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プロローグ

 異世界修繕魔導部の一角に窓の無いホールのような広い空間がある。その中央、鈍く黒光りする小さな台座の上に、おおよそ一人分の間隔を開けて二本魔石が突き出している。高名な錬金術師達の手によって膨大な魔導術式が刻み込まれた魔石である。この世界に影響が出ないように極力小さく作られたそれは”異世界移転魔導装置”……通称”(くるる)”。”クロス”達が異世界を行き来する為だけに作られた魔導装置だ。


 枢の部屋に颯爽と一人の男がやってきた。闇夜を溶かした黒髪に、黒曜石の色を宿した瞳は”クロス”の証だ。男は部屋に着くなりおもむろに服を脱ぎ始める。淡々とした動作に迷いは無く、着衣を全て脱ぎ終わり露わになったのは、余分な脂肪の無い鍛えられた体躯。男は枢の横に置かれた棚から小さな瓶を一つ手に取ると、トロリとした液体を一気に煽り少し顔をしかめ、空になった瓶を元の棚に戻す。


 男が手をかざし静かな声で術式を紡ぐと、魔石は光を帯び、密閉された空間は男の声で満たされる。難解な術式が男の身を包むと、その体は飴細工のようにぐにゃりと形を変え、見る間に縮んでいく。何もない空間からゴポリッと沸き出した薄桃色の泡のような物体が小さくなった男の全身を覆っていき、それはツルリとした球体状に固定する。


『準備完了。解錠を頼む』

『思念通話良好。解錠は受理されました。枢の開閉まで、5・4・3・2・1・0』


 涼やかな女性の声でカウントが始まると、それまで何も無かった魔石の間に魔方陣や術式が幾重にも重なった光の扉が現れ、金属同士が擦れ軋む様な耳障りな音をたてながらゆっくりと開いていく。扉が開ききると、桃色の淡い光に包まれた球体はぐうぅんっと扉の中に吸い込まれていった。

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