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吸血鬼になったので配信者になる現代百合  作者: 川木
本編 吸血鬼配信者編
20/52

仲良きことは美しきかな?

「あ、そう言えば折角投げ銭もらえるようになったのに設定するの忘れてた。うーん、まあ、いいか。次からすれば」

「そうじゃな。最初は結構ばたばたしてしまったし、それでお金をとるのもなんじゃし、よいじゃろ」

「お、プロ意識高いねぇ。シロかっこいいよ!」

「はいはい」

「お姉ちゃんが低すぎでしょ」


 葵ちゃんの襲撃から二週間。告知もしてついに生配信を行った。葵ちゃんがせっかくだからと言うことで、わざわざ来てくれている。

 と言っても私が車で迎えに行ったのだ。葵ちゃんが早く言った方がいい、と言うので仕方ないからレンタカーを借りてシロと一緒に実家に行って親に吸血鬼バレしてきた。

 最初は馬鹿を言うなと怒られたけど、仕方ないからリスカして血を噴き出したのにすぐ治るのを見せて納得させた。シロは変身で人外の証明はできても、私は信じないとか言われたのでいらっとしてつい。

 ちなみに、めちゃくちゃ痛かった。勢いでやったから思ったよりやばくて机にぼたぼた血がこぼれちゃったし、治るまで10秒以上かかって普通に泣いた。


 それでもまだ人外なだけで本人じゃない証拠がないとか言われたから、父親と母親にそれぞれ尋問された。同じ内容を言えるかって、それ複数人の容疑者に言わせるやつじゃん。微妙にひっかけようとされたのもあるし。

 でも数時間かけて私の半生を語ったりして納得してもらえた。まあ容姿が変わってるし、疑う気持ちはわからないでもないけど。

 実のところお父さんは最初の説明でほぼ信じてくれてシロに泣きながらお礼言ってたレベルだったけど、お母さんがしつこかったんだよね。最終的に私の文字の書き癖とかご飯食べる癖で判断されたし。葵ちゃんの疑い深さ、絶対お母さん譲りだよね。


「まあまあ、とにかく、配信自体は大成功なんだからいいじゃん!」


 まあとにかくそんなわけで隠し事もなくなったので気持ちよく生配信を実施して、大成功した。

 あとから投げ銭設定してないことに気づいたりもしたけど、些細なことだ。


「まあ、思ったより良かったけど。昔からおしゃべりだったけど、なんていうか、声がよくなったと言うか、抑揚とか聞きやすいし」

「まじ? 照れるなぁ。抑揚とか気にしたことないけど、やっぱ数こなすのがコツなのかな?」


 私の言葉に葵ちゃんは呆れた顔をしつつもそう褒めてくれた。葵ちゃんに認められたやったー!

 シロは配信の最後から猫だったので、さっきから私の膝の上で前足をなめている。可愛い。よしよしと頭をなでる。


 最近では私からお願いしなくてもシロは猫になると膝にのってくれるようになったんだよね。ほんと可愛い。シロを撫でていると、葵ちゃんはしらーっとした羨ましそうな顔をしている。


「にしても、ほんと仲いいよね。お風呂まで一緒にはいってるし」

「えー、羨ましいなら誘ったんだから、素直に一緒に入ってくれればいいのに」


 シロは一緒に入った最初からずっと一緒に入っている。シロが自分で頭を洗うのが苦手なのと、私も洗ってもらうの気持ちいいし。もはやシロを綺麗にしてあげるのは私のライフワークだ。


「誰が羨ましいって言ったのよ。実家でまで一緒に入るからさすがにびびったわ。隠す気ないでしょ」

「ん? 何を隠すって?」

「二人の関係。そう言う関係なんでしょ?」


 一瞬、どういう意味? となった。そう言う関係とは? シロと私の、お風呂に入る関係。濁すような、と思って気付いた。

 これ、私とシロがガチの百合関係だと思われてる!?


「そ、そう言うのじゃないから!」


 私とシロは清い関係だ! シロとお風呂に入ってるのも、実の妹の葵ちゃんと一緒に入ってたのと同じだし! いやらしい意味とか全然ないし、下心ゼロだから!


「葵ちゃんとだってお風呂はいってたでしょ!」

「そりゃあそうだけど、いくらなんでもずっとべったりだし。だいたいお姉ちゃん、昔から男の影とかないし、怪しいと思ってたんだけど。そっちじゃないの?」

「えぇ。んー、ていうか、あんまそう言うのに興味ないんだよね。欲しいとも思わないし」


 なんと、前から私がレズビアンだと疑われていたなんて。確かに男性に興味を持ったことはないけど、べつにだからって女性に興味を持ったこともないんだよね。普通に猫の方が好きだし。

 あと、吸血鬼になっちゃったしね。まだ自覚ないけど寿命も変わってるだろうし、友達ならともかく恋人とかつくっちゃうのはちょっと別れが辛そうだしね。元々そうしたいと思ってないけど、シロに言うと気にするだろうからそれは言わないけど。


「くあぁ……、はふぅ、汝ら、何の話をしておるんじゃ? そう言う関係とか」

「あ、なんでもない。なんでもない。ほら、葵ちゃん。シロは無垢で純粋な可愛い女の子なんだからね」


 仮に自覚がないけど私がレズビアンだとして、シロは可愛い彼女であってそう言う対象じゃないんだからね。シロは猫として生きてきただけあって、俗世にそまらないピュアな女の子なんだから。

 あくびをしてあんまり興味なさそうに問うシロに、私は慌てて喉の下を撫でて誤魔化しながらそう葵ちゃんにけん制する。


「そ、そう。別に注意とかじゃなくて、隠さないでほしいってだけだったんだけど。まあ、二人がいいならいいけど」

「そう言うのばっかりが人生の楽しみじゃないよ。ていうか、それ言ったら葵ちゃんだって何の影もないじゃん」

「私はいいの。ちゃんと計画があるんだから」


 えー、そんなこと言って、葵ちゃんも私と同じ感じで恋愛に興味ないタイプでしょ。少なくとも私が実家にいる時はそうだったし。


「思ったより配信も順調みたいだし、これなら安心かな。場合によっては実家に戻らせるのも案だったみたいだけど」

「げ。絶対やだよ」


 理解してくれたからこそ、仕事がないからのサポートのつもりなのかもしれないけど、今更動物嫌いなあの母の元にもどるつもりはない。シロが猫に変身した瞬間、嫌そうな顔したし。もちろん本物の猫じゃないし、一瞬だけだったけど、反射的にでもそんな顔するような人と暮らせない。


「そもそもここペット禁止なのに大丈夫なの?」

「ちょっと、シロをペットなんて失礼でしょ」

「失礼とかじゃなくて、人から見たらそうってこと。猫特有の音とかあるだろうし、バレたら怒られるよ」

「姿を見られたらそうだろうけど、動物特有の匂いだってないし、猫の鳴き声もほぼないんだから、足音だけなら大丈夫でしょ。抜け毛もないから、もし抜き打ちテストされても人間にさえなってもらってればOKだし」


 私も最初ちょっと気になったりはしたけど、冷静に考えてシロって猫としての痕跡ほぼ0なんだよね。変身さえしてもらえたら、猫のおもちゃと猫用お菓子以外なんの痕跡もない。

 キャットタワーもプレゼントしてもらったからあるけど、それもね、飼えない気持ちを慰めるために空想の猫を飼ってるんですって言えば誤魔化せるしね。


「……まあ、そこまでのレベルなら確かに。実際に猫じゃないんだし、外にもでないなら、いいのかな」

「そうだよ、ここは私とシロの愛の巣なんだよ。絶対帰らないんだからね」

「……」


 あ、ああ。普通に軽口で言ってしまったけど、さっきの会話のせいでなんかめっちゃ疑惑の目を向けられてしまった。いや、言うじゃん、普通に。


「いや、その、とにかく、配信成功のお祝いにパーティしよっか。こういう時はピザだよねピザ」

「ピザは美味しいが、パーティなのか?」

「あ、シロはピザトーストしか知らないもんね。それの本場の味を食べるんだよ!」

「本場の味ではないような。まあいいけど。この近くどの店があるの?」

「おいおい、田舎と比べてもらっちゃー困りますね。もちろん、葵ちゃんが想像する全チェーン店の出前範囲内だよ」

「え、まじ?」


 こうして盛大にピザパーティをした。久しぶりにコーラ飲んだの美味しかった。炭酸ジュースが初めてだったので目を白黒させるシロを撮影しておいた。私も普段炭酸あんま飲まないから、すっかり忘れてた。

 お酒はカクテルで炭酸飲むのが好きだけど、普段は基本お茶飲んでるし、ジュースも2Lペットボトルが基本だから炭酸だと抜けるから飲まないし。


「ううむ。しゅわしゅわして、変な感じじゃの」


 初回のインパクトはもうないし、葵ちゃんもいるのですぐ撮影やめたけど、ピザも食べてもう二杯目だけどまだコーラになれないらしい。


「でも癖にならない?」

「ううむ。まあ、悪いわけではないが、なかなかなれんの。味も変わっておるし」

「シロさんってずっと猫だったんだよね? こういうのの定番としては、お寿司食べさせるとかは?」


 葵ちゃんもシロにずいぶんなれたようで、そう気安く話しかけてる。うんうん。葵ちゃんとシロも仲良くなるにこしたことないもんね。


「お金が入ったらそれもいいかもねー」

「お寿司、それはわらわも知っておるぞ。しかしあれ美味しいのかの? 見た目は正直貧相じゃと思うんじゃが」

「これが文化の壁か。お姉ちゃん、いいもの食べさせてあげてよね」


 ん? 私の手作りが気に食わないと申すか? 昔私のつくるホットケーキをご褒美としてねだってたくせに。

 それ言ったら怒るだろうし、シロの前で言うのも可哀想だから黙っててあげるけど。私っていいお姉ちゃんだなぁ。


「葵ちゃん、帰る時どうするの? 新幹線?」

「え? 送ってくれないの?」

「えー、あー、まあいいけど」


 またレンタカー借りなきゃとか、こないだ行ったばかりで実家に行くのはちょっと、とは思ったけど。でもよく考えたら家にあがらなくてもいいし、出かけたついでに温泉にでも寄るのもいいかも。遠出となると中々思いきらないと機会ないもんね。


「シロ、帰りに温泉よろうね」

「ん? うむ。外でお風呂に入るということか。興味がなくはないぞ」

「えー、ずるーい。私も入りたい。どうせ明日帰るんだから、午前に出て一緒に行けばいいじゃない」

「えー、わがままだなぁ」


 送ってくれの時点でまあまあ我儘なのに、お風呂まで私のお金で入ろうと申すか。とちょっと悩む私に、シロはぽんぽんと私の膝を叩いて眉をよせた。


「そう妹君を邪険にするものではないぞ。いいじゃろう。汝は一緒にお風呂に入るのが好きなんじゃろ?」

「それはそうだけど」


 ちょっといいお風呂にしようと思ってたから、一人分でもそこそこ取られるしなぁ。むむむ。でも確かに、葵ちゃんとお風呂に入るの久しぶりだしなぁ。それに私のお金となると、背中のひとつも流してくれるかも、か。


「しょうがないなぁ、葵ちゃんは。私の妹なんだから特別だよ」

「ありがとう、シロさん!」

「いや、まあ、気にするでない」


 腕を組んで恩をきせるように了承したら、何故かお礼がシロに行ってしまった。手を合わせてお礼を言う葵ちゃんに、シロは満更でもなさそうに頭をかいている。

 うん、二人が仲よさそうで、お姉ちゃんは嬉しいよ。でも、あれ? いやまあ、お金はシロも一緒に稼いでるし? あれなんだけど、うーん。納得いかない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 言われてみれば、にぎり寿司ってピザとかちらし寿司とかに比べると見た目が寂しいですね。
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