表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/100

52 バトル系少女漫画と中二病

 合宿所の談話室へ戻った私達はテーブルを囲み、お茶を片手に話し合った。

「涌井さんの意識が、魔法少女さんの夢世界に干渉されています。ですから夢Pが発動しないのです」

 ミッキーがやや興奮気味に話す。

「夢世界に2人の主が存在する、いわゆるダブルホストと言う現象で、かなり特殊です。学会で発表できるレベルです」


「人の夢の中で勝手なことばかりして腹立つわ〜。焼き肉だってまだ途中だったのよ。食べ物の恨みは恐ろしいってことを、あの子に分からせてやるんだから!」

 イラついた涌井さんが机上の湯飲みを鷲づかみし、グビグビと喉を鳴らして飲み干した。

 誘い出し作戦には成功したものの、感情が先走って冷静さが保てない状況となってきた。

 だが、無理もない。

 ここは涌井さんの夢の中であり、何をやっても許される彼女の王国なのだ。思い通りにいかぬ事でフラストレーションが溜まっているに違いない。


「彼女の夢Pの内容についてですが、あれは間違いなく七界大戦です」

 ミッキーは断言し、さらに語った。

「中高生に大人気の少女漫画ですが、恐らく物語から影響を受け、その設定やキャラクターになり切ってしまったのでしょう」


 私にも経験はあるが、アクション映画を観た後など、自分が主人公のように強い男になった錯覚をしたものだ。

 少女のそれはかなり強い妄想のようで、ミッキー曰く、

「重度の中二病患者」

 とのことだ。


 あの少女は、偶然にも私と同じタイミングでこの夢に紛れ込み、そこで見てしまったのだ。

 夢世界を瞬時に構築する涌井さんの力。

 光の鞭で華麗に戦うミッキーの姿。

 そして、鏡に吸い込まれてリアルワールドへ帰還する私達を。

 中二病の少女が、それを目の当たりにしたのだから大変だ。憧れていた漫画の世界に来たと思い込んだのであろう。


 だが、あの少女はこう言っていた。

「眠るたびに、この異世界に来ていた」と。

 ひょっとして、ここが夢の中の世界だと気づいているのかもしれない。

 そう考えると、先ほどのバトルで時折見せていた彼女の笑みも理解できる。

 きっと、七界大戦ごっこに付き合ってくれる人物が現れた、という喜びが溢れたものだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ