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任務一日目 爆誕

 体を覆う球体状の転移シールドは退化の術式と連動しており、無防備な状態で外敵から襲われないように、退化の術式が完全に解けるまでは自身の強固な守りとなる。転移シールドを抱えた現地民はレオの報告にあったように民家に向かっているようだった。民家の中にはマットが言った通りもう一人の人影がある。そのまま民家に連れ込まれ、転移シールドは何か硬い床のような場所にゴトンッと降ろされたのが分かった。転移シールド内に何回かコンコンと叩く音が響いてくる。


(頑丈な転移シールドが壊れることは万が一にも無いとは思うが……)


その見解が甘かった事に気付いたのは、ピキリっとシールドにひびが入った時だった。


『緊急事態! 現地民より執拗な攻撃を受けている。このままでは転移シールドが破られる可能性がある』


とにかく周囲の状況把握だ。魔力節約の為、視覚のみだった遠隔術を音声も拾えるように展開する。


「なんとしぶとい。大人しく食わせろ」


(なんだとっっ! 食べると言ったか?)


目の前に巨大な刃物がかざされるのが見えた。


「巨大な桃め、見ておれ~。秘技唐竹割り!!」

「あんた~格好いいっっ~」


(なっ!?)


咄嗟に無詠唱の防御壁を展開する。丈夫なはずの転移シールドはスパンッと切れて無残にも真っ二つに割れてしまう。


(何が起こったんだ……転移シールドが破壊されたのか?!)


エルドの小さな体はほんのりと明るい照明が灯された室内にころりんっと転がり出た。


 エルドの前に現れたのは声の主達。かくしゃくとしたご老人と、ふくふくとした白髪のご婦人が目をまん丸に見開いている。


「桃から赤子だと?!」

「あらっ、あんた見てご覧よ、男の子だよ。小さいながら立派なものをお持ちじゃ無いか~!」


(なっ! ……羞恥)


エルドはマジマジと見つめられ全身が赤くなるのが自分でも分かった。


「これは、僥倖! 神様から子の無い儂らに赤子を授けて下さったに違いない」

「なんとまぁ、嬉しいこと。早速名前をつけてやりましょうよ」

「そうじゃの~、桃から生まれた元気な男の子じゃ。桃太郎でどうじゃろう?」

「それはなんとも、よき名前です」


エルドは思いがけず、老夫婦の子供として扱われることが決定してしまったようだ。


(どうしてこうなった!)


 時空の綻びを防ぐためとはいえ一糸まとわぬ無防備な裸、しかも赤子の姿。退化の術式が効いてる間は使える術式総数も限られている上に、さっきの防護壁でかなりの力を消耗してしまった。エルドは魔力の温存の為にもこちらを害そうとしない限り、退化の術式の効果が切れるまでは様子を見ることにする。


『……ぷっ、くくくっ』

『おいセス、辞めろって……グフっ』

『やっぱ無理~絶えられん……ギャハハハッ。おい、レオ聞いたか? 隊長、”桃から生まれたモモタロウ”だってよ! 腹いて~! 生まれたての隊長ウケる~』

『マット、セスいい加減にしろっ! 隊長スミマセン……引き続き待機しておりますのでいつでもお呼び下さい』


(そういえば、念話繋がったままだった……くっ、あいつら、覚えてろよ。後で死ぬほどこき使ってやる!!)

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