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01


主人公のライバル、ペルラ。

真珠の商人の娘で、本人も真珠のアクセサリーを好んで付けている。

白とピンクを基調とした主人公とは対照的に、艶やかな黒髪と紫で纏められた衣装は、真珠の輝きをより一層引き立たせていた。


7歳の頃に女王の聖なる力が目覚めた。

その頃は植物を成長させる、軽い切り傷を治す、ちょっとした肩こりが取れるなどほんのちょっとした力だったため、本人含め半信半疑だった。


だが、8歳になってしばらく。その力が聖なる力と断言される出来事が起きる。

魔物を浄化したのだ。


女王とて万能じゃない。

稀に小物ではあるが魔物が出てくることがある。

本来それは聖騎士団と呼ばれる、唯一魔物に対抗できる女王直属の団体の仕事なのだが、父の仕事場を荒らされて、聖騎士団の到着を待ちきれなかったペルラが力を暴走させて魔物を浄化したのだ。


その事実が女王に伝わり、力が安定する15歳に聖殿へと招かれることが通達された。



そこから、彼女の周りの人間が変わった。



『女王に相応しい人となれ』



そう言われ、彼女は睡眠時間と食事以外は全て稽古に充てられた。

語学、ダンス、ピアノ、ヴァイオリン、話術、乗馬───ありとあらゆる物を叩き込んだ。

いずれ女王になるからと。同い年の女の子はみな離れていった。

でも、ペルラには女王になるという希望があるから頑張れた。

頑張れば報われると。そう信じて疑わなかった。


しかし、それは打ち砕かれた。




「候補者がもう1人?」



「ああ。数日前に発現したそうだ」



聖騎士団長のジュリオが、いつもと変わらぬ無表情で伝えた。



「それで、どうするのですか」



「2人も女王になれない。どちらか1人にするだろう」



アスカの到着後、その言葉通り、女王試験が行われることとなった。


ルールは簡単。

数日前、聖殿から1番遠い──つまり、女王から1番遠い大陸『エリュシオン』に女王の力が届かなくなってしまい、魔物が大量に出現してしまった。


聖騎士団の四聖剣-所謂四天王-たちの力を借り、魔物を浄化し、二度と近寄れないよう地区の燭台に浄化の炎を灯す。

大陸の両端から始めていき、最終的に中央にある聖殿の燭台に炎を灯した方を女王にするということだ。



「そんな、魔物に襲われているのにそんな悠長でいいんですか!?」



「この試験は、お前たちをその力に慣れされる意味合いもある。それに──」



「魔物からは瘴気が溢れている。それと強大な聖なる力がぶつかれば、大陸は耐えきれなくなり、崩壊する」



「だから、両端から少しずつ慣れさせること、瘴気を減らすことにより被害を少なくするのだ」



「女王の体は瘴気に当てられやすい。耐性のある五つ星の聖騎士団員──この4人から2人選び、連れて行け」




そうして、彼女たちは魔物から大陸を返してもらうべく戦い始めた。


ペルラは戦闘には向いていたが、炎を灯す作業が難航していた。

彼女の力は水や氷など、炎とは真逆のものとなってしまい、せっかく浄化した土地が再び魔物に襲われてしまった。


一方アスカは、戦闘には向いてなかったが、炎を次々と灯していた。


その事に焦りを感じたペルラは、自分の力を使い、アスカの炎を消していく。

毒を盛ることや、怪我をさせること。考えつく限りのことをした。

それでもアスカは折れなかった。自分の頑張りを認めてくれる聖騎士団がいたから。


アスカが聖殿に炎を灯し、女王に決定した際、ペルラの心は完全に折れてしまい、強大な魔物に取り憑かれてしまう。

それを、ずっと共に居た聖騎士団との愛の力で勝ち、女王と聖騎士団長として、力尽きるまで聖殿で暮らした。



───これが、このゲームの大まかなストーリーと、ペルラの人生だ。

例外として、ペルラとの友情エンドもあるが、その場合は聖殿の地下にいた強大な魔物から親友となったアスカを守り、相打ちとなって死んでしまうのだ。


───うん、どちらにしろ死ぬのね!




ゲームについて思い出したことをノートに纏めたはいいものの、どうしようと頭を抱える。


──何故、ペルラは死ななければならないのだろう。

女王になるため、幼い頃から血の滲む、いや、流れる努力をし、それに相応しい人となった。

それを急に現れた何も知らない人に奪われてみろ。心の拠り所が無くなってしまい、一気に不安定になる。こうなるのも当たり前だ。


正直、主人公のアスカは好きではなかった。

守られるのが当たり前、全てが救えると信じきってるおめでたい頭、可愛こぶってるような態度。

守られるのが当然というような戦闘スタイルで、コマンドが『祈る(体力回復)』『浄化』『逃げる』しかなかったのもイラつく。


こう考えれば、私は転生したのがペルラでよかったわ。



…私も親に敷かれたレールの上をただ歩いていたから、彼女の気持ちは痛いほどわかる。




ならば!

同じ道を歩んで死ぬなんて馬鹿なことをしないわ!!

同じ死ぬでも親の言いなりなんて絶対無理!どうせ習い事も役に立たないのだから全て断りましょう!!

そして愛しのエリオットエンドを迎えましょう!!

それを迎えられたら死んでもいいわ!!



「待っててね、エリオット!!」



私の決意の叫びは、父にあらぬ誤解を招いてしまった。



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