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03



エリオット(仮)を引き取ると決めて半年。

私は8歳、エリオットは7歳になった。…はずだ。

健康的な生活を続けていたおかげか、見違えるような美少年へと変貌した。

ま、ますますエリオットみが増してる…!!


両親も可愛がってはいたが、私は特に彼を構い倒していた。どこに行くにも、何をするにも彼を伴い、彼に体験させた。

ずっとあんな環境にいたんだもの、なら積極的に外の世界を見せてもいいじゃない!

と、力説したら若干引きつつも許可を貰えた。

そうやって可愛がってたらね、エリオットがね、たどたどしく「お姉ちゃん」って呼ぶの!!それはもう、もうかわいくて!!!!やめてエリオット!!!!これ以上私をどうする気なの!!!!


そうそう。

他の子達はある程度精神状態が安定したところで、父が面倒見ている孤児院にそれぞれ引き取られた。

ここなら安心でしょう。孤児院側も父の頼みなら、と快く迎え入れてくれた。


名前は私がほとんど名付け親となった。

きっかけはエリオット(仮)を間違えて「エリオット」と呼んでしまったことだ。心の中で呼んでいたのが、つい、ぽろっと…。

エリオットはよほど嬉しかったのか、それを聞いて以来、名前を呼ばないと返事をしてくれなかったし、他の子達はエリオットばかりずるい!とねだってきた。

その姿はとてもかわいかったけど、名前を考えるのはすごく疲れたわ…創作者はすごい…。



私はあのチューリップ以来、それらしい力の発現がなくて、本当に女王の聖なる力なのか?と思われている。私も思う。

…ただ、もうすぐのはずなのよね。力を暴走させた、あの事件が。



今日はエリオットと孤児院巡回の日。

彼らはそこまで仲良かった…というか、交流が出来なかったのだけど、あの境遇のおかげか、妙な仲間意識があるようで、気にする素振りが多かった。

そのため、今は月一で訪ねるようにしている。改善点とか、困ってることとかもこの時聞けるしね。


朝ごはんを食べたら、昨日準備しといた大量のお菓子を持って、巡りましょう!








ぞわり、背筋にひやりとした感覚が駆け抜ける。

嫌な予感がした。

せっかくエリオットと楽しい帰り道だったのに…!!




「エリオット、危ないから真っ直ぐおうちに帰ってね!」



「え、お、お姉ちゃん!?」



きっと父の職場だ。そこに魔物がいる。

暴走させるのは怖い。でも、…それ以上に、そこにいる父を失う方がもっと怖い。



「お父様!大丈夫ですか!?」



「ペルラ!?なぜここに…っ」



「なんだか嫌な予感がしまして…やはり」



口から禍々しいほどの瘴気を吐き出す。

こっちも吐き気がした。


ガシャン!と大きな音をたてた。

────お父様の真珠が!!



「お父様、下がっていてください。私がなんとかします」



「なんとか…って、ペルラも逃げなさい!聖騎士団を呼んでいるから…」



「私はいずれ女王になるのよ、こんな小物に負けない…っ!」



ぶわり、と風が起こる。

自分でも制御できてないのがわかる。

お父様の作った真珠は、とても美しい。

色も、形も、輝きも、どこの宝石より美しくて、そんな真珠を身につけられることが誇りだったし、嬉しかった。

父がどれだけ心を砕いて作ってきたかも知っている。

その丹精込めた真珠を…あんな扱いするなんて!!



「永遠に、眠りなさ───」



「お姉ちゃん!!」



左手に温かみを感じる。



「───エリオット?」



「お姉ちゃん、落ち着いて。大丈夫だから」



頭に上っていた血が、少しずつ引いていくのがわかる。

ゆっくりと深呼吸…うん。



「落ち着いたね」



「ありがとう、エリオット。…でも」



「お姉ちゃんなら、やることわかってるんじゃない?」



そうだ。浄化するには。


再度深呼吸する。

エリオットが握ってくれた手を、私も握り返す。───大丈夫。


右手を掲げ、唱える。




「この地に根付く悪しき魂よ!女王のゆりかごで安らかに眠りなさい!」



眩い光が辺りを包む。

魔物の断末魔が聞こえたが、姿と共に溶けるように消えていった。


浄化、出来た。暴走させずに。



「すごい、お姉ちゃんすごいよ!!」



「ありがとう、エリオット。貴方のおかげよ」



実際、エリオットがあの場にいなければ私は力を暴走させ、父の職場を吹き飛ばしていた。

───でも。



「おうちに帰ってね、と言ったはずよね、私」



「えっ、えっとー…ごめんなさいっ!」



エメラルドグリーンの瞳が言い訳を探していたみたいだが、見つからなかったようだ。

その姿に思わず笑みがこぼれる。

きっと私が「危ないから」と付けてしまったから着いてきたのだろう。

本当にいい子に育ったわ。鼻が高い。



駆け寄ってきた父にぎゅうぎゅうと抱きしめられ、もう二度とこんな危ないことをしないと誓わされた。




「───ペルラ嬢で、ございますか」



白銀の鎧に白の軍服。

襟元に4つの星を付けたその人は、私の姿を見ると、声を掛けてきた。



「…聖騎士団の隊長様、でしょうか」



「左様でございます」



なんだかすごい見覚えのある───あっ、思い出した!

四聖剣の1人、緑を司るリュカ様だ。

16での入団以来、とんでもないスピード出世で欠員だった緑の四聖剣に就任したと話していた記憶がある。

そうか、まだこの頃は四つ星の隊長だったのか…。

しかし、そんな人が一体何の用だ。


私たちが戸惑っていると、彼は私に騎士のように跪き、こう言い放った。




「次期女王、ペルラ様。是非聖殿にお越しいただきたく存じます」


と────

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