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え?嬉しいに決まってますわ

「公爵令嬢レリアナ・フォン・サーベルス。

 本日を持って!ここに婚約破棄を言い渡す!」


他のみんなよりひとつ上の段差に立っている金色で凛々しい顔立ちをしている王子がつげる。

今は、私たち16となる貴族のご子息、ご令嬢の初の大きな舞踏会、国王主催、通称セレベイションボールと呼ばれる舞踏会の真っ最中だ。この舞踏会には国中の貴族が集まる。もちろん辺境地にいる貴族や、他の国との国境を守っている貴族も例外では無い。


そんな、人生最初の晴れ舞台、そんな舞踏会でこの国の皇太子は爆弾を放り込んだ。

とりあえず一言。

何言ってんだお前。


あら、自己紹介が遅れて申し訳ございませんわ。私はこの国の国王の次に最大権力を握るサーベラス公爵家令嬢レリアナ・フォン・サーベラスと申します。親しい方にはレナと呼ばれておりますわ。

え?えぇ、勿論、先程婚約破棄を言い渡されたのは私ですわ。幼少期に無理やり結ばれた皇太子との婚約。一目惚れだ、運命だなど意味のわからないことを嘆いておられたので、私のお父様が嫌々結ばれたのです。


国王陛下も呆れた顔をしておられましたが、少し頭のネジの緩かった皇太子が、初恋の人をそばに置いたら少しはマシになると思い私との婚約を認められたそうですわ。

えぇ、本当に、おじ様(国王陛下)は私のことを考えくれておりましたが、あのアホのせいでおじ様の苦労が台無しですわ。


お兄様と共に仲良くさせていただいている他の貴族の方に挨拶していたのを止め、壇上の皇太子、フランシス・フォン・アラバスタン皇太子を冷めた目、ゴホン!悲しげな目で見つめる。

フランシス・フォン・アラバスタン皇太子は、婚約者である私、ではなく、見たことも無いご令嬢を横に侍らせてキョロキョロと私の姿を確認している。

いや、見つけてから宣言しろよ。


「マックイ男爵のとこのご令嬢だね」


横にいたお兄様が私に耳打ちしてくる。あら、分かってないことバレてしまいましたか?

まぁ、男爵なんて私たち公爵家との関わりなんて皆無。私達が興味を持たなければ話しかけることは愚か、視界に入れることですら殆どないですわ。


「レナ!何処にいる!」


フランシス・フォン・アラバスタン皇太子....長い!ウザイ!もー!フランシスでいいわ!そいつがとうとう私を見つけられなかったのか、声をはりあげて私を呼び出す。

仮にも婚約者を見つけられない恥を晒すなんて、アホなの?馬鹿なの?可哀想なの?

横にいるお兄様なんて肩を震わせて我慢してるわよ。


「ここでございます。フランシス・フォン・アラバスタン皇太子殿下。」


貴族の華とも呼ばれているお母様。そして、この国の黒幕とも呼ばれるお父様。その容姿とお父様の頭脳を授かった私、貴族の中の貴族、そう呼ばれている私は、皆の手本となるような美しい最上級の礼をフランシスに向ける。

あら、婚約者だからそこまで深々礼をしなくていい?

だって先程破棄されたではありませんか。

その意図に気付いたお兄様は我慢出来ずに思いっきり吹き出した。それを慌てて咳払いで誤魔化している。後でこってりとお母様に絞られてください。


「そんなとこに隠れていたのか」


いいえ、初めからここで堂々とあなたを見ておりましたわ。

舞踏会なので顔を上げて良い、という許しはいらない。ゆっくりを姿勢を正すと、その美しいと周りから噂されている顔を精一杯使い、フランシスとよく分からない令嬢を眺める。


「フランシス・フォン・アラバスタン皇太子殿下。なぜ私は婚約破棄をされなければならないのでしょうか」


純粋な疑問。


「俺の横にいる彼女をみてそう言えるとは!なんとも面の皮が厚い女だったのだな!」


は?

おぉっと、いけませんわ。淑女たるもの心の中まで美しくいませんと。おほほほほ。


「私には、その崇高なお考えを読み取ることは出来ません。無礼とは承知でお願い申し上げます。説明を頂けますでしょうか?」


てめぇの頭の中がぶっ飛びすぎて意味わかんねぇよボケ。という裏の言葉を隠しながら言うと、言葉通りに受け取ったのかフランシスが鼻を鳴らして得意げに話し始める。

あら、この程度の嫌味も分からないなんて、この国大丈夫かしら?


「レナ、いや、お前など貴様で十分だ」


はぁ?

仮にも貴族に向かって貴様?ほぉー、あなたは私のお父様、いえ、このサーベラス家の権力をご存知無いようですわね。

サーベラス家が裏切って、横の帝国に情報を流したらこの国なんて一瞬でペちゃん、ですわよ。いくら皇太子と言えども、サーベラス家を侮辱して無事でいれるなんて思わないことですわ。

唯一取り柄のその顔と、皇太子としての地位、潰しますわよ。


「貴様は、この私の学友であるキャルを階段から突き落としたり、お茶会で恥をかかせるなどの行いの手引きを裏でしただろう!」


は、い?

どーゆう事ですの?階段から落とす?痛そうですわ、よくその白い肌に傷跡が残っておりませんわね、茶会で恥をかかせる?公爵家の敷地を男爵程度が跨げるとでも?手引き?その方は初見ですわ。


「お待ちくださいフランシス・フォン・アラバスタン皇太子殿下。私はマックイ男爵令嬢とお話したこともなければ会ったこともございませんわ」


えぇ、だって今まで私が参加してきた夜会やお茶会、舞踏会は最低でも伯爵の地位がなければ参加できないものばかり、男爵が参加出来るわけありませんわ。


「ここまでしらを切るつもりか!」


えぇ、だって初めましての人をどーやっていじめんのよ。そんなんただのサイコパスじゃん。

マックイ男爵令嬢と目が会った瞬間、令嬢が殿下にさらに強く抱きつく。普通不敬罪ですわよ、わかっておられますか?

と、言うよりも、この状況を見て誰も貴女方をただの学友なんて思わないわよ。どーみたって皇太子は婚約者を差し置いて恋愛でフラフラしてるとしか見えないわよ。


「もちろんです、私に非はありませんから。」

「貴様!それが貴族として恥ずかしくないのか!」


そのお言葉そのままあなたにブーメランですわ。こんな事をみんなの前でして恥ずかしくないのでしょうか?


「なぜ、私がそのような行動をするのか、ご説明願えますか?」

「いいだろう!」


上から目線うっざ。


「キャルと私はよく講義の事についてサロンやカフェで論議を交わしていた!その事で私をキャルに取られたと勘違いした貴様が、キャルにいやがらせをはじめたのだ!」


わーお、無駄な想像お疲れ様でございます。

まず、自分で地雷を踏み抜いてしまったことに気づきましょう。学友と講義の事に議論するのは大切でございます、しかーし!どー聞いても二人っきりでございますよね?婚約者がいる皇太子とフリーの男爵令嬢が二人っきりなんて、アホなんですか?

ふつーに考えて分かることでございましょう。

それと、


「お言葉ですがフランシス・フォン・アラバスタン皇太子殿下。

私はお2人と違い学び舎には通っておりません。どうやってマックイ男爵令嬢のことを知るのでしょうか?」

「それは貴様の友人にでもきいたのだろ!」

「申し訳ございません。私の友人は全員、学び舎には通っておりませんわ」


アホですの?考えてくださいまし。ここで宣言しなければ私はフランシスと結婚して国母として精一杯務めておりましたのに、それから貴女が元々学友であった側室にお熱であろうがどうであろうが全く興味が無かったですのに。

あーあ、アホですね。高望みしすぎましたのね。


「ぐ、しかし!知れることもあるだろう!」

「確かに、お茶会の席で皆様から話を聞いたりする事もあるかもしれません」


そうだろ!とドヤ顔をかましてくるフランシス。うっざいわー、キッもいわー、無駄に顔整ってるのがムカつく。今すぐその顔面にわさびパイをしてやりたいわ。


「しかしそれなら、私は公爵令嬢として、皇太子殿下の婚約者として、正式に男爵家の方に文面で抗議させていただきますわ」

「ふん、今更そんなことを言おうと関係ない!貴様がこのキャルを虐めていたのは明白なんだからな!」


へぇー、証拠があるんだ。


「それは、なんでございましょうか」

「彼女らだ!」


そう言ってフランシスが手を指し示した方を向くと、いるのは知らないご令嬢達。うん、誰?


「彼女達は貴様に脅されている、公爵家を盾にキャルを虐めるように言われた!と俺の前で教えてくれた!よって!貴様の罪は明白だ!」


アホですの?フランシスもマックイ男爵令嬢もこの彼女達も、目先の利益に囚われすぎですわ。


「そうでございますか、そこまで私への信頼が無いのでしたら、この婚約破棄、お受け致します。」


深々と頭を下げる。マックイ男爵令嬢は喜びのあまり顔をほころばせているし、フランシスはムカつくドヤ顔をかましている。


「よろしいでしょうか?国王陛下、王妃様。」


私が目を向けた先、そこにはこの国の最高権力者である2人が、王座に座りことの成り行きを静かに見守っていた。

さすが放任主義の御二方ですわ。普通の親なら止めますわよ。


「ふむ、フラスよ、ほんとに婚約破棄を望むのか?」


国王陛下の渋く、重く、威厳のある声がホールに響く。国王陛下が喋るとあって、誰も口を開かず静かに言葉を聞いている。


「もちろんでございます!こんな腹黒を王妃になど、考えられません!」


ほんっと、失礼な奴ですわね!殺しますわよ!私剣術も魔法も一流ですらね!


「ふむ、しかしのぉ、お主らの婚約は繋ぎの神の署名付き。そう易々と切れるものでは無い」


呆れたように国王陛下が告げる。


そう、この世界では神は存在するものだ。森羅万象全てに神がおり、その神々は地上すべてから見ることが出来る、天空に浮く神の国、ナシオンディユ。

そこで過ごされている。

一国の王でもナシオンディユに行くことは殆ど出来ず、さらに会うことなんて一国の王でも一生に一度あるかないか程度だ。


そんな神の署名入の婚約を破棄するなどあっていいものでは無い。


「簡単でございます!

その!レリアナ・フォン・サーベラスの名のところをキャロライン・マックイに変えればいいのです!」


....え?ホントのアホ?

馬鹿じゃ無いですか?そんな事したらまじで神の怒りを買いますわよ?神騎士が攻めてきますわよ?神騎士1人でこの国は滅びてしまいますわよ?


国王陛下が呆れて頭を抱えている。馬鹿フランシスはマックイ男爵令嬢とキャッキャっと楽しそうに笑っている。多分マックイ男爵令嬢が素晴らしいお考えですわ!なんて言ってんだろう。

脳内お花畑野郎共め。


「国王陛下、発言の許可を頂けますか?」

「許す」

「僭越ながら言わせていただきます。ここで、国王陛下が婚約破棄を承諾していただけますなら、その婚約の署名、私レリアナ・フォン・サーベラスが責任を持って処分させていただきます。」


会場にいる全員が驚いたのがわかる。当たり前だ。この署名を破棄するということは神の名に泥を塗るということだ。


「本当に、いいのかね?」

「もちろんでございます。」

「レナ、ワシはお主のことを本当の娘のように大事に思っておる。本当に、お主に被害はないか?」


国王陛下のそのありがたいお言葉に、ギュッと手の中の扇子を握りしめる。


「ここで誓わせて頂きます。その署名の破棄を私に託して頂けるのでしたら、私にも、この国にも、一切の被害はありません。」

「そうか、それなら、レナ。お主にたくそう。」


そう言うと、国王陛下の座っている、数段高い位置から風魔法で書類が運ばれる。


「ここで、皇太子フランシス・フォン・アラバスタンと公爵令嬢レリアナ・フォン・サーベラスの婚約の解消を宣言する!」


国王陛下が宣言した瞬間、後ろからマックイ男爵令嬢とフランシスの喜ぶ声が聞こえてくる。

あぁ、なんて、なんて!


「ありがとうございますわ!

フランシス・フォン・アラバスタン皇太子殿下!キャロライン・マックイ男爵令嬢!」


私の生き生きとしたお礼に2人の目が点になる。


「お父様!お母様!お兄様!

そして、トレヴァー!賭けは私の勝利ですわ!!」


横にいるお兄様が頭を抱えて思いっきりため息を着く。国王陛下のそばに控えているお父様とお母様も呆れたようにこちらを見る。

そして最後の人物、トレヴァー。彼は、


「さすがだ。愛しのマイフィアンセ」


どこからが現れた彫刻のような男性。彼は私を片腕で持ち上げると鼻先にキスを落とす。

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