第58話 襲撃
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ここまでの襲撃を考えると獣人の子を助けたことが引き金になっていることはおそらく間違いない。であれば、組織をつぶさなければ、エレン、フェン達があぶない。せっかく仲良くなった仲間だ。危険な目にあわせたくない。
「やはり、獣人の子を助けたことが何らかの問題を引き起こしている可能性が高いわ。もっと情報を集める必要がありますね」
「そうだな。ただ、行動するにもエレンとフェンは一緒に行動してほしい。やはり心配だ。」
「リディアさん。わかりました。フェンと一緒に行動するわ。幸い、セバスと一緒にいるところを見られているわけではないので、セバスが襲われる心配はなさそうですしね。」
「そうにゃ。でも、リディアも気を付けるにゃ。」
「フェン。心配してくれてありがとう。」
リディアは1人で情報収集に乗り出した。クレストの街を歩き回り、情報屋や商人に接触しながら、獣人の子供たちを狙った組織の手掛かりを探した。彼は慎重に行動し、目立たないように情報を集めた。
一方、エレンとフェンは街中で注意を払いながら行動していた。二人はリディアが戻るまでの間、自分たちの安全を確保しつつ、情報収集を行っていた。
「フェン、この辺りの店で情報を得られるかもしれないわ」とエレンが言うと、フェンは鼻をひくひくさせながら周囲を見回した。
「にゃ、確かに怪しい匂いがするにゃ。行ってみるにゃ」
二人は人通りの少ない裏通りに向かった。古びた建物が立ち並び、薄暗い路地には時折風に揺れる看板の音だけが響いていた。周囲に人影はなく、静寂が支配する中で不安感が漂っていた。
「フェン、ここは注意が必要ね」とエレンがささやくように言った。
「分かってるにゃ。何かが…」とフェンが答えたその瞬間、突然背後から複数の影が忍び寄ってきた。エレンとフェンは即座に振り向き、戦闘態勢に入った。
「エレン様、気を付けるにゃ!」
「わかってるわ、フェン。来るわよ!」
暗がりから現れたのは、5人組の黒装束の男たちだった。彼らは無言で攻撃を仕掛け、エレンとフェンを取り囲んだ。エレンは魔法のバリアを展開し、敵の攻撃を防ぎながら反撃した。フェンは素早い動きで敵の背後に回り込み、持っていた短剣で攻撃を繰り出した。
薄暗い路地に、鋭い金属音と不思議な光の煌めきが交錯する。エレンとフェンは背中合わせで立ち、四方を取り囲む黒装束の敵と対峙していた。フェンの手には短い刃が月明かりに反射し、エレンの指先からは微かな魔力が漂っている。
突如、エレンの鋭い声が静寂を破った。
「フェン、左側を頼むわ!」
その声と同時に、左側から二人の敵が襲いかかってきた。フェンは瞬時に反応し、短剣を構えて身構える。
「にゃ、任せるにゃ!」
フェンの声には決意が滲んでいた。フェンの短剣が月明かりに鈍く光る。彼は素早く身を翻し、最初の敵の攻撃を剣で受け止める。金属と金属がぶつかり合う鋭い音が響く中、フェンは巧みな剣さばきで反撃に転じる。短剣が敵の腕を掠め、鋭い痛みに敵が一瞬ひるむ。
一方、エレンは右側から迫る敵に対して、優雅な手の動きで呪文を紡ぎ始めた。「光よ、我が敵を焼き尽くせ!」彼女の指先から眩い光球が放たれ、敵めがけて飛んでいく。光球に触れた敵は悲鳴を上げ、一歩後退した。
しかし、フェンの背後からもう一人の敵が不意に襲いかかる。フェンは咄嗟に身を翻そうとしたが、動きが一瞬遅れた。
「くっ!」
鋭い痛みが背中を走る。敵の武器がフェンの背中を深く抉っていた。温かい血が流れ出すのを感じながら、フェンは歯を食いしばった。
「フェン、大丈夫!?無理しないで!」エレンの声には明らかな動揺が含まれていた。
フェンは痛みに顔をゆがめながらも、決意に満ちた表情でエレンを見つめ返す。
「大丈夫にゃ、エレン様を守るにゃ!」彼女は再び短剣を構え、痛みをこらえながら戦闘態勢に入る。
エレンは心配そうな表情を浮かべながらも、すぐさま次の呪文を唱え始めた。「癒しの風よ、フェンに宿れ!」淡い緑色の光がフェンを包み込み、彼女の傷からの出血が徐々に和らいでいく。
血の匂いが空気中に漂い始める。フェンの呼吸は荒く、汗が額から滴り落ちる。しかし、彼女の目には決して諦めない強い意志が宿っていた。
リディアは情報収集を続けている最中、路地から戦っている音が聞こえてきた。急いで現場へ向かうと、薄暗い路地で激しい戦闘が繰り広げられているのを目撃した。フェンが血まみれになりながらも戦い続け、エレンが必死に彼女を守っている姿が目に飛び込んできた。
「フェン!エレン!」リディアは怒りに駆られ、剣を抜いて戦闘に加わった。
リディアの参戦により、戦局は一気に変わった。彼はフェンとエレンを守りつつ、敵を一掃していく。リディアの剣技とエレンの魔法が見事に連携し、次々と黒装束の男たちを倒していった。
戦いが終わり、リディアは息を切らしながらも、フェンとエレンの無事を確認した。フェンは血を流しながらもまだ立っており、エレンは魔法で彼女の傷を癒していた。
リディアはフェンに駆け寄り、その肩に手を置いた。「フェン、お前が無事でよかった…君たちは俺にとって家族同然だ。どんなことがあっても守り抜くからな。だから、お願いだから無茶はしないでくれ。」
フェンは目に涙を浮かべながら、リディアを見上げ「リディア。ありがとにゃ。」
その瞬間、リディアは再び怒りに駆られた。彼は立ち上がり、残っている最後の襲撃者に向かって歩み寄った。エレンとフェンが見守る中、リディアはその男を地面に押し付け、剣をその喉元に突きつけた。
「よくもフェンを!許さねぇーーっ!」リディアは叫びながら、剣をさらに強く押し当てた。「お前たちの目的は何だ!誰に命じられているんだ!」
襲撃者は苦しそうに息をつきながらも、目に怯えの色を浮かべた。リディアの鋭い視線が彼を貫いた。
「答えろーーーっ!」リディアの声が怒りに震えた。
しかし、その男は一瞬の躊躇の後、口を開く代わりに突然自分の歯を噛み砕いた。リディアは瞬時に異変に気づき、急いで止めようとしたが間に合わなかった。男は口の中に仕込んでいた毒を飲み込み、苦しげに痙攣し始めた。
「くそっ、またか…」リディアは悔しさを噛み締めながら、男が息絶えるのを見つめた。
フェンが痛みに耐えながら、「リディア、もうやめるにゃ。私たちも怪我してるにゃ…」
エレンも、「リディアさん、冷静になって。まずはフェンを治療しないと」
リディアは深く息をつき、フェンとエレンの言葉に耳を傾けた。彼は剣を収め、フェンの傷を確認するために屈み込んだ。「フェン、ごめん。痛みはどうだ?」
フェンは微笑みながら、「大丈夫にゃ。リディアがいてくれるから…」
リディアは二人の仲間の温かさに支えられ、再び決意を新たにした。彼らは組織の背後にいる黒幕を暴くため、更なる情報収集と戦いに挑むことを誓った。
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