番外編 仕事終わりの飲み会
おまけの話
「隊長、今日は飲みに行きましょうよ」
仕事終わりにマットが声をかけてくる。
「隊長の奢りで〜。今回俺、凄い頑張ったでしょ? ご褒美くださいよ〜」
「セス、いくら金欠だからといって、隊長にたかるんじゃない」
セスの催促を、レオがたしなめる。
「今回、お前達は大活躍だったからな。まぁ、いいだろう」
「よっしゃ~! いつもの店でいいですよね?」
「隊長太っ腹。ゴチになります!」
マットとセスは、待ちきれないように職場を後にする。エルドは一人メンバーが足りない事に気づく。
「そういえば、リンは誘わなくていいのか?」
「リンは女子会だそうですよ」
「そうなのか」
紅一点が不在の、男だらけの飲み会が始まった。
「飲み物は行き渡ったか? それでは、今回の任務、お前たちの尽力があって無事解決した。今日は鋭気を養ってくれ」
エルドが隊長らしく挨拶をし終わると、みんなそれぞれに飲み物を口にする。
「よ! 隊長〜。日本一のモモタロウ!」
「ブハッ。馬鹿、セス! 飲んでる時にそのネタやめろ」
セスの掛け声にマットは思わず飲んでいた酒を吹き出した。
「何やってるんだ。マット、ほらこれ使え」
レオはおしぼりをマットに渡すと、テーブルを拭く。エルドはそんな三人のやり取りを通常通りだなと眺めながら料理をつつく。
「そういえば隊長。『後で聞く』って、俺らの活躍、聞いてくれてないですよ」
「そうそう〜。尖塔の魔方陣解除するの大変だったんですから〜」
「いやセス、お前のあれは、解除って言わねぇの。めんどいって、身体強化の力技で塔をドカーンと倒しただけ」
「それで無効化できてたから、万事オッケー!」
「お前のフォローがどんなに大変だったか〜。隊長、聞いてくださいよ」
「わかった、わかった。ちゃんと聞く」
エルドは酒を飲み交わしながら、二人の漫才のような報告をしっかりと聞いた。
酒も進み、夜も更けてきた頃……
「隊長にはね、本当、感謝してるんですよ。こんな俺を拾ってくれて、隊長は本当に出来たお人だよ〜」
「そうだな、隊長は本当にすばらしい方だ! なぁマット! ん、聞いてるのか? おい、返事しろ! 眠ってしまったのか?」
「ブハハハッッ。レオ何に向かって喋ってるんだよ~それ、マットじゃねぇって。腹いてぇヒィヒィ~あ〜つぼる〜ぎゃははははっ」
エルドは、“泣き上戸のマット”、“いつもより饒舌なレオ”、“いつも以上に笑い上戸なセス”を見て思う。
(うん、混沌。そろそろお開きだな)
エルドは部下たちを転移陣で部屋まで送り届けると、帰途についた。
◇◇◇
その頃アイリーンは……
ここはダイニングバーBaramon。ノンカクテルやデザートの種類も多く、個室も完備しており、女子人気の高いお店だ。その一室で、修繕魔導部有志による女子会が開催されている。
「皆様今夜はお集まり頂きありがとう。日頃の疲れを吹き飛ばして、語り明かしましょう!」
少しずつ料理をシェアして、それぞれのお皿に取り分ける。料理の感想などを語りあったり、新作の飲み物をチェックしたり、和気藹々とした時間がしばらく続いた後、誰からともなくガールズトークは始まった。
「みんな最近どう? 私の最推しは何と言っても総司令アーロン様、素敵よね〜年上の出来る男」
「でも〜あの方は愛妻家で有名だしね〜ちょっと難しいんじゃない?」
「私は何と言っても、第六の筋肉男子! 滾るわ~」
「悪くは無いんだけど、私は細マッチョの方が好みかな」
「そういえば、第三は? みんなそれぞれにカッコイイし」
「アイリーンは、そこの所どうなの?」
皆んなは、それまで黙々と料理を食べていたアイリーンを一斉に見る。
「エルド隊長総受け一択で」
アイリーンは表情一つ変えることなくズバリと答える。
「本当、アイリーンはブレないわよね~」
……こうして密かに開催される、修繕魔導部腐女子会の楽しい夜は更けていく。
後書きに書くのもなんですが、腐なネタが苦手な方がいたらすみません。




