表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/100

92 金に目がくらんだ男

 体育館のほぼ中央にパイプベッドがあり、そこに涌井さんが眠っていた。

 ミッキーとチィが駆け寄って揺り起こそうとしたが、関谷が投げやりな物言いで、それをたしなめた。

「やめとけ。ここに来た時から、ずっと寝たままなんだ」


 我々は涌井さんの顔を覗き込んだ。

「まるで人形のようじゃ。生気が感じられない」

「長く混信状態が続いたせいでしょうか。体調が気になります。すぐに元の夢世界へ帰さないと」

 涌井さんの額に付いている電極を外し、抱き上げようとすると関谷が慌てて駆け寄ってきた。

「おいやめろ!勝手に電極を外すな」

 すかさず私は電光剣を彼に向けた。

「ま、待ってくれ。内藤さんの夢世界は規模が狭い。だからアプリを使って、涌井さんの夢世界を移植したいんだ!もう少しでその作業が終わる。ちょっとぐらい協力してくれよ」


「移植処理とやらが成功したとして、その後、内藤さんはどうなるんだ?」

「それは……ずっと眠ったままになる。夢のメタバースの土台だから……」

「私が寝たままに?なに、それ」

 話の内容が掴めない内藤さんが、戸惑いながら私と関谷を交互に見た。

「い、言おうと思っていたんだよ、後で……」

 汗だくになった関谷が、作り笑顔でそう答えた。

「家族のいる内藤さんを寝たきりにし、涌井さんは容態が悪化して死ぬかもしれない。君のいうビジネスとはそういう外道の上に成り立つものなのか?」

「主婦と病人など、何の役にも立たない連中じゃないか。俺がこういう形で社会貢献させてやろうってんだ。むしろ良い話しだ」


 ついに本音を口にした関谷。

 彼にとって他人とは、カネを儲けるための道具に過ぎないのだ。

 私は関谷の姿が霞んで見えてしまうほど、頭に血が上った。こんなにキレたのは久しぶりだ。ミッキーとチィも、怒りでブルブルと震えている。

「最低です!あまりにも酷いです!」

「人でなしとクズを絵に描いたような男じゃな。同じ空気を吸っていると思うだけで虫唾が走るわ」


「なあ、ちょっと待てよ。頼むよ」

 なお懇願している関谷に、私は冷たい視線を送った。

「これから涌井さんを元の夢世界へ戻す。内藤さんは我々が保護し、このままリアルワールドへ帰還してもらう。君も我々と一緒に帰るぞ。そして法の裁きを受けろ」

 床を見つめたままこぶしを固く握りしめていた関谷だったが、急にアクセスツールを取り出して操作し始めた。

「くそっ、くそっ、くそっ!!このまま終わらせるか!もう少しで大金が手に入るんだ!失敗するわけにはいかないんだよ!」


 体育館の床から生えてくるようにモヒカン男達が出現し、やがて体育館を埋め尽くした。

 こいつめ。本格的に我々とやり合う気だな。

 一気に緊張感が高まり、背中の産毛がチリチリと逆立った。私は電光剣を出して構え、背後のミッキーへ言った。

「バリアを頼む。涌井さんと内藤さんを守ってくれ」

「はいっ!」

 クルクルと光の鞭を空中で回すと、直径2メートルほどのドーム状バリアができた。

「チィは僕の後ろで援護を!そして例の夢Pを頼む」

「御意!」

 両手でバトンを回して拳法家のように構える。

「夢P発動!妄想力解放、さらに全っ開っ!」

 チィの発する強烈な夢Pが、金色の光球となって広がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ