77 帝国軍との戦闘
突然、モヒカン男の乗ったバイクが正面玄関を破って突っ込んできた。ショッピングモールのメインホールは一気に修羅場と化し、革命軍の若者達との激しいバトルが始まった。
まるで海外の悪役レスラーのような帝国軍。筋骨隆々で力は強く、内藤さんの手下達をバタバタとなぎ倒していく。
思わぬ戦闘に巻き込まれた私だが、心はウズウズと落ち着かなくなり、武者震いが止まらなくなった。アクション映画の夢Pが、さあ戦えと急かして来るからだ。
「仕方がない。俺があの連中を蹴散らしてやる」
涌井さんやチィの夢世界で学んだ通り、夢Pには抗うより受け入れるべきという基本スタイルは忠実に守るべきだ。
私は帝国軍の兵士達の前へ躍り出た。
「さあ、パーティーの始まりだぜ」
右手の電光剣がいつもより明るくエネルギッシュに光った。
男達が釘バットを振り下ろして来たが、私の電光剣は一太刀で彼らの右腕を切り落とした。悲鳴と共に、男達の姿が霧散して消える。
いい。
実にいいぜ!
バイクに跨った兵士達が左右から殴りかかってきたが、素早くそれを避け、同時に斬り付けた。
チィの夢Pを経験した私にとっては準備体操くらいの感覚しかなかった。
猛り狂った男達が一斉に襲いかかって来た。
私は剣を上段に構えて念じた。
「必殺!斬鬼・勇往邁進!」
電光剣が七色の光を四方へ発し、私を取り囲んでいた男達の身体が、ミスト状に拡散し消えていく。
必殺技の衝撃波が近くにある店舗のガラス壁にヒビを入れ、商品の雑貨を吹き飛ばした。
戦闘が終わった1階ホールは、横転したバイクや武器の残骸が散らばっていた。
帝国軍と反乱軍の男達は姿を消し、私と内藤さんだけが残された。
目の前の危機は去った。
早く涌井さんとミッキー、そしてチィを見つけ出し、この不可解な状況を解決しなければならない。
私は残骸を踏みながら出入口へと進んだ。
「待って!」
背後から内藤さんの呼び止める声が聞こえた。
「あんた何者なの?最初からおかしいと思っていたけど、単なるモブじゃないでしょう?」
「俺は見ての通り、ただの男子高校生さ。中身はオヤジだがな」
「普通の高校生が、あんな技は使えないわ!」
確かにその通りなのだが、何と言って説明して良いのか咄嗟に頭が回らなかった。
「ひょっとして夢の中が混乱した原因はあんたじゃないの?!私の考えた設定が勝手に進行して、もう手が付けられないのよ。私を夢から覚ましてよ……助けてよ!」
内藤さんが床に落ちているボウガンを拾って構え、私を狙った。
「あなた、何か知っているんでしょう?だったら……」
彼女がそう言いかけた時、床に落ちている木刀につまずき、そのはずみで引き金に指をかけてしまった。




