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12 ラッキースケベ

 私はこの世界について聞いてみることにした。

「ところで、君も異世界転生してきたのかい?」

「異世界転生?」

「僕は車に撥ねられ、気がついたらここへ居たんだ。異世界ファンタジーの世界に狩谷高校があるなんて奇妙だね。ときおり訪れる強制的に演劇をしたくなる雰囲気も不思議だ」

「演劇……って、なに?それ」

「この感覚はどうにも言葉で形容し難くて……だから、僕が勝手に名前を付けたんだ。強制演劇力、と」


 床に座っていた涌井さんがキョトンとした顔で私を見つめていたが、突然「きゃっはっは」と笑い始めた。

「北村君って、本当にいろいろ忘れちゃったのね?マジうけるっ!」

 彼女はベッドへ座っている私の隣に腰を下ろすと、尚も笑い続けた。

 私は唇を尖らせながら言った。

「そう言う君も、演技していたじゃないか。まるで舞台俳優のように大きな身振り手振りで……」

「クックック。まあ、それはともかく、もうちょっと飲もうよ。カンパーイ」

 3杯目をグビグビと空け、更に私のコップを奪って1口飲んだところで、涌井さんがしな垂れてきた。

「女の子をこんなに酔わせて、どうするつもりなの~?」

 そして、私に襲いかかるようにベッドへ倒れ込んだ。

 私は下。涌井さんが上。なんというラッキーな体勢だろう。彼女の2つのふくらみが私の腹部に押し付けられ、柔らかく暖かい感触が伝わってくる。女性の良い香りが鼻孔をくすぐる。


 ふと気が付いた。

 真面目しか取り柄のない私に舞い降りたラッキースケベ。こんなふうに急にモテるなんておかしい、と。しかも相手は皆の憧れである涌井さんだ。

 今まさに強制的演劇力によって、ラブロマンス的な何かを演じさせられているのではと訝しみ、思わず周囲をキョロキョロと探った。

 だが、そんな雰囲気は微塵も感じられない。そして彼女はピクリとも動かなかった。

 静かな部屋の中に寝息が響いており、まさかと思い顔を覗き込むと、実に気持ち良さそうに眠っていた。

 演技ではなく、本当に酔い潰れてしまったようだ。


 長い睫毛と整った鼻筋。

 艶っぽい輝きを持った唇には、既に大人の魅力がある。

 このあと、どうするべきか悩んだ。

 少しくらい胸を揉んでも良いのでは?と。

 だが、酔い潰れた女性に手を出すのはコンプライアンスに欠ける行為であり、ましてや私のような中年オヤジが、女子高生を相手にするなどあってはならん事だ。


 いや、待てよ。今は私も男子高校生なのだから、ちょっとくらい揉んでも許されるかもしれない。

 しかも、ここは異世界。羽目を外しても良いのではなかろうか。

 私は自分の手のひらを見つめてしばし固まっていたが、あれこれ考えるうちに酔いが回って眠くなり、そのまま寝入ってしまった。

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