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吸血鬼になったので配信者になる現代百合  作者: 川木
本編 吸血鬼配信者編
13/52

膝の上

「うわっ!? な、なにこれ」

「ど、どうしたんじゃ? 多少塩気がつよいが、美味いと思うが」

「お、美味しすぎるでしょ!」


 ブラッドソーセージは普通に美味しかった。レバーが苦手だった私だけど、そんなこと嘘だったみたいに普通に美味しかった。だけど特に感動はないなと思いつつ、シロ的にも普通の食材よりは血液成分も多いけどそこまでじゃないらしかったので普通の豚の血を頼んだ。

 そして届いた。冷凍なので昨日の夜から解凍して現在、朝食を用意する前に朝一で飲んだ。うますぎる。


 どういう味とか、うま味とか、甘いとか、そう言うのじゃなくて、なんというか、砂漠を歩いていて喉がからからだった時に飲んだただの水ってこんな感じに美味しいんだろうなっていう。体が求めてたものってこれ! すっごいうまい! としか言いようがない。


「えぇ、めっちゃ美味しい。逆にシロ、今日まで血のんでなかったけど大丈夫なの?」

「そこまで……? 普通にまあ、飲みなれたらそんなもんじゃよ。もちろん生き物や状態によって血液も味の変化はあるがの。さらさらの綺麗で新鮮な血の方が美味しいが。まあ、言っても全部血じゃから、人としての食事の方が触感や味は種類があって、これはこれで飽きぬし楽しいぞ?」

「いやまあ、いいならいいけど」


 別にこれがあるから普通の食事いらないでしょ、とは言わないけど、でもこれ知っちゃったら定期的に飲みたくならないのかな。まあ散々飲んできたってことなのか。


「ちなみにシロ的にこの血の味は何点?」

「そうじゃな。普通に美味しいと思うぞ。人間が食べられるようにされているだけあって、冷凍されておったとは思えん。ついさっき抜いてきたと言われても違和感はないぞ」

「そうなんだ。解凍しちゃったから早めに飲まなきゃいけないんだけど、今日のご飯一日これでいい?」


 結構大きくて2.5キロ。重さは大したことがなくても抱えるくらいの量だし、飲み切るとなればそこそこかかるだろう。ボトルなので小分けにもできないから、うちはいいけどこれ本来個人で買うやつじゃないんだろうなぁ。


「うーむ。そうじゃな。じゃがわらわはもう飽きているし、汝が全部飲んでよいぞ」

「え? 飲まないならいいけど、じゃあシロの分は簡単になにかつくろうか」

「いや、久しぶりに血を飲んだから、あまりそう言う気分ではないの。わらわのことは気にせずともよい」

「えぇ? ほんとに? 遠慮しなくていいんだよ?」


 もうずっと毎日三食ご飯とおやつまで食べていたのに、なぜ急に絶食を? いやもちろん、吸血鬼的には今の一杯で十分なんだろうけど、毎日楽しみに一緒に食事してたのに?

 シロはまるで普通のことを言ってるかのように平然とした顔で空になったコップをすすいでお茶をいれている。


「いや。本当じゃ。そもそも、今のように毎日三食食べていたことも最近始めた事じゃからな。たまには抜くくらいがよいじゃろ」

「うーん。まあ、うん。わかった」


 無理強いすることでもないし、そう言うならいいのだけど。ちょっとした違和感はぬぐえないものの、別に無理してる感もないし、まあいいか。

 私はもう一杯血をおかわりに注いで、そのままテーブルに移動する。


 いつもなら朝ごはんを食べて片づけをするところだけど、このままコップを持っていくのでなしだ。歯磨きもしないでいいからなんかメリハリがない感じだ。

 テレビの前、ローテーブルとソファのいつも仕事をする定位置につく。置きっぱなしのパソコンを起動する。シロは早速猫になってテーブルにのっかってテレビをつけてぽちぽちしているけど、平日の午前中はいつもたいしたものがない。深夜アニメの録画も、昨夜はめぼしいのがなかったからか、一通りチェックしてからテレビを消した。


 シロが猫の姿でテレビのリモコンをぽとぽちする姿も以前に投稿しているけど、これもかなり見てもらえている。登録者1000人までもうちょっと足りない。4000時間は実は超えている。猫シロ動画は短めだけど数も多くて何回も見られているから余裕だった。1000人まであとちょっとなんだけどなぁ。


「くあぁ」


 シロはあくびをしてソファに飛び降りた。体をまるめてもうひと眠りするつもりみたいだ。


「……あのー、シロさん」

「んにゃ? なんじゃ?」

「一緒に血も飲んで、吸血鬼仲も一段と良くなったと思うんだけど、どうでしょうか?」


 手もみしながらおねだりポーズで下手に出ながらそーっと声をかけると、シロは一旦伏せた顔をあげて片目を開けて私を見上げる。


「んん? どうしたんじゃ? 何かわらわにやらせたいことがあると言うことか?」

「さすがシロ! 話が早い! あのね? ソファでお昼寝する時なんだけど、どうせなら私の膝の上で寝てくれたら、お仕事もっとはかどるんだけどなー、なんて思ってまーす」


 寝てるところにちょっかいかけるのもどうかと思ってたけど、ちょっとずつ寝てるシロをつついたりして、シロは結構眠りが深そうなのも確認したので、膝にのせて時々撫でたりさせてもらえたらな。と言う欲求はずっとあったのだ。

 でも急に言い出したらきもいかな? べったりしすぎはうざいかな? となかなか言い出す機会がなかった。だけど今朝のはちょっときっかけになるのでは? ちょうど寝るみたいだし。とちょっと勇気をだした。


「なんじゃ、そんなことか。別によいぞ」


 シロは目を開けてきょとんと首をかしげて、あっさりとそう答えてくれた。嬉しいけど、でもシロって気遣い屋さんだから、ちゃんと確認しておかないと。


「ほんとに? 寝てるのに撫でられたらうざくない?」

「どうせ暇じゃから寝てるだけじゃしの。起こしてもかまわん。それに……その、なんじゃ。汝に撫でられるのも、嫌ではないしの」

「シロー! 好き!」


 照れ臭いのか下を向いてソファをとんとんしながらそう言ったシロは、感極まった私の声にうるさそうに顔をしかめながらお尻をあげてするりと私の足の上にのった。


「うるさいの。これでよいか?」

「うん! あー、シロの体温があったかいよぅ。最高。頑張るね!」


 シロははいはい、とめんどくさそうに頷いてからそのまま目を閉じた。

 膝の上のシロを写真におさめてツブヤイターに投稿してから、私はやる気満々で動画の編集にかかる。


 最初にするのはやっぱり人気の猫シロの動画だ。最初に占いコーナーをはじめてから色々試行錯誤した結果、今では毎朝日替わりコーナー形式になっている。血液型占いだけだと飽きるからね。


 月曜日に今週の血液型占い

 火曜日にシロの運動会

 水曜日にシロと遊ぼ

 木曜日にシロと読書

 金曜日にじゃんけん


 と毎日内容が変わるバラエティ豊かな内容となっている。

 運動会はシロに色んなスポーツに挑戦してもらう企画で、縄跳び、10メートル走、などのスポーツっぽいものを本人が記録に納得できるまで挑戦してもらうものになっている。

 シロと遊ぼはそのままで、普通にシロと遊んでいる。シロにはさいころをふってもらうだけの双六回は結構話題になった。最近はリクエストされた玩具で遊んだりするのが多い。

 読書は図書館から絵本を借りてきて、私が読んだ後にシロによみあげてもらう朗読ものだ。ひたすらにゃあにゃあ言ってるだけだけどまあまあ見てもらえている。

 じゃんけんはじゃんけんするだけ。


 土日はコーナーは休みだ。その時々に可愛いシロの短い動画を詰め合わせた今週のシロ、だったり、お礼動画を投稿している。毎日投稿が重要、と聞いたことがあるのでそこは頑張っている。

 シロの動画はどれも5分くらい、最長でも15分までの長さにしているけどその分再生数がおおいので、猫動画だけで1000時間は超えている。

 いいねもいっぱいついているのに、チャンネル登録者数はそれほどではないのは、何と言うか、ブラウザのお気に入りに入れているのかな? と言う疑いがあるっちゃある。


 それでも登録者数は900人を超えている。人の方の動画は猫に比べるとぐんと再生数は少ないけど、それでもそこそこ見てもらえている。数が少ないはずなのに欲しい物リストにいれてる人間用の物もくれる人がいる、というか謎なのだけど、欲しい物リストにいれてないものもおすすめですとか言って届いた。どういうシステムなんだろう。

 まあとにかく、あともうひと頑張りで1000人にいくのだ。人の方で何かもう一つ話題になる要素があればなー、と思いつつ思いつかないので、無難に猫動画をつくっている。


 長さを決めている関係上、一回の撮影で複数回分になることもあるので、いまのところネタ切れはまだ起こっていない。


「っし」


 いま撮影してる分を全部編集し終わった。人間だった時より集中力も続くし、同じ姿勢だしだるい、とかがないのでやる気さえあればずっとできるのがありがたい。

 そうじゃなきゃ多分毎日二回も投稿するなんてできなかっただろうしね。

 そろそろ投稿を始めて三週間。一ヶ月になるまでにはなんとか1000人を達成したい。プレゼントくれるのは助かるけど、やっぱ家賃とか現金が必要だもんね。


「ふー」


 一息ついてカップをのみほす。時間がたってもどろっとはしてないけど、常温だからかちょっと色がかわってきてる気がする。でもどちらにせよ美味しい。

 食事をとらない分一気にやったから、実際には大丈夫なのに疲れた気もする。そろそろ3時か。シロに癒してもらおう。


 そっと頭を撫でる。人差し指と中指で頭から背中までなぞるようになでなでしてしく。筋肉の感じといい、猫にしか感じられない。不思議だなぁ、と思いながら撫でているとふいにシロがみじろぎした。


「んにゃあ?」

「ごめん、起こした?」

「にゃぁ、くぁ、構わん、とゆーたじゃろ」


 そのままシロは顔をあげてあくびをしてから、ころんと仰向けに転がって、中に浮いた前足をくいくいとまるでかもーんと言わんばかりに動かした。めちゃくちゃ可愛い。


「あああ、ありがてぇありがてぇ」


 なので誘われるままお腹を撫でる。

 前はシロのお腹も何回か触ったことがあったけど、さすがに人になること考えたら猫の姿なら猫扱いオッケーとは言え、頭を撫でたりだっこしたりは人間でもできるけど、お腹を撫でるのは人だとちょっと違うし。と遠慮していたけど、どうやら気にしすぎだったらしい。猫なら合法。覚えた。


「ふにゃ、なぁん」


 ちょっとくすぐったかったのか、色っぽい声音でないたシロだけどいやがることなく気持ち良さそうに目を細めた。


「かゆいところはございませんかー?」

「にゃぁん。にゃふふふ」


 シロは手足で宙に円を描くように動かしながらも、私の質問には答えずに笑っている。かわいすぎたので、私は動画撮影も忘れてシロをなでなでした。



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― 新着の感想 ―
[一言] 茜「っし、フー……」ゴキゴキ! そういえばこの世界の吸血鬼は食い溜めができるのですね。べんり!
[良い点] 勝手に月水金曜日の更新なのかなと思ってたので今日更新あって嬉しいです! 最初は現代知識に乏しいシロに翻弄される感じなのかなーと思ってたのですが、意外としっかり者のシロ、むしろしっかりして…
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