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60 光の戦士

「兄者!」

 チィが駆け寄って来た。

 私は自分の両手を見つめ、ワナワナと震える演技をした。

「こ、これは一体……私はどうしたというのだ?体内から暗黒が消えている」

「正気に戻ったのじゃ。よかった……」

「私は左腕に黒竜を封じ込めた後、混沌に飲み込まれ……」

「もう良い。全て終わったのじゃ」

 チィが私の手を取りながら目に涙を溜めた。


 気がつくと、周りが妙に明るく荘厳な雰囲気が漂っていた。

 涌井さんとミッキーが興奮しながら抱き合い、私の背後を指さしている。

 何だろうと振り返ると、自分の背中から大きな天使の羽が生えている様子が目に入った。

 私は動揺しかけたが、光の戦士は天上界の住人であるという設定を思い出し、なんとか冷静さを維持させた。チィの満足度を上げるためにも、演技を続けなければならないのだ。


「兄者が光の戦士として復活した!」

 チィが私の羽を潤んだ目で見つめ、再び抱きついてきた。

「うむ。私は光の戦士の記憶を取り戻した。全てそなたのおかげだ。ここを支配していた暗黒と混沌は去り……」

 言いかけて、チィを見ると、なぜか目を閉じて唇を突き出していた。

「ずっとお慕いしておりました。私の愛を受けてたもれ。さあ、接吻を」

「い、いや、それはマズイよ。ほら、僕らは兄妹という設定だし」

「兄、といっても家系的には従兄妹関係じゃ。婚姻は結べます」


 キスをしようと私に顔を近づけてきたが、涌井さんとミッキーが駆け寄り、半ば強引に私とチィを引き離した。

「私達もあなたのおかげで光の戦士に戻ることができました。というわけで、そろそろ北村さんから離れてくださいね」

「良かったじゃない!あんたのおかげで、みんな助かったわ」

 涌井さんがチィの肩を叩いた。

「そうなの?私の闘いが役に立ったのか?」

「はい。誰も傷つかずに済みました。チィさんの戦いが皆を救ったのですよ」

「まあ、ともかく良い運動になったわ。はい、戦いごっこは終わりよ」

 涌井さんが手をパンパンと叩いた。

「ごっこ、とはなんじゃ。私は闇の眷属を退治するため真剣に……」

 プウと頬をふくらませたチィ。そんな彼女の頭をクシャクシャと撫でた涌井さんがニカッと笑った。


「なに言ってんのよ。途中から気付いていたわよ。アンタがこの遊びに満足しているってこと。その証拠に、戦いの最中だって言うのに、やたらニヤニヤしていたのを見たもんね」

「う……あ……」

 真っ赤な顔になったチィ。

「本当は友達が欲しかったんでしょ?私と同じニオイを感じるわ。思いっきり戦いごっこができて良かったじゃない」

 涌井さんを見つめていたチィ。

 その表情は徐々に笑顔となり、元気よく「うん」と、頷いた。

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