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第34話 無線システム

お読みいただきありがとうございます。よろしければ、ブックマークや★の評価をお願いいたします

7月から土曜日と日曜日お休みします。それ以外は午前8時に投稿します。

ご迷惑おかけして申し訳ありません。今後ともよろしくお願いいたします。


 第34話 無線システム


 リディアはソフィアをリリィとロゼッタに引き継ぎ、彼女の新しい住処を見つける手配を終えた後、三人で無線システムについての打ち合わせを行った。リディアの頭には、転生前に趣味でアマチュア無線に取り組んでいた頃の知識が蘇ってきた。


「リディア様。無線システムをこの街に導入するという話、どう進めていくつもりなの?」リリィが興味津々に尋ねた。


「まず、無線通信の基本を説明しよう。」リディアはテーブルに広げた地図を指しながら話し始めた。「私がいた世界では、電波を使って情報を送受信していたんだ。これにはラジオやトランジスタ、コンデンサなどの電子部品が必要だった。だが、この世界には電気がない。だから、魔力を使って同じことを実現しようと考えている。」


 ロゼッタが頷きながらメモを取った。「つまり、魔力を使って電波の代わりになるものを作り出すということですね。具体的にはどうやってやりますか?」


「一つのアイデアは、糸電話の原理を応用することだ。」リディアは続けた。「糸電話は紙コップと糸で音の振動を伝えることで少し離れた場所で会話ができるようになるが、距離には限界がある。例えば、エンシャントスパイダーのような魔力を帯びた糸を吐けるような魔物を召喚し、それを地中に這わせれば、より遠くまで音声を伝えることができるかもしれない。」


 リリィは目を輝かせた。「それは面白いアイデアなの!魔力を帯びた糸を使って通信網を考えつくなんて、さすがリディア様なの!」


「ただ、まだ課題がある。」リディアは慎重な表情で続けた。「魔力の増幅器も開発する必要がある。まずは魔石を使ってエンシャントスパイダーを召喚し、その糸をどの程度使えるか試してみよう。」


 リディアは水晶部屋に行き魔石を手に取り、呪文を唱え始めた。部屋の空気が緊張感に包まれ、次第に魔石が輝きを増していった。すると、床の上に巨大な蜘蛛が現れた。エンシャントスパイダーだ。


「さあ、試してみよう。」リディアはエンシャントスパイダーに命じて糸を出させ、その糸を地図上の街道に沿って這わせた。「この糸を使って、まずは簡単な通信を試してみる。」


 リディアは糸の一端に小さな紙筒を取り付け、もう一端をロゼッタに渡した。「ロゼッタ、これを耳に当てて、私が話すのを聞いてみて。」


 ロゼッタは少し緊張しながらも、紙筒を耳に当てた。「準備できました。」


 リディアはもう一方の紙筒に向かって話し始めた。「聞こえるか?」


 ロゼッタは驚いた表情で頷いた。「聞こえます!少し音が小さいけど、はっきりと聞こえる…。」


 リディアは満足そうに微笑んだ。「よし、これで基本的な通信が可能だということがわかった。次に、この糸をもっと長くして、距離をどこまで伸ばせるか試してみよう。」


 リリィが質問した。「でも、リディア様、この方法で長距離の通信ができるの?」


「そのためには魔力の増幅器を使う必要がある。」リディアは答えた。「魔力を増幅して信号を強化すれば、もっと遠くまで通信できるようになる。増幅器の開発はバルドに頼んである。」


 リディアはエンシャントスパイダーにさらなる糸を出させ、その糸を街の中心部にある塔に向かって這わせた。「この塔に魔力増幅器を設置すれば、街全体に通信を広げることができるかもしれない。」


 ロゼッタが質問した。「リディア様、魔力増幅器は具体的にどのように作りますか?」


 リディアは笑顔を浮かべ、「実は、事前にバルドに頼んで設計図を作ってもらったものを預かっている。」すでにバルドからもらっている設計図を広げ、リリィとロゼッタに見せた。設計図には魔石の配置や回路図が詳細に描かれていた。「まずはこの設計図を基にして試作品を作る。それから実際に通信範囲をテストしてみる。」


 リリィが興奮した様子で言った。「これが成功すれば、街の人々も安心して連絡を取り合えるようになるの!」


 ロゼッタが頷きながらメモを取った。「早速バルドをここに呼んで、増幅器を作ってもらいましょう。彼ならきっと上手くやってくれるはずです。」


 リディアは笑顔で同意した。「そうだね、設計者で技術者のバルドなら問題ないな。リリィ、バルドをここへ呼んでくれ。」


 リリィは姿勢を正し「わかりましたの!」と元気に答えた。


 バルドが部屋に到着すると、リディアは彼に設計図を広げて見せた。「バルド、君が設定したこの魔力増幅器を作ってほしい。街の通信システムに必要なんだ。」


 バルドは設計図をじっくりと見ながら頷いた。「任せてください、リディア様。自分で作成した設計図なので魔石の配置や回路図も詳細に覚えているから、すぐに取り掛かかります。」


 リディアは感謝の気持ちを込めてバルドに微笑んだ。「ありがとう、バルド。これで街の人々が安心して連絡を取り合えるようになる。」


 リリィも感謝の言葉を添えた。「さすがなの!バルド。」


 バルドは力強く答えた。「問題ないさ。モノづくりは生きがいさ!こんな楽しいことはない」


 バルドはすぐに作業に取り掛かり、魔力増幅器の試作品を組み立て始めた。リディアたちはその様子を見守りながら、エンシャントスパイダーに糸を街中に這わせる作業を続けた。


 その時、前回助けたソフィアが部屋に現れた。「私も手伝いたい。私の糸も使ってみてくれない?」


 リディアは微笑み、「もちろん、ソフィア。君の力が必要だ。」


 ソフィアは床に座り込み、手を前に差し出した。そこから細かい蜘蛛の糸が次々と出現し、リディアの指示に従って部屋中に這わせられた。リディアはその糸を慎重に扱いながら、通信システムに組み込んでいった。


 バルドが増幅器の試作品を完成させた。「できたぞ。これを塔に設置してみよう。」


 リディアはエンシャントスパイダーとソフィアの糸を使い、増幅器を塔に設置した。増幅器が設置されると、リディアは通信のテストを始めた。


「ロゼッタ、これを耳に当てて、私が話すのを聞いてみて。」リディアは糸の一端に取り付けた小さな紙筒を渡した。


 ロゼッタは少し緊張しながらも、紙筒を耳に当てた。「準備できたの。」


 リディアはもう一方の紙筒に向かって話し始めた。「聞こえるか?」


 ロゼッタは驚いた表情で首をかしげた。「少し聞こえるけど、音が小さくて不明瞭なの。」


 リディアは眉をひそめ、「うーん、まだ改良が必要だね。増幅器がうまく機能していないみたいだ。」


 バルドが設計図を見直しながら言った。「もう少し魔石の配置を変えてみよう。魔力の流れが最適化されていないのかもしれない。ソフィア、糸をギリギリまで細くしてみることはできるか?」


 ソフィアがウインクしながら答えた。「もちろん!これでもかってくらい細くしてみるわ。もう少し細かい糸を使って、驚かせてあげる!」


 リディアは頷き、「そうだな、みんなの意見を取り入れてもう一度試してみよう。」


 バルドは設計図に手を加え、魔石の配置を変更した。ソフィアも新しい糸を準備し、再び増幅器を設置し直した。皆で息を合わせて調整を続け、何度も試行錯誤を繰り返した。


 しかし、ソフィアの糸をギリギリまで細くしすぎた結果、糸が切れてしまい、通信が途絶えてしまった。皆がその場に立ち尽くし、顔を見合わせた後、バルドが笑い出した。「いやー、ソフィア、細すぎたな!糸がまるで髪の毛のように細いが強度がな!!」


 リディアも笑いながら、「うんうん、限界を攻めすぎたか。でも、強度も必要だ。次は頼んだよ、ソフィア。」


 ソフィアは少し悔しそうにしながら、「わかった、次はもっとバランスを考えてみるわ。」


 次に魔石の配置を再度調整し、再び試みることにしたが、今度は魔力の流れが強すぎて魔石が破裂してしまった。驚いた顔で見合わせた後、全員が大笑いした。


 バルドも笑いをこらえきれずに、「これがモノ作りの醍醐味さ。何度も試して、最適解を見つけるんだ。」

 バルドは真剣な顔になり、「さて、もう一度挑戦しよう。次こそ成功させるぞ!」と意気込んだ。


 リディアは意気揚々と、「そうだね、バルド。もう一度やってみよう。次こそはうまくいくはずだ。」


 ソフィアも「次も最適な太さにするから!」と決意を見せた。


 再び調整を行い、設計図に基づいて魔石の配置を変更し、ソフィアとエンシャントスパイダーの糸を慎重に配置し直した。皆で息を合わせて調整を続け、何度も試行錯誤を繰り返した後、再び通信テストを行うことにした。


 リディアが再び糸の一端に紙筒を取り付け、ロゼッタに渡した。「もう一度試してみよう。」


 ロゼッタは少し緊張しながらも、紙筒を耳に当てた。「準備ができました。」


 リディアはもう一方の紙筒に向かって話し始めた。「聞こえるか?」


 ロゼッタの目が輝き、「聞こえます!はっきりと聞こえます!!」


 リディアは満足そうに微笑んだ。「やった!増幅器が効果を発揮している証拠だ。これで街全体に通信を広げることができる。」


 リリィが興奮した様子で言った。「素晴らしいの!これで街の人々も安心して連絡を取り合えるの!」


 バルドも嬉しそうに微笑んだ。「この調子で増幅器を増やしていけば、もっと広範囲に通信が可能になるだろう。」


 ソフィアが糸を這わせながら、「私の力が役に立つなら嬉しいわ。これで私も少しは恩返しできる。」


 リディアはソフィアに感謝の気持ちを込めて言った。「ソフィアもありがとう。もっと良い街を作っていく予定だからその時も頼むよ。」


 バルドが補足した。「通信の安定性を保つためには、定期的なメンテナンスも必要だ。皆で協力してシステムを維持していこう。」


 リディアは皆を見回し、「これで一歩前進したけど、これからも改良が必要だね。でも、みんなの協力のおかげでここまで来られた。ありがとう。」


 リリィは元気に応えた。「リディア様、これからも一緒にがんばるの!」


 こうして、リディアたちはバルドの協力とソフィアの力を得て、街の無線システムの構築を進めていった。何度も試行錯誤を繰り返し、少しずつ改良を加えながら、ついに通信網の整備に成功した。街の人々は安心して連絡を取り合えるようになり、リディアたちの絆も一層強固なものとなった。成功の喜びを分かち合いながら、彼らはさらに街を発展させる決意を新たにした。


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