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5話 決意する肥満

エタってません。遅れてすいませんでした。

他の作品と差別化図ろうとしたらめちゃくちゃ難産でした。

「神様が俺に呼びかけなければ、俺はまだ生きてたかもしれないってコト…!?」


意識がハッキリしてから時間も経ち、自称神の説明によってある程度の現状を把握したことで少なからず冷静になった俺は、ふと思った事を口から漏らした。


ふと見やると、さっきまでの朗らかな笑顔とは打って変わり、口の端を引き攣らせた何ともぎこちない笑顔のショタ神が固まっていた。


「……ん?」


「いや、だから!アンタが俺に呼びかけとかしてなければ俺は今頃家でゆっくり風呂とか入れてたんじゃね?」


「ん?」


「いや、だから!」


「ん?」


「聞こえないフリすんなよ!!その見た目で!何年生きてるのか分かんないけどアンタ神なんだろ!?」


「神にだって現実から目を逸らしたい事だってあるよ!それは神差別かい!?」


普段生活する上で絶対聞かない単語が出た。

ワイワイギャーギャーと何も存在しない空間で騒ぐショタと三十路の姿を客観的に想像して、何故かスーッと頭が冷えて冷静になってきた俺は目の前でみっともなく開き直る神に問うた。


「…まあもう良いです。今更死んでから文句言っても仕方ないわ…。そんで?これから俺はどうなるんです?」


「うん。まあやいのやいの言い訳をしたけども、人の子を僕の勝手で死なせてしまったのは変えられない事実であって、僕もそこの所は少なからず申し訳ないと思っていたんだよ。」


あざとく頬を膨らませて涙を目に溜めていたショタは俺が今生の事を諦め、今後の方針について話をし始めた瞬間、表情をコロッと変えて真面目な面持ちで喋りだした。

コイツぅ…!(憤怒)まあええか…(達観)


「君をここに呼んだのも最初から謝罪と補填の為なんだ。まずは僕の勝手に巻き込んだ謝罪をば。ごめん!この通り!」


と、小さな頭を深々と下げてみせた神を見て、いたたまれなくなってきてすぐに止めさせた。

悲しきかな日本人の性。


「そして重ねてごめん。今の僕に君を現世に戻してあげれるほどの力は無い…。君はこのまま輪廻を回れば、次は苔、その次はセミ、次の次はクラゲに生まれ変わる予定になってる。」


実はなんとなく分かっていた。致命傷による傷からの蘇生という事象が何故現世では沢山報道されるのか。それは裏を返せばそれだけの傷を負えば死ぬのが普通であり、生存する方が稀であるからでそんな事故は日常にありふれているからだ。

俺は普通に致命傷を負って普通に死んだ。過程はどうあれ、結果としてはそれしか残っていない。だからこの後はどうなるのかと聞いていたのだ。知らない方がマシな転生ラインナップだったが…。


そう考えてたからこそ俺は次に神が発した言葉に驚かされた。


「…でもね、知り合いの神に頼んで今回だけ特別!君が望めばの話だけど!別の世界に余っていた人の魂の器に君の魂を定着してあげる事が出来るんだ…。どう?すごいでしょ?神様の名誉挽回出来てるでしょ?」


えぇ…?それって異世界転生って事?

一人暮らしをしていくうえでそういったサブカル系の文化にある程度精通していた俺は、近代のアニメ化された大人気ライトノベル作品の設定を思い出す。


異世界転生なんてものは多種多様でチート能力を授かり、ハーレムを作って無双するものや現代知識チートで無双するもの、何の能力も与えられること無く、容赦なく人が死ぬ世界で醜く生き足掻くもの等様々だ。

最後のような世界に生まれ変わるぐらいならまだ苔の方がマシに思えるがどうだろう。


「それってどんな世界なんですか?こう…俺の世界と比べて。」


「身の丈よりも大きなモンスター!見た事も無い植物や環境!ヒューマンの他にも様々な言語を話し、独特な生活方式を持つ種族!地下深くに眠る古代文明のダンジョン!未知が沢山のスリリングな冒険が待っている剣と魔法の世界さ!」


スリリングなのはもうこりごりなんだよなぁ…。


思わず微妙な心境が顔に出てしまった俺を見て神が慌てる。


「ほら!キュートなモンスターも沢山いるよ!」


「人を襲うのはなぁ…?」


「猫耳ちゃんとか長耳ちゃんとか可愛い女の子ちゃん達もズラリ!」


「そもそもこっちの世界でもあんまりモテた事無いし…」


「男なら思わず血が滾るような英雄譚もたくさん…」


「現代にありふれた漫画よりも…?その英雄譚、ワ〇ピースより面白い?」


「うっ…」


思わず押し黙った神を見て、苔に生まれ変わる決心を固め始める。てか神でもワ〇ピースとか読むんだ。すげーなジャ〇プ。

その時、苦し紛れに神がポロリと口の端から漏らした言葉を俺は聞き逃さなかった。


「おいしいりょうりもいっぱい……」


「行きます。その世界」


「えぇっ!?」


ほんの数秒前まであれこれ理由付けて転生を渋ってた奴とは思えない掌の返しっぷりに流石の神も驚愕の声を上げた。


何故思い浮かばなかったのか。

異世界の文化で育まれる料理文化!なんて甘美な響きなんだろう!

異世界独特の肉!魚!野菜!スパイス!それら未知の食材が使われた料理なんて食べてみたいなんてもんじゃない!

死に際に放ったうわ言がこんな形で叶うなんて!言ってみるもんだぜ!


「食の事になったらそんなやる気溢れちゃうなんて流石、僕の天啓こえ聞き取っちゃうだけあるよ。よっぽど食べるのが好きなんだねぇ。」


自分で提案しておきながら嬉しいような呆れてるような顔をしながら何か言ってるショタを尻目にすっかり転生欲に火が付いた俺は未知のグルメに恋とも呼べる想いを抱きつつ催促する。


「いつまでボーッと突っ立てんの神様!早く俺をぶっ生き返してくれぃ!ほら早く!ホラホラホラホラ!」


「えぇ…?全然話聞かないじゃん…色々経験値システムとかスキルのレベルシステムとか説明したい事あったんだけど…まあ……細かい事は行ったら慣れるかぁ…慣れるよね?慣れなくても恨まないでね…」


俺は説明書とか読み飛ばすタイプだった。


「一応心付けに僕の加護も付けておくからそう簡単に死ぬことは無いと思うけども、あっちの世界でも死んじゃったら終わりだからね!ほいじゃ!2度目の人生満喫してね!!助けてくれてありがとう!行ってらっしゃ〜い!」


「ちょっくら行ってくらぁ!!!」


威勢よく返事したと同時に視界が霧に覆われるように徐々に真っ白になり、俺、飯山燈生は異世界へと転生したのだった。

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