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6話 怒れる肥満

エタッテナイヨ…

設定は死ぬほど考えてるけどどう展開するか一生迷ってるだけだよ…。

排気ガスや黄砂が混じっていない爽やかな風が頬を撫で、鼻をツンと突くような青臭い草の香りで目を覚ました。


瞼を持ち上げると明るい陽光が網膜を刺激し、思わず顔を顰める。


未だハッキリとしない意識の中、自らの置かれた状況をやっとボンヤリと思い出した俺はムクリと身体を起こした。


「頭いってぇ…」


つい先程まで話していたショタ神との会話がゆっくり思い起こされ、転移する時に生じた謎の頭痛に悪態を突く。


ゆっくりと辺りを見回すと、一目で異世界に来たなと確信を得られるような元世界では信じられない光景が広がっている。


遠くには高い山々が連なっておりその山の中腹から麓にかけて、くり抜かれたような大きな穴が貫通し、奥側の景色が見えていた。

近くにそびえ立っている斑模様の木には現代では考えられない大きさの足が八本生えてる"昆虫"のような見た目の虫が引っ付いて樹液を啜っていた。

目の前の花でさえ見たことの無い極彩色で強烈な甘い香りを放っており、空を仰げば肌を照らしている太陽のような恒星の傍にもう1つ謎の衛星が漂っているのを見て改めて異世界に転移した現実を強かに叩きつけられたのだった。


「すっげえな…。」


思わず感嘆の声を漏らした燈生は、ハッと人らしい気配が無いことに気がつき立ち上がった。


「あんの適当神の野郎、こんな如何にも剣と魔法の世界に飛ばすんだったら普通人里の近くにスポーンさせるのがセオリーだろ。」


呟きながらとりあえず自分の持っている持ち物を整理してみる事にした俺は死んだ時に持っていた荷物をその場にぶちまけ確認した。


鞄、スマホ、メモ帳、書類、ペンに財布、背広のポケットに煙草とライター、あとは飲みかけの水が半分入ったペットボトルぐらいなものである。


「水は大事に飲むとして、せめてナイフとランプぐらい鞄に詰め込んでくれててくれよ…。現代人のサバイバル力を過信しすぎだろ…。こんなペンと健康診断の結果通知なんかじゃなくてもっとこう…魔剣みたいな…っっ!?」


結局何も聞かずに味わった事の無い味に釣られて異世界転移する意志を固めたのは自分であるにも関わらず不満と他責思考で構成されたクズ発言をしている俺の眼前にデカデカと何かポップアップが表示される。




【ステータス】

名前 :飯山 燈生

種族 :人間

職業 :異世界人

武装

・布の服(VIT+1)

・合皮の靴

振り分け可能ポイント:0

Lv(レベル) : 1

HP(体力) : 10

MP(魔力) : 10

STR (膂力) : 10

VIT(耐久力)︎︎ : 10

DEX(器用さ) : 10

AGI(敏捷)︎︎ : 8


【スキル】

パッシブスキル

・伐折羅の加護




「なんじゃこりゃ。よくあるステータスって奴?分かりやすくて良いけど完全にゲームだなこりゃあ。」


虚空をスワイプするとスクロールされ、目線を少し外すと消えてしまった謎のポップアップは確かに俺の名前が書いてあり、恐らく自分のステータスが記載されていた。


地味に敏捷が遅く書いてある辺り本物っぽい。

うるせえよ。


それにしてもなんでこれ急に出てきたんだ?

確かめようにもどうやるか分からず色々と模索してみる。


「ステータス!」


悲しき三十路オタクの痛い発言が周囲に木霊するが何も起きない。


「ステータスオープン!鑑定!プロフィール!」


痛いポーズを取りながら何度もそれらしい言葉を叫んでみる、が……駄目……っ!何をやっても先程のようにステータスは表示されず無駄に体力を消耗して終わり。


もしかしてこれ一回こっきりの確認方法だったりする?そうだったらマジで直談判モンである。


まあそんな訳ねえわなと1度冷静になった俺はさっき口に出して喋ってた戯言をもう一度思い出し、それらしい言葉を考えてみる。



……一つだけそれっぽい言葉が思い当たったがそんな訳無いよなと思いつつも物は試しと口に出してみた。


「…健康診断。」


ピロンという音とともにステータスが表示された。

そんな訳あった。ステータス確認とかいう異世界に行ったならまずやる確認作業。そのポップアップを表示するための文言が『健康診断』。

全国の肥満諸君が嫌いな言葉ランキングがあったら確実に上位に食い込むであろう言葉である。


「ステータス見る為の言葉が()()()()!?マジ?これは舐めてる!はい、全国のデブを敵に回しました!温厚なデブほど怒らせたら怖えんだからな!聞いてんのかショタ神!!!」


デブを舐めた仕様を初っ端からぶつけてきた怒りと初見で誰が分かんだよという怒りのハイブリッドの燃料で燈生というエンジンは激しく音を立て稼働するが、ぶつける相手が傍らに居ない為、 何となく神が見てるであろう空に向けて放った燈生の怒声に対し、返す声など当然のように存在せず、虚しく異世界の空に響き渡るのであった。

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