表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/39

07



「イレギュラーなことが起きました」



「イレギュラー?」



父と母に号泣されながら送り出された馬車の中、迎えに来たのはやっぱりリュカだった。

5年ぶりだと言うのに姿が全く変わっていない…女王から授かった緑の力のお陰らしい。羨ましい。


そうそう、エリオットは入団して暫くは1番近くの屯所にいたのだけど、つい3ヶ月前に異動になった。

たしか、エリュシオン…と言ったかな?なーんか聞き覚えあるのよねぇ…。

異動前に一時帰ってきた時

『立派な聖騎士団になって待ってるからね!!』

と、めちゃくちゃ真剣な表情で言われた。…エリオットってあんな表情もするんだね、ときめきしかない。


それからは毎日忙しいらしく、異動直後の手紙一通しか手元にない。…まぁ、便りがないのはいい知らせって言うしね。多少はね。…寂しいけど。



ってそれよりも今はリュカの言うイレギュラーよ。

一体なにが起こったと言うの?



「女王の力を持つ者が、昨日発現したと報告がありました」



「き、昨日!?」



なんて急な…!

…ん、待てよ、たしかゲームでは…すぐに迎えが来てた。

そんないきなり発現して聖殿に来るの?大丈夫?



「多分、女王試験は競争という形になると思います」



「あぁ、力を上手く使えるかっていう?」



そう、女王の力が発現し、15になったからといって、すぐに女王になれるわけではない。

試験という形で力の使い方を正しく覚え、本当に継承出来るかを確認するんだそうだ。

試験内容は守秘義務があるらしく何も教えてくれなかったけど、多分ゲームと一緒、かな…。



「最初の1週間、スーリヤ様に習うといいですよ」



さすが私の師匠。未だに苦手なことを知っているんだね。


「あ、リュカさん甘いの好きですか?アップルパイ焼いたんです」



「…いただきます」








「女王陛下、お久しぶりです!」



「ペルラ!待っていたわ」



ふわり、と甘いローズの香りが漂う。

あぁ、女王だー…。



「前回スコーンご馳走になったので、お返しにアップルパイ焼いたんです。よかったら」



「まぁ嬉しい!ありがとう。とても美味しそうだわ」



「ジュリオ様もお久しぶりです。苦手でなかったら召し上がってください」



「久しいな。ありがたく頂こう」



「え〜、俺にはないの?」



「フェリオさんの分もありますよ」



約8年ぶりに会う皆様は本当に変わりなく、温かい方達だった。

もう1人の候補生を迎えに行ったニコラスを待つ間、アップルパイを囲んでお茶にした。



「まぁペルラ。お茶の淹れ方も上手なの?とても美味しいわ」



「前回女王陛下にご馳走して頂いたスコーンも紅茶も美味しくて、自分で出来るよう習ったんです!」



「おぉ、いい心掛けだな。ここで出来ることは限られてるからなァ」



「これから毎日頂けると思うと、楽しみですね」



「リュカさん!?さすがに毎日は無理では」



ん?そういえばあと1人いたはずでは?

まだ挨拶していないことを思い出し、口を開こうとしたと同時にくぁ、と大きなあくびが聞こえた。



「…ん、めちゃくちゃいい匂いする〜…」



寝ぼけ眼を擦りながら、ふらふらとこちらに歩み寄ってきたのは……スーリヤ、だよね?


立ち絵では綺麗に整っている燃えるような紅い髪が寝癖やらなんやらでぼさぼさ、星のように煌めく黄金色の瞳には涙とゴミが溜まり、ラフに着こなしていた赤が基調の衣装は、ラフとかいうレベルを超えて崩れていた。

てか、え、そんな喋り方…!?



「寝坊だ、スーリヤ。起きなさい」



スパンっとハリセンで思い切り頭を叩かれた。

えっ、ジュリオそんなことすんの!?


目をぱちくりと瞬き3回、見開かれた黄金色の瞳に私を捉えると、彼は脱兎のごとく逃げ出した。



「え、えぇ…!?」



「大丈夫よ、女の子と会うの久々すぎて恥ずかしいだけでしょ」



「あんな格好見られたらねぇ、百年の恋も冷めるっしょ?」



…確かに、ゲームでは騎士という言葉が最も似合うくらい完璧で、それにときめくファンは多かった。

けど、私は、今のかわいいと思ったけどな。







「見苦しいとこ見せちゃったな…」



「いえ、気にしてませんから!!」



戻ってきたスーリヤは、スチルや立ち絵でよく見るキラキラした姿をしていた。

うん、しっくりくる。



「ああああああああぁぁぁ今日だったんだよなぁごめんなぁ幻滅したよなぁ!!!」



「だから大丈夫ですって!むしろちょっとときめきました!!」



え、と顔を上げたスーリヤ、何故かこちらを見る皆様の目はこぼれ落ちそうなくらい開いてて。



「と、ときめき…?」



「えっ、えぇ、ギャップというか…完璧な人の抜けた姿ってなんか特別感あっていいと思いますよ!」



なんのフォローだこれ…!一般論だと思うけど、めっちゃ恥ずかしい…!!

私の言葉に「…そ、そうか…」と小声で答えたスーリヤは真っ赤になっており…え、何故?リュカとフェリオはぶつぶつと何か言っていた。

女王とジュリオは頭を抱え…な、なんで!?



「あ、自己紹介が遅れました。ペルラです」



「スーリヤだ。炎を司っている。これからよろしくな!」



照れたようににかっと笑うスーリヤは、今日イチでかっこいいなと思った。

さすが攻略キャラクター!人気投票1位だ!ちょっとクラっと来てしまった!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ