第四十二話 勇者
転移した先から少し歩くと、そこには大量のデュラハンがいた。
しかし、俺達の姿を見ると頭のない体で平伏する。
「...はい?」
何があったんだろうか。
そんなことを考えていると、白髪の男魔族が現れた。
「これはどういうことだ?」
「貴方様方が今回の私たちによる王都侵攻軍を潰して回っている、とお聞きいたしました。どの魔族もほとんど攻撃が当たらずに死んでしまったとのことですので、勝てないと思い、降伏に至ったところでございます」
なるほどな。
ついに情報が回ったか。
逃亡だったら面倒だったが、まあ降伏だから良いほうに傾いただろう。
「そうか。だが俺達の情報はどこから手に入れたんだ?」
「戦闘狂...いえ、マックスと言う魔族から、通信魔法が来ました。ただ、他の魔族たちはほとんど降伏しないとのことで...」
マックスか。
通信魔法なんてあったんだな。
ただあの戦闘狂が魔法か。
他の魔族がおそらく通信魔法を使っていなかったことを見ると、安全なところでしか使えないのだろう。
もしくは、魔法に文字を乗せて届けるというよりはその場で喋る、電話みたいな魔法なのだろう。
「なるほどな。ただ、この軍全員での降伏となるとデュラハンの扱いに困るのだが...」
騎士団に入れるにしろ、首から上がないのが問題だ。
前にマックスに使った魔法はこの数に顔の個人差を付けるのには向いていない。
片手に持っている首を付ける方法があればいいのだが...
「首は一応接合可能です。接合部が見えないようにすれば問題ないかと」
なるほどな。
「分かった。ついでに聞くが、お前は魔術師か?戦士か?」
「そうですね、私は暗殺者タイプなのでどちらにも分類されないかと。ただ、正面からの戦闘も可能です」
なるほど、暗殺者タイプか。
だったら俺を暗殺しようとは思わなかったのだろうか。
...いや、そこは状況判断力が高いのだろう。
もしくは、暗殺者には敵の力量が勘でわかったり、とか。
「まあ、デュラハン達と共に騎士団に入ってもらうか。騎士軍団の中に紛れて暗殺者が奇襲、とかなったら強いだろ」
「分かりました」
契約魔法を使い、
っということで魔族とデュラハンに幻影魔法を使う。
そして、街の近くに転移し、そこから徒歩で騎士団の詰所に向かう。
千を超える人数なので、目立っている。
まあそんなことを気にしていても仕方ないので、堂々と歩く。
しばらくすると、詰所に到着した。
「ハヤテ様男爵様、本日はどのような御用...そちらの方々の入団でしょうか?」
デュラハンが騎士っぽい格好してるから分るか。
「そうだ。千人とちょっといる」
「分かりました。あと、団長がハヤテ男爵様に話があると」
ん?
なんだろうか。
「分かった。すぐに行く」
そう言って俺達は奥に入っていく。
団長が待つ部屋に入り、席に着く。
「ハヤテ殿、重大な情報が入った」
ふむ。
なんだろうか。
「何があった?」
「端的に言おう。勇者が召喚された」
なるほど、そう言うことか。
魔族襲撃の話を聞きつけたのか、教国が急いで召喚したのだろう。
「情報は有り難いが、重大と言うほどでもなくないか?」
「この話には続きがある。数がおかしいんだ。普通は二人から四人ほどなのだが、今回は37人が一気に召喚された」
なるほど、クラス召喚と言う奴か。
「確かに多いな。ただそれが問題になるのか?」
別に何もないのであれば、数が多くても重大ではないだろう。
「ああ。今回の勇者のほとんどが成人したかしてないかくらいの者なのがだ、その中の数人が勇者であるということをいいことに、好き放題やっているそうなんだ」
なるほど。
やばいやつがこっちに来てしまったというわけか。
「なるほどな。そいつらに気を付けろ、と」
「ああ。あと、遭遇したら討伐しても良い」
「討伐、か。好き放題やってるとはいえ、他国の人が勇者を殺したとなっては教国に戦争でも仕掛けられるんじゃないのか?」
普通に考えたら自分たちが召喚した対魔族の切り札を他国に人に潰されたとなったら怒るだろう。
「いや、どうやらそいつらには教国も困っているみたいでな。むしろ殺してくれって感じだろう。そもそも普通の人に討伐される勇者なんぞ要らないだろう」
隣でミリアがハヤテは普通の人じゃないでしょ...って言ってたのは気のせいだ。多分。
まあ、確かに一般人に負ける勇者は要らんな。
ただ、勇者の実力が分からないから、討伐できるかはわからないな。
「なるほど、まあ出会ったら一戦交えてみようと思う」
「死なないようにな」
まあ、勇者相手だからそうなるよな。
「ああ、気を付けるよ」
「そうしてくれ。情報は以上だ」
「分かった。じゃあ魔族かその勇者の討伐に行ってくる」
そう言って立ち上がり、外に出る。
「勇者討伐ですか...勝てるのでしょうか?」
どうなんだろうか。
「現時点では何もわからないが、勝てなさそうだったら転移で逃げればいいだけだからな」
転移、最強の逃走術だな。
「じゃあ勇者の位置を探すぞ」




