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任務五日目 対決 醜く歪んだ男

 エルド達は、生体反応が多数あった場所にたどり着くと、認識阻害の魔導術式を展開し扉の中へと潜入した。扉を開けるとそこは豪奢に飾り立てられた宮殿のような広間。その空間に、女の悲鳴が響く。


「イヤァッッッ! もう、お許しください」

「待て待て〜〜」


 拐われてきたであろう現地民の娘達が、体のあちこちに魔力溜まりが盛り上がり、ブクブク膨れて醜く歪んだ男に追いかけられている。逃げ惑う娘は遂には男の手にかかる。


「ほ〜れ〜捕まえたぞ〜」

「あ~~れ~~」

「よいではないか、よいではないか」


 男は捕まえた娘の帯を解き引く抜くと、娘はくるくるコマのように回転した。すでに帯を巻き取られてしまい、シクシクすすり泣いている娘もいる。


「ふんっ、泣くなよ。興が削がれた」


 奪った帯をポイっと投げ捨てると、男はどさりっと何かの毛皮で作られた敷布の上に胡座をかく。


「おい、もっと上等な酒を持って来い! そこのお前、可愛な、こっちに来るんだ」


顔を背け、嫌がる娘を側に何人も侍らせて、巨大な杯にお酒を注がせ一気に呷る。ガマガエルのようになってしまっている口からは盛大に酒が零れおちる。飲んだよりも零した量の方が多そうだ。


「ブハァ〜。お前も飲め、遠慮するな」


無理やり酒を飲まされ咳き込む娘。


「典型的な小悪党ですね」

「はい、完全にアウト!」

「はいはい〜裁きの時間だぜ〜〜」


 しばらく様子を見守っていたエルドだが、補佐官達の我慢の限界を見て、認識阻害を解いた。


「なんだ! お前達はっっ」


男は突然現れたエルド達に驚き、後ずさる。


「異世界修繕魔導部 特務第三部隊だ。”クロス”と言えば分かるか?」

「な、”クロス”だと!?」

「異世界転移術式の無断使用。違法魔導具の所持使用。異世界における魔力の無許可使用、現地民に対する悪辣な行為。これら全て、異世界特別保安条令に反する行いであり、有罪だ。おとなしく観念しろ」


エルドが男に刀を突き付ける。男は身体強化して切先を払うと、跳躍を使ってエルドと距離をとる。


「くっ、曲者だ! 出合えっ出合えっ!!」


 男が地面に手をつき叫ぶと地面から次々と魔方陣が展開され、無数のゴーレムが召喚された。


「セス、マット!」

「ヒャッホ〜イ!! 了解〜! 暴れるぜ」

「言われなくても了解っす!」

「レオ、二人に指示を」

「了解」


 補佐官達が、連携して、出現したゴーレムを倒していく。レオが魔核の位置を指示し、マットは遠隔攻撃でゴーレムを凍らせ動けなくし、セスが身体強化で魔核を砕いていく。あっという間に美しかった広間は、大量の泥に埋もれた。


 エルドは男を追う。刀に雷の魔導術式を込めると男に放つ。男は跳躍で避け、エルドが放った術式で壁がえぐれる。


「逃げても無駄だ。これ以上魔力を使うな! それだけ多くの魔力溜まりが出来ていたら、終わりが近いのが自分でも分かるだろう? お前が居て良い場所はこちらではない」

「お前に何がわかる! 生まれた時からエリート魔導師の”クロス”に! 俺は今、最高に気分がいいんだ。放っておけ!」

「お前の事情など知らん。だが、犯した罪は償ってもらう」


エルドは拘束の魔導術式を放つと光の蛇が現れ、男の足に噛みつく。光の蛇は男の全身に巻きつき締め上げる。男はバランスが取れなくなって顔から転倒した。


「ぐっ、くそっくそっ!」


男は必死にもがいて拘束を逃れようとしている。エルドはリンに念話を繋ぐ。


『リン聞こえるか? 歪み進行の重篤な男を転移する』

『了解。転移先の座標を指定しました。速やかに転移を開始してください』


「即時、退化の術式を発動し、強制送還するものとする。生まれ直して自分の行いを反省することだ」

「嫌だ、いやだぁ~っっ」


男は光の拘束を引きちぎり駆け出す。が、時すでに遅く、背後から迫る魔方陣が男の体に追いつき通り抜けると、男は一瞬にして細胞レベルに退化し、そのまま魔力の揺り篭に包まれて強制送還された。

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