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任務五日目 上陸 歪みと異形の者

 目指す座標は海に浮かぶ孤島。しばらく前から世にも恐ろしい凶暴な”鬼”が住み着いて、近くの村々の田畑を荒らし、若い娘を拐かしているという噂のある島。近隣の現地民はその島を”鬼ヶ島”と呼んで恐れているらしい。明らかにその”鬼”の正体は、あちらから来て歪んでしまった異形の者達だろう。


 異世界に流された一般人は、総じて体の一部が変形し、魔力溜まりができてしまう。こちらで魔力を使えば使うほど、自身の存在は歪んで行き、最終的には元の姿が分からぬ程に異形の者と成り果てる。あちらの世界に戻った時に多少の改善は見られるものの、一度歪んだものを完全に元の姿に戻す術は今の所見つかっていない。異世界修繕魔導部が長年解決を求められ、頭を悩ませている課題の一つでもある。


 異世界に流されてしまった場合に気をつけなければいけないのは”不用意に魔力を使わない”ということだ。こちらの世界はあちらよりも魔素量が多い。あちらの人間にとって、ここに居るだけで体への負担が常にかかっている状態だからだ。


 一般人が魔力を使う行為は、元々あった魔力の器に、限界以上の魔力を無理やり詰め込まれ、弾ける寸前の器にさらに魔力を注ぎ込むような蛮行に近い。こちらに適性を持つクロスでさえ、術式の回数制限が厳しく設けられているのはそのせいだ。


 海を渡り、夜陰に紛れて島の入り江に舟をつけると、一人と二匹と一羽は速やかに上陸する。


「隊長、奴さん、こっちでどれくらい好き勝手やってますかね?」

「さぁな、”鬼”と呼ばれるほどだ。相当色々やらかしてる事は確かだな」

「『うぉ~っっ! なんだこの漲る力は!』とか言ってますかね~ブックククッ」

「セスお前、まだそのネタ引きずってたのか。その台詞この間の歪み野郎がゆってたやつだろ」

「だめだ、思い出させるなマット。ヒィ~腹が痛い」

「セス、マット声が大きい! 静かにしろ」


相変わらず緊張感がない面々にエルドは呆れつつも指示を出す。


「お前達、じゃれ合うのは後にしろ。レオ、探索を頼む、セスとマットは周辺の警戒をおこたるな」

「「「了解」」」


ザザーン、ザザーンと潮騒の音が暗闇に響いている。レオは意識を島全体に飛ばして探索を行う。レオの思念映写で目の前には島全体の詳細な立体地図が出来上がっていく。


「隊長、島全域の探索終了しました」

「報告してくれ」

「島の周囲はほとんどが切り立った崖ですが、今いる入り江以外に島の反対側に海から船でそのまま入っていける鍾乳洞があり、自然の隠れ港として使用されているようです。現在は小型船が一艘、停泊しています」

「避難経路に使われると厄介だな。マット、海から遠隔攻撃で出口を塞げるか?」

「了解。ひとっ飛びでさぁ」


マットはメタリックな羽を煌めかせて島の反対側へと飛び立った。


「島の北部と南部にある尖塔らしきモノからは、何らかの魔力反応が。迎撃の魔方陣の可能性があります。中央の峰には砦が築かれており、中腹にある岩屋を居住区画として使用しているようです」


「かなり規模がでかいな。セス、尖塔の魔方陣を解除できるか?」

「了解。お任せを~~」


セスはバビューンと風になって駆けて行った。


「最後に、居住区には攫われてきた現地民だと思われる生体反応が多数あります」

「現地民か……面倒だな。まずは、砦に向かい武力の無効化を行う」

「了解」


エルドはレオを肩に乗せると跳躍の魔導術式を展開した。

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