が混濁し、

自分では制御できなくなっていく。


限界を感じたセイタは、

教師に保健室へ行くと告げ、

教室を後にした。


廊下を歩く間も、

誰かに頭を揺さぶられているような感覚が続き、

ふらつきながら進む。


どうにか保健室へ辿り着くと、

保健の先生は「疲労による症状だろう」と診断し、

しばらくベッドで休むよう勧めた。


こうして一時間目の間、

保健室で横になって過ごす。


静かな場所で思考を整理すると、

先ほどまでの眩暈は、

少しずつ落ち着いていった。


だが――

教室へ戻っても、

イナオカの席は、やはり空いたままだった。


空席を見たクラスメイトたちは、

イナオカが学校に来ない理由について、

あれこれと勝手な憶測を立て始めていた。


「イナオカ、どこか具合悪いんじゃ……」

「それとも、昨日プラズマの中に入ったせいで倒れたとか?」

「でも、セイタは普通に来てるよな」

「昨日、横で話してるの聞いたけど、

 セイタ一人でもできそうな感じだったし」

「じゃあ、なんでイナオカは入ったんだ?」

「サボりたくて、わざと入ったんじゃない?」

「いや……さすがにそれはないだろ」


その瞬間、

セイタは怒りが込み上げ、

無責任なことを言う生徒たちに言い返そうとした。


だが、

口論したところで、

また頭が痛くなるだけだと思い直し、

言葉を飲み込んだ。


「……そうだ。

 あいつらは、何も知らない……」


保健室から戻ってからも、

セイタの頭は一日中、イナオカのことでいっぱいだった。


メッセージも送ってみたが、

既読にはならない。


限界を感じたセイタは、

三時間目が終わった直後、

担任のもとへ向かい、

イナオカと連絡が取れたかを尋ねた。


担任は、

「今朝、イナオカの姉から連絡があった」

と前置きし、


――ひどい風邪をこじらせ、

今日は登校できないとのことだ、と告げた。


ため息をつきながら職員室を出ると、

そのすぐ前に、ヒカギが立っていた。


「ちょっと、

 プラズマのことで話があるんだが……

 イナオカは?」


「……体調不良で、

 今日は家で休んでるそうです」


「そうか。

 一度ならともかく、

 あんなことを二度も立て続けに経験すれば、

 身体がもたなくても無理はないな……」


「……あの……」


「楽に呼んでくれ。

 ヒカギ兄さんでいい」


「……ヒカギ兄さん。

 それで……」


本当は、

もうこれ以上、

プラズマの件に関わりたくないと言いたかった。


イナオカのためにも、

自分自身のためにも。


続ければ、

身体が壊れてしまうかもしれない。

実際、イナオカは体調を崩して寝込んでいる。


それでも――

この役目を果たせるのは、

自分とイナオカしかいないことも、

セイタはわかっていた。


『できるのは、俺たちだけだ。

 ここにいる誰も、

 プラズマを消したことなんてない』


それは、

昨日イナオカに言った言葉であり、

同時に、自分自身へ向けた言葉でもあった。


誰も経験したことがない。

そして、

本来なら経験するはずもないことだ。


それでも――

誰かがやらなければ、

世界は滅びる。


「……いえ。

 言おうとしてたのは別のことです。

 何の話ですか?

 今日、イナオカに伝えておきます」


「今日?

 家で休んでいるんじゃなかったのか?」


「はい。

 お見舞いに行くつもりです。

 ……多分、

 俺のせいでもあると思うので」


「君は、よくやった。

 昨日、イナオカが入ったのも、

 本人の意思だった」


「……それでも……」


「元気出せ。セイタ」


その言葉に、

胸の奥に溜まっていたものが、

すっと溶けていくのを感じた。


思わず、

鼻の奥がつんとする。


「……ありがとうございます。

 それで、本題は何ですか?」


「映像を見返していて思ったんだが……

 プラズマの内部に映っていた“場所”は、

 おそらく爆発範囲だ」


「爆発……範囲?」


「もしプラズマが爆発すれば、

 内部に映っている場所の規模だけ、

 現実でも消滅する、ということだろう」


「この前、

 茨城県で爆発したプラズマを参考に分析した。

 あの時も、

 内部には森の映像が見えていて、

 実際に消えた範囲も、

 ほぼ同じ規模だった」


「……ということは……」


「爆発範囲という仮説が、

 一番筋が通る」


セイタは腕を組み、

プラズマの中にいた時の感覚を思い返した。


「確かに……

 重力がなかったです。

 宇宙に浮かんでるみたいで、

 息もできなかった……」


さらに説明しようとした、その時。

ヒカギが問いかける。


「セイタ」


「……はい?」


「君は、人を守るために、

 プラズマを消しているんだな?

 昨日も、

 生徒たちのために中へ入った」


「正直、

 最初から入るつもりは、

 少しもありませんでした」


「でも……

 ヒカギ兄さんの言動を見て、

 あのプラズマが爆発する可能性が、

 頭をよぎったんです」


「もし、

 あの時入らずに見ているだけだったら……

 初めての人的被害が、

 起きていたかもしれない」


「……じゃあ、

 これからも、

 プラズマを消し続けるつもりか?」


「できる限り、続けます。

 ……いえ、

 続けなければいけないと思っています。

ただ……

 イナオカが、

 この危険なことを続けるかは……」


「今日は、お見舞いに行くんだな?」


「はい」


「その時は、

 爆発範囲の話だけにしておこう。

 続けるかどうかは、

 後で聞けばいい」


「……どうしてですか?」


「今回の体調不良は、

 経験したことのない事態を、

 一度ならず二度も立て続けに受けたからだ」


「それだけで身体に出るんだ。

 トラウマが残らないわけがない」


「今日、いきなり聞けば、

 きっと断られる」


「……そうですね」


重たい空気が流れ、

しばらく沈黙が続いた。


ヒカギは、

その空気を振り払うように、

話題を変える。


「……イナオカは、

 かなり辛そうだったか?」


「正直、

 詳しくはわかりません。

 ただ、

 ひどい風邪だと聞いただけで……」


「今日はしっかり看てやれ。

 俺は先に失礼する」


ヒカギは、

セイタの肩を軽く叩き、

そのまま廊下を横切って、

奥の階段へと消えていった。


ヒカギと別れた後、

セイタは教室へ戻り、

学校が一刻も早く終わるのを、ただ待ち続けた。


昼休みになると、

急いで食事を済ませ、

もう一度イナオカにメッセージを送る。


送信してから、

ほんの数分も経たないうちに、

メッセージの横に「既読」の表示がついた。


――連絡がついた。


そう思って、

胸の奥でほっとした、その時。

イナオカから返信が届いた。


返事をしようと指を画面に伸ばしたが、

授業開始のチャイムと同時に教師が教室へ入ってきて、

結局、返信することはできなかった。


授業中、

セイタは何度も時計に視線を向けた。


だが、

さっき見たばかりのはずなのに、

まだ五分も経っていない。


目をこすり、

もう一度確認しても、

文字盤の三本の針は、

静かに同じ位置を保っているだけだった。


――今日は、時間が進まない。


そんな感覚に、

思わずため息が漏れる。


机に突っ伏した瞬間、

教師の鋭い叱責が飛び、

セイタは慌てて体を起こした。


授業が終わった後も、

胸の内が焦げつくように落ち着かないセイタに、

担任が「少し来なさい」と声をかけた。


注意を受けるのかと思いながらついて行くと、

意外にも、

教師はイナオカの容体が

「かなり良くなった」と告げた。


思いがけない言葉だったが、

無事だと聞いた瞬間、

一気に安堵が押し寄せる。


教師は続けた。


――見ていて、

セイタがあまりにも不安そうだったから、

急いでイナオカの家に連絡を取ったのだ、と。


結果を聞き次第、

すぐ伝えたかったのだという。


その言葉に、

セイタの目の端に、

じんわりと涙が滲んだ。


だが、

こぼれることはなかった。


何度も礼を言い、

教室へ戻って席に着く。


イナオカが大丈夫だとわかった途端、

張り詰めていた身体が、

ゆっくりと緩んでいく。


それと同時に、

堰を切ったような眠気が押し寄せた。


抗う間もなく、

セイタは再び机に突っ伏し、

数秒後には、意識が途切れた。



下校のチャイムで、

ようやく目を覚ます。


ぼんやりした頭のまま教室を出て、

靴箱の前に寄りかかりながら、

大きくあくびをした。


その時――

誰かが肩を軽く叩いた。


半分閉じた目で振り向くと、

そこにはイナオカの友人、

アツキとシュレンが立っていた。


二人は心配そうな表情で、

しばらくセイタを見つめた後、

やがてアツキが口を開く。


「……あの、セイタ。

 ルニ、

 ……すごく具合、悪いって聞いたけど……?」


「いや、大丈夫。だいぶ良くなったって。」


その言葉を聞いた瞬間、

アツキとシュレンはほっと安堵の息を吐き、

同時に、こわばっていた肩の力が抜けた。


俯いていたシュレンが、

ゆっくりと顔を上げて口を開く。


「私たちも今朝、

 ルニが学校に来てないって聞いて、

 すぐ先生のところに行ったんだけど、

 “体調不良で欠席”ってそれしか分からなくて……

 教えてくれて、ありがとう。」


「そっか……。

 でも、二人はお見舞いには行かないの?」


「私はこのあとすぐ塾があって無理かな。

 アツキは――」


そこでシュレンが言葉を切り、

驚いたように目を見開いた。


「……え?

 お見舞い?」


隣を見ると、

アツキは今にも破裂しそうなほど、

顔を真っ赤にしていた。


「……き、君一人で?」


「うん。

 先生は大丈夫って言ってたけど、

 それでも一度顔を見たら、

 少しは安心できるかなって思って。」


その言葉に、

アツキとシュレンは気まずそうに笑い、

「わかった」と言いながら、

ぎこちなく後ずさりした。


その様子に、

セイタは少し首をかしげたが、

それよりも――

これ以上遅くなる前に

イナオカの顔を見なければ、

そう思い、急いで校舎を後にした。


外に出ると、

空はすでに黄色く染まり始めていた。


セイタはそのまま、

イナオカの家へ向かって走り出す。


幼い頃に何度か来たことがあるため、

道はよく覚えていた。


信号で止まった瞬間、

肩で息をしながら、

「お見舞いに行く」とメッセージを送る。


送信した直後、

信号が青に変わり、

画面を確認する暇もなく

横断歩道を渡った。


渡りきってからも休まず走り続け、

やがて見慣れた分かれ道が見えてくる。


一度立ち止まり、

大きく息を整えてから、

再び走り出した。


右の道を数分――

ついにイナオカの家に辿り着く。


壁にもたれて息を整えながら、

スマホを確認する。


メッセージは既読になっていたが、

返信はなかった。


スマホをポケットにしまい、

玄関へ向かう。


気持ちを整え、

インターホンを押そうとした、その瞬間。


扉が開き、

イナオカの姉が姿を現した。


「あら、セイタじゃない。久しぶりね。

 どうしたの?」


「こんにちは。

 イナオカが具合悪いって聞いて、

 お見舞いに来ました。」


「そう?

 アルニなら部屋で休んでるわよ。」


「ありがとうございます。」


扉に手をかけて中へ入ろうとした時、

姉がふと声をかけた。


「それにしてもセイタ、

 こんなにアルニのこと心配して……

 もしかして、あなた……?」


その言葉に、

セイタは一瞬で顔を真っ赤にした。


とてもじゃないが、

姉と目を合わせられず、

視線をあちこちに彷徨わせながら、

しどろもどろに言葉を紡ぐ。


自分でも何を言っているのか分からないほど、

頭が真っ白になり、

背中を伝う汗だけが、

やけにリアルに感じられた。


「い、いえ……!

 その……友達が具合悪いから……

 べ、別にそういうんじゃ……!」


「私、まだ何も言ってないけど?」


その反応に、

イナオカの姉は声を上げて笑った。


セイタは思わず、

大きく息を吐いた。


「お姉さん、どこか行くんですか?」


「私?

 夕飯の買い出しにスーパーへ。」


「あ……。

 それじゃ、行ってらっしゃい。」


「ええ。」


姉が車に乗り込むのを確認し、

セイタは踵を返して家に入ろうとした。


その瞬間――

「もし本当だったら……

 お姉ちゃんは賛成よ!」


そんな声が聞こえた気がして、

直後に車が走り去る音が重なった。


セイタは、

その場で完全に固まった。


――何も言っていない。

なのに、

なぜか意味だけは、

はっきりと理解してしまった。


再び顔が熱くなる。


深呼吸を一つして、

心を落ち着かせ、

セイタは静かに

イナオカの家へ足を踏み入れた。


「失礼します……」


家の中を見回しながら、

セイタは廊下を歩いた。


昔と比べても、

特に変わったところはない。


「イナオカの部屋は……ここだったな。」


ノックをしてから、

セイタは静かにドアを開けた。

まだ日本語が下手で翻訳機に依存して文を書いたので、誤訳があるかも知れません。 多少変な翻訳部分があっても些細なハプニングだと思ってくださって面白く見てください。



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