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翻訳傭兵の旅物語  作者: おたま
6/11

始まり

『時戻し』発動から1日。ようやく完了した。


疲れた。


灰を戻した結果。これは一つの絵画となった。


題名は『解放』。

大きな大聖堂の真ん中で矢が刺さり、血が噴き出て、いまにも倒れそうになっている騎士の絵だ。剣を杖にして辛うじて立っているという感じだ。

切れ端の一文は絵の一部で、大聖堂の端っこに書かれている。


この騎士がベルハルザなのだろうか。

今まで見たことがない。


ともあれ疲れた。少し横になろう。







夢の中だろうか。意識が薄い。


ここは、何処だろうか。白い。アルバス?


刃が交わる音がする。後ろを見ると微かに見えた物だが黄金と白銀が戦っていた。


戦っていたというが俺にはその姿を捉える事が出来ない。速すぎるのだ。


黄金の残光。白銀の閃光。


何を言っているのかはうまく言い表せないが、これがきっと英雄の戦いというのは理解ができた。


それに白銀とともに戦っているのだろうか。小さな…、猫?

猫もいる。真っ白の猫だ。空中を跳び回りながら魔法を詠唱している。……『幻術魔法』だ。『透明化』を使いながら火炎球と飛ばしたり、白銀の前に防壁などを造り上げたりしている。


あれは『エーカット』と呼ばれる獣人だ。猫や犬の姿をしており、愛くるしい見た目をしているが非常に頭がよく、人の言葉も喋れる。『エネサーブ首長国』で『消音』の魔法を施してたのも彼らであり、魔法の中でも『幻術魔法』に長けていると言われる種族だ。


その絵画のような戦いに見惚れていると猫。『エーカット』が近づいてくる。


『貴方は巻き込まれてしまった。ごめんなさい。でも、その力きっとあの子の役に立つ。お願い。あの子を『アリシア』を助けてあげて。』


何かを喋ろうとしたがその瞬間鈴の音色が聞こえ、意識が反転する。何かが俺の横を横切ったのを感じた瞬間に意識は消えたのだ。




爆発音で目が覚める。反射で起き上がり、自衛用の剣を腰に差す。

全員の慌てた声が響く。


夢のことは後だ。俺も急いで爆発音の音の出処に走った。


船員が部屋の前で立ち往生している彼処が爆発音の出処なのだろう。

ここはアリシアの画材を置いてある一室だ。アリシアは大丈夫だろうか。


立ち往生して何をしているのだろうか。


「何やっているんですか!早く船の修繕をしないと!」



「いや!アベーラさんが入ってくるなって!ってそうじゃない!アベーラさんがカルロさんが来たら入れされろって!不味いことになってます!なんかボロボロの騎士が!」


よくわからないが、取り敢えず俺は入っていいということはわかった。騎士がいるということなので念の為に船員にすぐに武装の準備をするように言い、ドアを開けた。


「アベーラさん!大丈夫ですか!」


開けた瞬間に見た光景は奇妙なものであった。


まずアベーラさんが自身の剣をもち、威嚇をしている。


問題は向かいの相手だ。アリシアを庇うように前に立っているそれは、背中には矢が何本も刺さっており、板金はひしゃげ、ヘルムについている羽のような装飾も片方がない。


本来は白かったであろう甲冑は土や血で汚れている。

背中に堂々とあるマントもビリビリに破かれている。


どこから見ても敗戦の、瀕死の騎士といった見た目だ。


「カルロ!助かった!こいつアリシアちゃんを人質にとって!しかもこいつ何語かもわからん!通訳を『翻訳』を頼む!」


アベーラさんは視線を動かず俺に指示をする。横から見る顔には汗が滲んでおり、死中の真っ只中というのを理解した。


『貴様らは何者だ!何処のものだ!なぜ人間が剣を向く!『ルーツ』か!『フォローザ』か!『巫女』様に何をしようとしていた!答えろ!逆賊共!』


騎士が折れている剣を俺たちに向けながら叫ぶ。その言葉はアリシアの言葉とは似ているが少し違う。


後ろのアリシアを見てみると怯えたように部屋の隅で真っ白のキャンパスを盾替わりにして縮こまっている。


その姿を見て騎士に怒りが湧いてきた俺は前に出て、大声で『翻訳』を開始した。


『お前こそなんだ!何もしてないのに突然暴れ腐りやがって!ここは船の中だぞ!降伏しろ!お前は何もできないぞ!』


『船…?何をいうか!ここは『アルバス』だろう!幻術魔法をかけたな!』


『質問してるのは俺だ!早く答えろ!』


そう騎士と口論を繰り広げていると


『カ"ル"ロ"オ"オ"オ"オ"!こ"わ"い"〜"〜"!!』


と、野太い叫び声と共にアリシアが突っ込んできた。


どうやらアリシアは俺の存在に気づいたようだ。突撃してくるアリシアを左手で受け止め後ろにいるアベーラさんのところに行くように促し、剣を騎士に向け叫ぶ。


『アリシアは俺たちの仲間だ!その『巫女』とやらでもなんでもない!降伏しろ!お前に勝機はないぞ!』


と、言った矢先に騎士は剣を捨て投降した。

呆気ない幕切れであった。





「それにしても…。仲間、か。カルロ。お前にしてはいいこと言ったな。」

騎士に縄を掛けている最中にアベーラさんからそんなことを言われた。

少し小っ恥ずかしい。


「別に…。あの状況じゃあそう言うしかないじゃないですか。茶化さないでくださいよ。」


「いいじゃないか!仲間!お前もそういうこと言えるようになったんだ!今日はいい酒を飲めそうだ!」


そうアベーラさんは笑う。


小っ恥ずかしいという気持ちはあるが、それでも心のなかではアリシアが無事だという安堵の気持ちがあって、温かい気持ちもあって。


嫌な気分ではなかった。


そんなことを思いながら騎士に縄を掛け、尋問の時間となる。


『お前は何者だ?どこから来た?何が目的だ。』


『いっぺんに言うな。こんがらがるだろう。……。俺の名前は『ベルハルザ』だ。』


『ベルハルザ!?そんなはずはない!本当のことを言え!』


『こんな状態で嘘を行ってもしょうがないだろう……。』


そう言った騎士。自称防風『ベルハルザ』は淡々と自分の事柄を話していった。

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