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05


「会えて嬉しかったわ」



「いえ、こちらこそ」



あの後、立ち話もなんだからとお茶に誘っていただいた。

女王の作ったスコーンはとても美味しく、ジャムやクロテッドクリームと非常に合っていた。

…私も作れるようになろう。


女王のことや、今後の流れなど事務的なものから、恋バナやおしゃれの話など、女の子特有の会話を楽しんだ。

ゲームでも堂々としてて、今まで遠い存在だと思ってたけど、女王も元は普通の女の子なのだ。なんだか親近感が湧いちゃった。



「本来ならニコラスとスーリヤにも挨拶をさせたかったのですが、生憎席を外しておりまして…」



「気になさらないでください、また会うチャンスがありますから」



「そうよジュリオ。彼女は私の後継者。またすぐ会えるわ」



ベールをしたままだけど、女王がにこにこしているのが声から伝わった。

ころころと鈴を転がすような笑い声。…本当に理想の女王だ。



「表にリュカを待たせています。道中お気を付けて」



「えっ、リュカさんですか!?」



聖騎士団の隊長は、聖殿に引きこもってる団長や四聖剣と違い、実質団を率いている存在だ。とても忙しいはずなのに…また帰り道お話が出来るなんて!



「あら、とても嬉しそうね」



「はい!先程仲良くさせていただいて!」



「リュカは近いうちに四聖剣へと昇格するだろう。…仲良くしていて損は無い」



「そんなに凄いんですね、リュカさん」



隊長になってまだそんなに経ってないと聞いたのに、もうそこまで話が進んでるのね。さすがリュカだわ。



女王は最後に、と別れを惜しむように私を抱きしめ、こう言った。





「貴女は何故、女王になるには15歳にならないといけないと思う?」



…どういう意図だ。全然わからない。

でも、



「…一般的には、成人が15歳、だからでしょうか」



「…それもそうね」



「あと、力が馴染む年齢、でしたっけ」



聖なる力は強大なもの。

小さなからだでは受け止めきれず、溢れて暴走することがほとんどだったはず。

それをしっかり受け止められるのが、体も心も成熟したと見なされる15歳。

だからこそ、女王の力を上手く扱う土台が出来たと見なされる15の時に即位するのだ。

だからこそ、早期に力を発現したペルラを15まで──言い方悪いけど、放置していた。



「聖なる力は、精神面が大きく影響を与えると聞きました。だから、感情の起伏が激しい幼子では勤まらない。もし発現が早い場合、環境を変えての暴走を防ぐため、できる限り元の生活を…でしたっけ」



「…100点満点よ」



わしゃわしゃと頭を撫でられる。…女王、こんな乱雑に撫でる人なの?

鏡見なくてもわかる、絶対ボサボサだ…。



「貴女なら大丈夫ね」



7年後、会いましょう。

そう言葉を交わし、私は帰路についた。


もしかして女王は、ペルラの未来を知っていたのかもしれない。

周りの重圧に必死に応え、自分を押さえつけたあのペルラを。



────絶対、そうはならない。

私は改めてその誓いを立てた。









「ただい」



「お姉ちゃん!!!!」



とんでもなく強烈なタックルを喰らい、盛大に尻もちをついた。



「エリオット…痛い」



「はっ!…ご、ごめんなさい…」



しゅん、とした姿はまるで小型犬。

…かわいい!許す!!



「ペルラお帰り。無事だったようだね」



「ただいま、お父様。送り迎えしてくださったリュカさんがとても良くしてくださったの!」



「いえ、こちらこそ楽しい時間を過ごさせて頂きました」



「私の真珠、褒めてくださったの!お父様の作る真珠に興味があるらしいわ」



「そうなのか!娘に良くしてくださったんだ、お礼にいくつか包みましょう」



リュカは遠慮していたが、父は聖騎士団にパイプが作れるなら、とぐいぐい押し付けた。

ちらっと見たけど、あれ、最近の中でも1番の出来だと喜んでた上物じゃなかったかしら…。


リュカも中を確認した時、惚けた顔をしてたからどんだけ素晴らしい物かわかったんだと思う。

結局押し切られる形で受け取っていた。




「…………」



「どうしたの、エリオット」



無言のまま、私の腰に巻き付く手をきつくする。…またひっつき虫?

頭を撫でると、ぐりぐりと胸に押し付けてきた。

…今はまだ胸がないし、子供のじゃれあいで済まされるけど、大きくなったらセクハラだからね。後でちゃんと教えないと。



「それで、どんな話だったんだ?」



「女王について色々教えていただいたわ。あと、聖殿へ向かうのはやはり成人してからですって」



「そうか…じゃあペルラと過ごせるのもあと7年もないんだね」



てこでも剥がれないだろうエリオットごと、父は私を抱きしめた。

…そう思うと、私も寂しい。


せっかくだからとぎゅうぎゅう抱き着いていたら、ぱっとエリオットが顔を上げた。



「なんで7年後、会えなくなっちゃうの?」



「私が女王になるからよ」



「その時僕は!?」



「聖騎士団の四聖剣になれれば着いていけるけど…さすがに無理だよね」



「入団条件知ってて?16歳、尚且つ浄化能力を持つ者よ」



聖騎士団は成人すると、テスト生として仮入団が出来る。そこで聖騎士団としての知識と技術を教え込まれ、1年後の本試験を受ける。そこで受かった者だけが聖騎士団に入団し、星を受け取ることが出来る。

最初の1年はどんなに実力があろうと一つ星、その後平団員の二つ星、班長の三つ星と増えていき、四つ星になると班を束ねる隊長となる。そしてさらに五つ星が女王直属の騎士、四聖剣に。女王が選んだただ1人が付けることの許される六つ星が聖騎士団団長なのだ。


異例のスピード出世と言われているリュカですら規定通り15でテスト生、16は一つ星だったのだ。

今は22と言っていたかな?それで四聖剣になったのは24とゲームで言っていたから…10年足らずで四聖剣…恐ろしい人だわ…。


その話を聞いたエリオットはさっきまで死んでも離さない!ばりの力だった腕をゆるゆると外し、父の腕からもするりと抜け出した。

え、どうしたの。



名前を呼び掛けながら、俯いた顔を覗き込むと、決意に満ち溢れた眼差しで、こう宣言した。




「僕、聖騎士団に入る!!」




ねぇ、今の話聞いてた???




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