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吸血鬼になったので配信者になる現代百合  作者: 川木
本編 吸血鬼配信者編
28/52

クリスマスに向けて

 クリスマスを目前に私は悩んでいた。シロへのクリスマスプレゼントだ。あれだけ啖呵を切った私だけど、一切の予備準備をしておりません。思い付きで話したからね。

 プレゼントが思いつかないわけじゃない。むしろその逆。あげたい物が多すぎる。


 まず思いつくのはシロの携帯電話、ほんとに電話だけのとりあえずのやつだから、スマホあった方がいいし。でもスマホはなー、こないだシロに別にいらないって言われたし、買うとなったら必要経費でいいような。

 あと財布もなぁ、とりあえずってことで百均の可愛いやつにしたけど、一つくらいちゃんとしたのあってもいい、というか、バッグないな。私のポーチ兼用にしてるけど。

 と言うか、服以外基本兼用でしちゃってるから、シロの私物が少ないんだよね。ううん。悩む。服ももっとあげたいし。帽子とか日傘も日常的に使うからもっと数あってもいいし。あ、靴もなぁ。


 うーん、でもシロが喜ぶかと言うとどうなんだろ。日常的なものはクリスマスっぽくないし、アクセサリーとかも、人間の時にしか使わないし。うーむ。

 時間的には猫の時に使うものの方がいいのかな? 例えばベッドとか……いや、でも一緒に寝たいし、猫のベッド用意するのってどうなの?

 シロが喜ぶもの、食べ物? お菓子とか、いつも食べてるし、高いのって言うのも芸がないような。手作り、も普段割と一緒につくってるしなぁ。


「シロ、買い物行ってくるね」

「む? わらわも手伝うぞ」

「あ、ううん。今日はプレゼント買いに行くから、別行動で」

「む。そうじゃったな。ではわらわは明日行くとしよう」

「留守番よろしくね」


 考えていても仕方ないので、実際に出かけて実物を見ながら決めることにした。

 シロにはグッドポーズして自信満々で出てきたけど、何にしよう。期待させてるしなぁ。


 私昔からおんなじこと繰り返してる気がするな。


 とりあえず駅前の色々はいってるモールに行く。適当に服屋やアクセサリーを見ていくも、なかなかぴんとこない。お菓子コーナーを見ると欲しいのは一杯あるし買ったけど、なんか違うんだよなぁ。


「ん?」


 可愛い! と言う声が聞こえて視線をやると、ペットショップからだった。以前は見ても飼えない悲しみであまり近寄らなかったし、最近はシロがいるから気にしてなかった。でも考えてみれば猫状態のシロへのプレゼントの参考になるかも!

 ケージの並ぶ人のいる辺りをスルーして、猫用コーナーを見る。トイレとか、あ、猫用の服! その発想はなかった。


 いいかも、考えたら家の中で全裸みたいなことだもんね。野生のシロと出会ってたから、猫の時は服を着てないのが当たり前だと思ってた。でもどうだろ、動きにくいとかあるのかな?

 あと、首輪ね。首輪は別に……ん? 待って、もしかして首輪っぽいチョーカーなら、猫の時も人の時も使えるのでは!?


 それにシロってたまに夜に散歩にも行ってるし、首輪あった方がシロの可愛さを見初めた通行人に誘拐される危険性も減るしね。もちろんシロがその気になれば危険なんてないんだけど、予防できるならそれに越したことないよね。

 うーん、でもシロってそんなに大きくないし、人状態も小柄とは言っても本当に同じやつは無理かも? 同じデザインのサイズ違いで二つプレゼントすればいいのかな?


 とりあえずペットショップの首輪コーナーで白猫のシロに似合いそうなのを探すことにする。

 いかにもザ首輪みたいな皮っぽいのとか、鈴がついてるのもいいねぇ絶対似合う。うーん、でも人間もつけることを考えると鈴はどうかな。露骨に首輪なのも。いやでも、それはそれで普通に可愛いよね。ちょっと人間用のアクセサリーぐぐってみよ。


 いったん猫の首輪を置いて、スマホで猫の首輪っぽいアクセサリーがあるか検索してみる。お、いいじゃん。首輪っぽいのちゃんとあるし、可愛い可愛い。

 となると色かな。白くて目は緑だから色はそれ以外、赤がいいかな? 白によく映えるし、大人なシロによく合ってる。うん。いいかも!


 そうだ、せっかくだし私の分も買おうかな。お揃いにしよう。私は髪を赤にしてるから、うーん、黒とか? せっかくだしシロの目の色みたいな綺麗な青でもいいかも。

 あ、でも鈴なんかなってたらうるさいかな? とりはずしてリボンとかと気分で交換できるとなおいいよね。

 よし! その方向で、この首輪の候補をきめておいて、似たようなアクセサリーがないか探しにいこう!


 私は首輪の中でよさそうなやつの写真をとってまず候補にしてから、さっそくアクセサリーを売っているお店に移動した。







「ただいまー」

「うむ、おかえり」


 家に帰ってシロの顔を見ると、めっちゃテンションあがってくる。あー、今すぐプレゼントしたい! そして喜ぶ顔が見たい!


「えへへー、めっっっちゃいいもの買ってきたからね! 楽しみにしててね!」

「お、おお。うむ。汝、自分ですごくハードルをあげておるが、大丈夫なのか?」

「だいじょーぶだいじょーぶ。絶対喜んでくれるから」


 多分ね! でも駄目かもとか不安に思ってたらシロに気を使わせちゃうしね! このくらい強気な方が精神衛生上いいよね!


 迎えてくれたシロと一緒にお家に入り、袋をシロが事故でも中をみちゃわないよう、寝室の普段あんまり触らないクローゼットの奥に入れる。これで完璧。


「お待たせー。さって、明日シロ出かけるし、猫バージョンの撮影しちゃおっか」

「う、うむ。それはよいが。わ、わらわの分は期待するでないぞ」

「シロがくれたなら霞でも嬉しいよ」

「それはそれでどうなんじゃ」

「霞は冗談にしても、シロが考えてくれたならそれだけで嬉しいもん」


 カメラを用意する。猫動画はどれも短いのでまとめて撮影したりするのだけど、今日は新しい玩具が昨日届いたばかりなのでじっくり遊んでみよう。


「今日はもらったプレゼントを開けていきまーす」


 猫のおもちゃと書いてあるし、送り主はすでにちゃーるとか送ってくれた人の名前だったので安心して開けられるので、開封するところから撮影することにする。もちろん伝票ははがしているのでコンプラ? も大丈夫だ。


「にゃーん?」

「ふっふっふー、これはね、シロのおもちゃだよ」

「にゃあ」


 猫動画と銘打っているやつはシロには猫語しかしゃべってもらわないことにしているけど、仕草からそれはわかってるけどそれ何、みたいな呆れた雰囲気がでている。人間臭い感じがたまらなく可愛い。これは撮れ高。

 段ボールの中から野球ボールくらい? の大きさの球をとりだす。写真で見ていたけど、実物は思ったより小さいな。電池をセットして、と。


「さぁシロ! どうぞ!」

「にゃ!?」


 スイッチをいれて床に置いて手を離すと、光りながらボールはごろごろと不規則にあっちへいったりこっちへ行ったりと言う風に動き出す。私は机においていたカメラを手に取りその動きを追いかける。

 おお、これはすごい。思った以上に移動範囲もひろい。普通に拾おうとしたらちょっとめんどくさいくらいだ。


「ンにゃー……にゃっ」


 シロにカメラを戻すと、警戒したように姿勢を低くしていたけど、すぐに玩具に飛びついた。だけど目の前で方向転換され、シロはきゅっと着地しながら顔だけ追いかける。

 凛々しい。かっこかわいい。シロは後ろ脚をつけると同時にまたとびかかる。


「にゃあっ」


 今度こそボールをゲットしたシロは全身で抱きかかえるようにして逃がさない。ばしばしボールを叩いている。


「んにゃぁ」


 かと思うと解放し、ボールを捕捉しながらおいまわし、捕まえずにちょいちょいちょっかいをかける。まるで鬼コーチだ。


「にゃにゃっ」


 そして一通り遊んで満足したのか、シロはふー、と息をついて最後にボールを蹴っ飛ばしてからソファに上がって腰を下ろした。

 動画をとめてから私もソファに座り、カメラを置いてシロを抱っこする。


「シロー、完璧だったよ! めちゃくちゃ可愛かった!」

「うむ……まあまあじゃったの。また遊んでもいいぞ」

「きっと買ってくれた人も喜んでるよー。あ、お礼用にさっきのボールを持ってるシロの写真送ろっかな。あー、ボールがとまってから」


 一瞬腰を浮かしかけたものの、まだまだ元気に動いている。10分で自動でとまるらしいので、とまってからでいいか。


「シロはほんと、純粋に可愛いよね、可愛いの極み」

「確かにわらわは可愛い猫じゃが、どういうことなんじゃ……。それにこれも仕事じゃしな。ただの猫として振る舞うなど、容易いことよ」


 どや顔のシロも可愛いなぁ。と和んでいると、あれ、今のはちょっと聞き流せないないようでは? と思い私はシロの顔を覗き込む。


「あれ、さっきの素じゃなくて演技入ってるの? いやカメラ映えとか気にしてくれてるのはわかるけど、楽しんでるふりなの?」

「ふりではないが、以前よりはやはり、茜の前でただの猫として振る舞うのはちと恥ずかしい気になるんじゃ」


 そうシロは自分の顔をくしくししながら言った。なるほど。確かにテンションあがって独り言言ったりするの楽しいけど、それを横で聞かれてるとなるとちょっと恥ずかしい時あるもんね。普通に猫として振る舞うのは素で楽しいけど、私と親しくなったからちょっと恥ずかしくもあるってことか。


「私も、シロの前ではどんどん恥ずかしいとこみせてるから、お互いさまだよ。気にしない気にしない。裸を見せあう仲じゃない」

「そ、そう言う如何わしい言い方はするでない、馬鹿者」


 如何わしいって。何となく意味は分かるけど、耳慣れないなぁ。えっちなニュアンスだけど、実際に辞書的にはどういう意味だっけ。

 普通に一緒にお風呂にはいって裸の付き合いをするような仲って意味なんだけど、シロったら純情でピュアピュアだなぁ。そう言うとこ、年上だけどほんと可愛いなぁ。


「ごめんごめん、気を付けまーす」


 前足をばたばたして注意してくるシロの両手をつかみ、ふりながら謝る。


「反省しておるならよいが。汝はちと、そう言う軽率なところがある。肝に銘じよ」

「はーい。よし。シロの可愛さも堪能したし、次は人間バージョンの撮影もしよっか。そろそろ次のピアノ練習の成果、はっぴょうしてもいいんじゃない?」

「む。ま、まだ早いのではないか?」

「またまたー」


 今日もいっぱい撮影した。毎日忙しくって、楽しいなぁ!


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