表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/100

78 再会

 あっ、と思った瞬間、脇腹に衝撃と激痛が走って思わずのけぞった。突き刺さった弓矢を引き抜くと、血が付着していた。

 運良く内ポケットの生徒手帳に当たって威力は弱まったが、肋骨の間に傷が出来ていた。触ると手のひらにベッタリと血がついた。

 内藤さんが悲鳴を上げながら、私の元へ駆け寄ってきた。


「ごめんなさい!本当は撃つつもりなんて無かったの」

 ワナワナと震えながらポケットからハンカチを取り出し、私の傷口へ当てた。

「こんなに血が……どうしよう、どうしよう」

「この程度の傷なんて、戦場では蚊に刺されたようなものさ。気にするなベイビー」

 ニヒルに微笑む私の顔を黙って見つめた内藤さんは、やがて力が抜けたように床へ座り込んだ。そして大きく息を吐き、涙を流しながら頭を下げる。


「あなたの仲間のこと、知らないと言ったけど、あれは嘘よ……ゴメンなさい」

 意外な言葉に、私は苦笑してしまった。

「おいおい。もっと早く言ってくれよ。お陰でかなり派手に暴れちまったぜ」

「歩ける?……着いてきて」

 広い店内を行き、辿り着いたのはショッピングモールに併設する、子供用の室内遊戯施設だった。

 内藤さんが扉の鍵を開けた。


 入り口横に設置されたソファに、制服姿の2人の少女が座っており、揃ってこちらを振り向いた。

 ミッキーとチィだった。

「北村さん!」

「兄者!」

 2人が駆け寄ってきた。

 ミッキーが泣きながら私に抱きつき、チィは嬉々として私の背中に飛びついた。

「よかった、よかった。心配していました」

「兄者。会いたかったぞ。無事で何よりじゃ」

 私は2人に揉みくちゃにされた。


「おいおいベイビー達。まるで数年ぶりに再会したような喜び方だな。だが、俺も嬉しいぜ」

 キザな私の言葉に、ミッキーとチイは目を丸くした。

「どうしたんですか?いつもの北村さんじゃないみたいです」

「ひょっとして、このワイルド感溢れる夢Pに飲まれたのか?さっきから戦いの音が聞こえていたが、兄者だったのか?」 

「ああ。実は、チョイと大暴れしちまったのさ」

「ちょっと待って……北村さん。それ、どうしたんですか?」

 ミッキーが私の手のひらの血を凝視する。


「ああ。これは、その……」

 言い淀むと、彼女は私の身体中を触ったり覗き込み始めた。そして、脇腹の怪我を発見すると、動きを止めて目を見開いた。

 内藤さんが慌てて謝罪し始めた。

「ごめんなさい!私がボウガンを撃ったせいで……」

「あっ!お前は?!」

 彼女の姿を見たチィがバトンを手にすると、クルクルと回して構えた。


「こやつは私達をこんな所へ閉じ込めた愚連隊のリーダーじゃ。今度こそ退治してやるぞっ!」

「ベイビーもういいんだ。過去のことは悪い夢でも見たと思って、綺麗に忘れてくれ」

「止めるな兄者!」

 チィがそう言いかけた時だった。

 素早く動いたミッキーが、内藤さんの頬を思い切り張った。パンッという音が響いて、同時に彼女は床に倒れる。


 チィも私も、突然の事に時が止まったように動けなかった。

「北村さんに、こんな怪我を……!」

 ブルブルと震えながら内藤さんを見下ろすミッキー。

 打たれた頬を手で押さえて内藤さんが泣き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ