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23 襲ってくる世界

「私は国家機関のダイバー兼調査員の三木知世です」

 そう言って、彼女は王様と魔女を指差した。

「あの2人は私の上司と同僚で、あなたの夢暴走を収束するために派遣された特務機関の隊員です。夢Pに洗脳されて、すっかり任務のことを忘れているのです」


 腕を組んだ涌井さんが「なぁるほど。やっぱりあなたは訳ありの人だったのね」と納得したように頷く。そしてヒデと塩原を顎で指した。

「そういえば、あの2人も私を説得するとか何とか言っていたっけ。面白そうだから、色々な夢を見せて、この世界の住人にしたの」

「彼らを元に戻してあげてください」

「嫌よ。ここは私の遊び場。私が作る物語の世界。彼らはその脇役よ。邪魔をしないで」

「私は、この事案の解決をしなければならないんです」


 涌井さんはギリリと三木さんを睨みつけると「しつこいわね」と、語気を強めた。 

「何度も怖い思いをさせて帰るように仕向けていたけど、手ぬるかったようね。もっと怖い思いをさせてあげるわ。後悔しても知らないんだから」

 そこまで言うと、今度は私の方を見て笑顔でウィンクした。

「でも、北村君は帰っちゃダメよ。っていうか、もっと面白いものを見せて、この世界の虜にしてあげる」

 パチンと指を弾く。

 来た。強制演劇力だ。

 戦闘とオカルトの雰囲気が混ざってジワジワと迫ってくる。今度はどんなシーンが展開されるのだろう、と身構えた。


「実は、呪いの森の毒って人間を凶暴にさせることもある、という設定なの」

 涌井さんの言葉が、語尾へ向かうほどにトーンが低くなっていく。

 王様と魔女がゆらりと立ち上がり、こちらへ歩いてきた。顔色は生気を失い、視線も焦点が合っていない。

 テーブルや椅子を乗り越えた彼らが、ゾンビのように唸り声を上げて襲いかかってきた。私は電光剣で応戦しようと構えた。

 すると、三木さんが私の腕に縋り付いてきた。

「ダメです!夢の中で傷つけたら現実の本体も怪我するんです」

「え?」

 脳内で起こった事は、実現化するという事か。そりゃやっかいだ。

 戦えないと言うなら逃げるしかない。私は三木さんを抱えるようにして合宿所のドアから出た。

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