第三十八話 マックス
「お前ら、なかなかやるな。俺は魔王軍序列四位、マックス・バイアー。人間達、いざ尋常に勝負」
強そうなの来た。
しかも戦闘狂タイプだろこいつ。
序列四位て。
これ、近々召喚されるって言われてる勇者が倒すような奴じゃないか?
魔族四天王、的な。
まあ倒しても別に問題ないだろう。
マックスと名乗った魔族を注視する。
体力と攻撃力、剣術に優れた騎士タイプか。
「ハヤテだ。良い勝負にしよう」
そう言ってマックスに高速で近づき、アイテムボックスから出した剣を右手で振り下ろす。
マックスはそれをとらえて応戦する。
「お前、強いな。人間とは思えない」
「そっちもかなりだな。剣神術を持ってそうな奴に会うのは今日が初だ」
そんな会話を交わしながら斬り合う。
こいつには人間を殺したいという考えはないようだな。
ただ戦うためだけに参加したのだろう。
そんなことのために人間に攻撃を仕掛けられるのはいい迷惑だが、まあ悪意を持って攻めてくるやつよりは全然良い。
「お前なら本気で戦えそうだな。行くぞ!」
マックスの力や速度が上がった。
うん、人型の生物の中では今までで一番強いな。
俺は剣をもう1本アイテムボックスから取り出し、さらに剣神術Sをフルで開放する。
こいつ剣神術Bくらいあるな。
放置してたら間違いなく人間の脅威となっていただろう。
これで序列四位なのだから恐ろしいな、魔族は。
ただ、上位3人はおそらく魔法を使うだろう。
単純な剣術であればマックスが圧倒的にトップだと思う。
良い敵と出会えたな。
まあここで殺すわけだが。
...いや、もったいないな。
こいつの目的がただ戦うためなら騎士団にでも入れさせればいいな。
人間側が許可すれば、だが。
しばらく斬り合っていると、いい感じの隙を見せてくれたので斬ると地面に倒れたので剣を突きつける。
「俺の負けだ。殺せ。久しぶりに本気を出して戦えて楽しかったぜ」
「お前みたいなのを殺すのはもったいないからな。騎士団に入ってくれないか?」
「騎士団?人間のか?俺が暴れないとも限らないぞ?」
それもそうだな。
さて、暴れるのだけを縛れるような魔法はないかな?
『スキル名:契約を創造しました』
なるほどね。
俺は契約を発動し、【命を助ける代わりに騎士団の一員として仕事をする。決闘や訓練等以外の場で人間を攻撃せず、魔族との戦争には参加しなくてもよい】という内容をマックスに送る。
「凄いスキルを持ってるな。これにサインすればいいんだな」
そう言って契約にサインする。
これによって契約が成立し、マックスは人間に攻撃できなくなった。
契約に違反しようとすると体が動かなくなるため違反することはできない。
「よし、マックスのこともあるし一回帰って騎士団の詰所に行くぞ」
「魔族を生かしておいてよかったのですか?」
フィアが聞いて来る。
「こいつには人間に対する敵意を感じられないからな。ただの戦闘狂だ」
「な、なるほど」
そんな会話をし、範囲化転移で町の近くに転移した。
よし、街に入って騎士団の詰所に行こう。
「あ、魔族が街に入ったら騒動が起きるから偽装しとくぞ」
『魔法創造、幻影魔法』
幻影魔法はその名の通り幻影を生み出すことができる魔法。
これにより、羽や角を無いように見せる...いや、羽を龍人の物にする。
そして街に入り、しばらく歩くと詰所に到着した。
「えっと、王女様とハヤテ男爵様ですね。どのような御用で?」
中にいた騎士が問いかけてくる。
ちなみに俺が男爵になったというのは一昨日貴族や騎士等の王に仕える人に向けて発表された。
「こいつを騎士団に入れさせたい。実力は俺が保証する」
「龍人族の方ですね。分かりました。住居もこちらで用意いたしますので引き取らせていただきます。他に御用は有りますでしょうか?」
すんなりと引き取ってくれたな。
まあ、無駄に詮索されるより全然良いんだが。
「もう一つ、重大なことがある。団長に通してくれ」
「分かりました」
そう言って騎士は奥に入っていった。
こっちもすんなりだな。
貴族ってのはでかいだろう。
しばらく待っていると、奥から先程の騎士が出てきた。
「団長の許可を得られましたので奥の部屋へどうぞ」
そう言って俺達を案内する。
騎士に付いて行き奥に行き、案内された部屋に入る。
「ハヤテ男爵殿、王女様とその仲間さんたち、わざわざ来ていただきありがとうございます。私は騎士団長のリチャードと申します。それでハヤテ殿、重大なこととのことだが何が起こった?」
「魔族率いる魔物の大群の襲撃を確認した。その魔族によると他にもいくつか魔物の大群があるらしい。数は一つの大群ごとにおそらく千ほどだ。確認したのはマンティコアとサイクロプスの群で、どちらも殲滅したが他は分からない」
「なるほど、魔物の大群か。マンティコアの大群と言ったら冒険者ギルドに有ったものだな。他にもいくつかの大群があり、魔族が率いている、と。先日の学校襲撃と言い、本格的に魔族による侵攻がはじまりそうだな。情報ありがとう。すぐに対応する」
そう言って騎士団長は王城に向かって走っていった。




