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翻訳傭兵の旅物語  作者: おたま
8/11

帰還

昼飯も食べ、ベルハルザの扱いも決まった。


ベルハルザの正体は俺とアリシア。アベーラさんの3人しか知らない。


伝承道理であるなら、古今無双の大英雄だ。船旅でもその剛力やスキルの『暴風』で大いに活躍してくれることだろう。

護衛としても大いに活躍できるだろう。英雄だし。


この一ヶ月から丸々、アリシアと共に俺たちが面倒を見ることになった。


衆目の中で、ベルハルザと呼ぶのは拙いので、ベルさんと呼ぶこととなった。

 

まずはアリシアとともに、協商同盟の公用語である『フィア語』と一般常識を習得させよう。


だが、疑問が残る。ベルハルザはどうやってこのキャンベラ船にやって来たのかだ。


ベルハルザに聞いても『知らん。いつの間にかここにいた。』と何食わぬ顔と言われるのだ。


と、考えると怪しいのは『アリシア』だ。

そもそもアリシアはベルハルザと対したとき、ベルハルザ側の奥にいた。

と、言うことはなにか隠しているじゃないのかと説いてみたらあっさり包み隠さず話したのだ。


疑ってしまった自分が恥ずかしくなる。


聞いて見るとこうらしい。

俺が『開放』件の絵をスキルで元通りにしてすぐからだ。

俺が寝に入ったとき、アリシアが丁度俺の部屋に来たらしく、俺が手に載せたままの絵画。『開放』を発見。今まで見たことのない絵画だったので興奮したアリシアはすぐさま俺から奪い取り、模写をし始めたそうだ。

模写を始めた理由は俺が前に読んであげた指南書で「まず著名な画家の絵を模写して、絵の中の意図、造形、意志を理解する。」と書いてたかららしい。

一言一句覚えているということは本当にうまくなりたいらしい。

俺は嬉しい。


そして丸一日使い、『解放』の模写が完成した。完成した模写を高く掲げた瞬間に爆発がおき、ベルハルザが出現したらしい。


アリシアのスキルは『具現化』だったがまさかそういうことなのだろうか。

色々検証してみなければ。



2週間が経過した。今までで一番大変だった2週間だった。


アリシアとベルハルザに一般常識を叩き込み、『フィア語』の練習。

ベルハルザが何度逃げ出したことか。


それだけじゃない。ほかも色々手間を掛けされられたのだ。


ベルハルザは現れた当時ボロボロのフルプレートアーマーだったし、本人もボロボロだったので、船医さんに頼み直し、治してもらおうとしたが脱ごうとしなかった。


理由は恥ずかしいからなのだそう。


どうやらベルハルザは彼らの中では相当のブサイク顔であり、見せるのが恥ずかしかったと言っている。


と、言うことは我々の世界ではイケメンだ。

『うるせぇいいから脱げ。』と船医、クルーと4.5人がかりで脱がせたらそりゃもう美形の美青年であった。


白いサラサラな髪。青い。いや碧い眼。今の時ならばこの美貌だけで一国の姫すら虜な出来そうなくらい美しい。

こんな顔をしているくせにヘルムを取った瞬間『見ないでくれ!』とすごく狼狽えているのが我らが英雄防風『ベルハルザ』だ。


そもそもスノーエルフの国『ウィンターフォール皇国』はもともとアポーマーであったがその容姿で差別され追放されたアポーマー達が建国した国だ。

その建国理由があるので容姿に対するコンプレックスはあるのだろう。


まあ、この世界いれば自分がイケメンだということにも気づくだろうし、大丈夫だろう。


肉体の方もボロボロではあったがやはり英雄。応急手当を施し、一週間くらい経てば元通りであった。


すげえ。


鎧の方はボロボロで修復はとても難しい。船の上では我々の力量では不可能だ。せめてと、鏃だけは外し、肌に刺さることはなくなったと思う。

鎧を手入れしようと思ったが、重ねて言うがここは船内だ。水も限られており、補充の鉄もない。

ベルハルザには悪いがヴェネクトに着くまでの我慢だ


そのことをベルハルザに話したのだが澄まし顔で『ふん。この鎧はドワーフ達に作ってもらったのだ。お前らに直されちゃ彼らの格好がつかん。』

と言われた。

少々ムカついたが、確かにドワーフ達が作った鎧なら素人の俺たちがなにかイジるのも問題だろう。軽い手入れのみとした。


鎧を修復?した後、ベルハルザはずっと鎧を着こんでいる。船の上で労働をする際も、監視をする際も鎧だ。錆び付かないのだろうか。


何よりもベルハルザがいてよかったと思ったのは対海賊だ。


キャラベル船にもひるまない蛮勇勇ましい海賊どもの心を折ってくれる。


『暴風』のスキルにより、風を呼びその風に乗りながら空を飛ぶ。

何十人もアポーマーの騎士を一騎打ちで葬り、何千人もアポーマーの戦士達を屠っている実力は海賊たちでは相手にもならない。


今まではなんとか海賊の追撃から逃げたり、船員が『攻撃魔法』を放ちなんとか追い払っていたがベルハルザのお陰で船員たちも本来の仕事に集中できるだろう。


アリシアの能力の『具現化』はあれから作動していない。模写をしたものが具現化するということなら、試しにリンゴを模写させてみたのだが、具現化しなかった。アベーラさんも模写してもらったが何も作動しなかった。

謎は深まるばかりだ。


そして残り2週間。ベルハルザもまた学習能力が高い。このまま行けば『フィア語』も軽い日常会話はできるようになるだろう。


ならばと今新しく教えているのはベルハルザ死後の歴史だ。

そこまで詳しくすると頭が痛くなると思うので頭に入る程度の軽い大まかな歴史のみだ。

今教えるのは第一紀までだ。


そもそも第一紀だとか第二紀だとかの説明からしていこう。

紀とは歴史を細分したもので歴史的革命が起こると歴史家達が新たな時代と定め、各国家に提出し、各国家に認められたとき初めて紀が変わるという感じだ。


第一紀の始まりは今の『教皇国』に首都『アルバス』を築き『大アポーマー帝国』の建国から始まる。

そこから400年をかけこの我々が暮らす『大陸』のほぼすべてを征服し、最初の世界帝国となった。


第一紀605年。今はアルバスが本拠地の『ゼファラス教』と世界を二分する宗教『ゼストム教』の本拠地で今はゼストム教の聖地である『神聖同盟』本拠地。『アンデル』において最初の反乱者『ザルーツ』が奴隷反抗を開始。

『氾濫戦争』が始まった。


第一紀630年。奴隷反乱軍が首都『アルバス』の占領を成功。

同地を首都とする第二の世界帝国。『奴隷フィア連邦』の建国を宣言。アポーマー以外の全種族が平等に共存できる国家建築を目的とした。


第一紀653年。対アポーマー過激派が暴走。世界に散らばったアポーマーの虐殺を開始。生き残ったアポーマーは東の大陸である『ワナイダ』に逃亡。この浄化行為を後世では作戦名になぞらえ『夜の霧』と呼ばれている。


第一紀800年。『奴隷フィア連邦』が崩壊。動乱の時代へ映る。


というのが第一紀だ。この第一紀が最も長い。

現在は第五紀12年。フィア連邦建国から約1000年経つ。


そんなことを教えていると早2週間が経過し俺とアベーラさんの、拠点である『ヴェネクト』に到着したのだ。


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