プロローグ
初投稿です。
何もかも始めてで右も左も分かりませんがどうぞ拙作をよろしくお願いします。
「何これ…?俺、こんな訳の分からん死に方するの…?」
ポッコリと出た腹から更に飛び出た折れた倒木の先端と血に濡れた傷口を触った手を見て、俺はそう呟いた。
みるみるうちに手足の末端から熱が逃げていくような感覚、生存に必要な成分を身体中に運搬する役割を放棄し、体外に流れ出る血液。
視界が徐々に暗くなり、耳も鈍く、遠のいていく。
暗転する意識の中、足から伝って地面に垂れていく血が何だかあったけえな〜というどこか他人事な感想を俺は抱いていた。
傍らに目をやると、先程まで俺を殺そうと追いかけ回していた150kgはありそうな馬鹿でかい猪が凄惨な死に様で倒れている。
「あ、走馬灯。」
ただ開いているのですら億劫になるほど脱力し、閉じた瞼の裏に今人生のターニングポイントが流れ始める。
両親の顔、幼稚園の先生の優しい顔、小学校の先生の怒った顔、中学の先生の困った顔、高校の先生の呆れた顔。
先生の占有率高すぎだろ。友達とか居なかったから体育とかいつも先生と組んでたしな。
給食の焼きそばが美味かっただとか野外学習で作ったカレーが美味かっただとか飯の思い出ばかりの学校生活、自宅と会社を交互に行き来し、偶に美味い飯をストレスを発散するように食べる社会人生活。
そんな女気も飾り気もない食い気だけの人生。
まぁ、そんな人生でも飯を作り、食らうという根源的な欲に忠実に生きてるだけでもまあまあ幸せだと感じていた自分がいた。
「こんな事になるなら、もっと食いたいもん食っときゃ良かったなぁ…」
死に際にしては酷く能天気な事を冬の森の静寂の中で独り言ちりながら俺、飯山燈生は眠るようにその一生に幕を降ろしたのだった。