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第43話 迷宮の謎と試練その3

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7月から土曜日と日曜日お休みします。それ以外は午前8時に投稿します。

ご迷惑おかけして申し訳ありません。今後ともよろしくお願いいたします。

 第43話 迷宮の謎と試練その3


 リディアたちが休憩を取っていると、突然、薄暗い霧が立ち込めてきた。霧の中から現れたのは暗黒魔術師だった。魔術師はシグルに向かって冷たく囁いた。「リディアにこの桃を渡せ。さもなくば、お前の一族は皆殺しだ」と言い放った。


 シグルは恐怖に震えながらも、「どうしてそんなことをしなければならないのか?」と尋ねた。


 魔術師は冷笑しながら答えた。「リディアの力を抑えるためだ。お前の一族の命と引き換えに、私の命令に従え。」


 シグルは必死に抵抗しようとしたが、一族の命がかかっていると思うとどうしても逆らうことができなかった。心の中でリディアに対する感謝の気持ちが溢れた。


 リディアが以前、自分を助けてくれたシーンがフラッシュバックした。「大丈夫、シグル。君は一人じゃない。私たちがいる。」その言葉が頭をよぎり、シグルは胸が痛くなった。


「でも、一族の命が…」シグルは深い葛藤の末に、魔術師の指示に従うことを決心した。


 リディアが仲間たちと少し離れて一人で休んでいる時を見計らって、シグルが近づいた。「リディア、お腹は空いていないか?」シグルは声を震わせながら尋ねた。リディアは微笑み、「そうだな、少し小腹が空いているかも」と答えた。シグルは震える手で桃のような果物を差し出した。


 リディアが果物をかじると、突然喉を抑え、苦しみ始めた。


 シグルは罪悪感に苛まれながら「ち、違う…。し、仕方がなかったんだ…。」と呟き、涙を浮かべてその場から逃げ出した。


 逃げるシグルを見たエレンがすぐに異変に気付き、「シグル、何をしたの?!」と声を上げた。フェンも追いかけながら、「裏切ったにゃ?!」と激しく問い詰めた。


 シグルは震えながら「ご、ごめん…でも、一族の命がかかっていたんだ…」と泣きながら答えた。


「なんてことを…!」エレンは怒りと悲しみの入り混じった声で言い放った。シグルはその場から逃げ出し、姿を消した。


 エレンとフェン、そしてルドは倒れたリディアを見て驚愕し、すぐに回復魔法や解毒魔法を試みた。エレンは涙を流しながら、「リディア、しっかりして!」と必死に呼びかけながら魔法を唱えた。しかし、何の効果もなかった。フェンも涙をこぼしながら、「リディア…お願い、目を覚ますにゃ…」と切実に祈ったが、リディアの意識は戻らなかった。


 リディアは夢の中で転生前のサラリーマンの姿に戻っていた。都会の喧騒に包まれた高層ビルのオフィスで働く自分に違和感を覚えながらも、現実の記憶は朧げだった。身の回りは華やかで、富や権力に溢れていたが、心の奥底には何か欠けている感覚が拭えなかった。


 豪華なディナーでリディアは左右に座る美しい女性たちと談笑していた。女性たちはリディアの言葉に笑顔を見せ、彼を褒め称えた。リディアも笑いながら話を続けるが、心の奥底では違和感が募っていた。「あれ、こんな豪華なご飯を食べられる身分だったか?あと、こんなに上手く女性と話せたかな…」と彼はふと、自分の過去を思い出し始めた。


 リディアは過去の自分を思い出す。現実の自分はここまで社交的だっただろうか?こんなに裕福な生活をしていただろうか?女性たちと笑顔で話す自分の姿に疑問を抱きながらも、目の前の贅沢な光景に心が揺れ動く。「今やらなければいけないことって他になかったか?」リディアは再び自問自答する。都会のネオンに照らされた豪華なマンションの中、彼は美しい女性たちに囲まれ、豪華な料理に舌鼓を打ちながらも、その心はどこか満たされていなかった。


 今日も美しい女性たちと笑顔で会話を楽しみながらステーキ肉を頬張り、芳醇なワインを口に含みながら、ワインについて女性達と話をしている。「楽しいよな。こんな生活したかったんだよ。」リディアは自分に言い聞かせるように考えた。徐々に疑問や葛藤が薄れていく。彼は現実感を失い始め、目の前の贅沢な光景に心を奪われていった。


 ふと、黒いマントの男がリディアの席に近づいてきた。その男は冷たい目でリディアを見つめ、低い声で囁いた。「富も権力も美しい女性たちも、全てあなたのものです。存分に楽しんでください。欲望に従うままに生きるのです。何も心配することはありません。全てはあなたのために用意されたものなのですから。」


 リディアは一瞬驚いたが、その言葉に引き寄せられるように思考を巡らせた。「確かに、これは私が望んでいた生活だ…」


 豪華なマンションに帰り、一人きりで夜景を見つめるリディア。「なぜだろう。すごい遠くから懐かしい声で『リディア様』と呼ばれている気がする…。」しかし、星空しか見えないし、周りに誰もいない。ただ、とても懐かしい声だ。何かを忘れている気がする。


 仕事も順調で同僚とのコミュニケーションも完璧。ただ、本当に小さな声で「リディア様」や「リディア」と呼ばれている気がする。「なんだろう?リディアって誰のことだ?」リディアは思う。しかし、それよりも夕食は何を食べるかが重要だと考えを切り替えた。


 今日はお寿司にした。リディアは板前の握ったお寿司を頬張り、芳醇な日本酒を口に含みながら、美しい女性たちと笑顔で会話を楽しんでいた。彼は一瞬の幸せを感じながらも、その心の奥底では何かが違うという感覚が次第に強くなっていく。


「こんなに上手く女性と話せたかな…?」リディアは過去の自分と現在の自分を比べて混乱していた。自分はこんなに社交的ではなかったはずだし、こんなに裕福な生活もしていなかったはずだ。それなのに、目の前の贅沢な光景はどこか現実離れしている。「私の今することは、これで良いのか?何か別のことをしていた気がする。」リディアは再び自問自答する。豪華な生活に心が揺れ動く一方で、何かが違うという感覚が次第に強くなっていく。


 リディアは心の中で叫んだ。「私は、本当にこれで良いのか?」その問いは次第に彼の心の中で大きくなり、贅沢な生活に浸ることができなくなっていった。彼は自分が何か大切なものを忘れていることに気づき始めたが、それが何なのかはまだ分からなかった。徐々にではあるが、「リディア」と呼ばれている声が大きくなってきている。周りには誰もいないし、そもそもリディアって誰なのか?


 豪華な生活に浸りながらも、リディアの心の奥底には常に違和感が残っていた。何か大切なことを忘れている…そんな感覚が次第に強くなっていった。日々の贅沢な生活は確かに楽しく、幸福感をもたらしてくれたが、それだけでは満たされない何かがあった。


 ある日、リディアは街中でふとした瞬間に首にかかっている覚えのないネックレスが強く光り出すのを感じた。その光に導かれるように、彼の中に記憶が蘇った。エレンやフェン、セバスの顔が脳裏に浮かび、彼が忘れていた本来の使命を思い出した。


「これは幻だ…」リディアは確信した。「私の本当の仲間たちが待っている。」彼は力強くその名前を叫んだ。「エレン!フェン!セバス!」


 その瞬間、夢の中の世界が崩れ始めた。まず、豪華なマンションの壁がひび割れ、徐々に大きな音を立てて崩れ落ちていった。まるで砂の城が風に吹かれて崩れていくように、豪華な家具や装飾品が次々と消えていく。リディアが座っていた豪華なディナーテーブルは音を立てて崩壊し、その場にあった美味しそうな料理や高級ワインも一瞬で消え去った。


 次に、窓の外に広がっていた夜景が徐々にぼやけ始め、次第に霧のように薄れていった。ネオンの輝きも消え去り、街の喧騒が次第に静まり返っていく。周囲の美しい女性たちの姿も、まるで蜃気楼のように消えていき、彼の周りから存在が消失していった。


 リディアは、足元の床が崩れ落ちていく感覚を感じながら、現実に引き戻されていくのを実感した。彼は全てが虚構であり、現実とは異なる世界であったことを強く感じた。周りの全てが崩れ去り、暗闇が広がる中、リディアは目を覚ます。


 リディアが目を覚ますと、エレンとフェンが泣きながら彼の名前を呼んでいる姿が目に入った。二人の涙はリディアの頬に触れ、その温かさが彼の心に深く響いた。


 エレンは涙を拭いながらも止められず、フェンも泣き顔でリディアを見つめていた。リディアは二人の姿を見て心が暖かさと安堵感に包まれた。


「ただいま。」リディアは微笑みながら言った。


 エレンの涙がリディアの顔にぽつりぽつりと当たっていた。その温かい涙の感触が、リディアにとっては現実に戻ってきた証であり、同時に二人の強い絆を感じさせるものだった。


「リディア様…本当に戻ってきてくれて…」エレンは感情を抑えきれず、リディアに抱きついた。


 フェンも「リディア…あんたが戻ってきてくれて、ほんとによかったにゃ…」と涙声で言った。


 リディアは二人を優しく抱きしめ、「ありがとう、二人とも。おかげで戻ってこれた」と感謝の言葉を口にした。


 三人はしばらくの間、互いの無事を確認し合いながら、その場で温かい涙を流し続けた。

 エレンとフェンは涙を拭いながら、「リディア、無事でよかった…」と抱きしめた。


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