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ひとつ、星が落ちた。

目の前がきらきらと瞬き、感じたことの無い力が湧いてきた。

───もしかして、これは。

そのもしかしてを裏付けるように聖殿へと招かれる。

そこにいたのは、麗しき聖騎士団と、私のライバル、そして、誰もが跪く女王だった。






「───え?」


お母様からもらったチューリップの球根を植え、早く花が咲かないかなぁと水をあげた瞬間。

ぽんっ、と子気味のいい音がして真っ赤な花を咲かせた。



この世界に魔法は存在しない。

もし、可能なら、この力は────



「ペルラ!もしかしてそれって…!!」



「さ、先程お母様に頂いた球根ですわ!何故かすぐに育って花が…」



「まぁまぁまぁ!もしかして、ペルラが女王に!?お祝いしなくては!あなたーー!!」



「お、お母様!!」




女王。

私たちの住まうこの宇宙を統べるお人。

聖なる力と呼ばれる力を持ち、それを使ってこの宇宙を守っている。

女王の力が弱まると、魔物という恐ろしい生き物が人を襲うそうだ。

…そうだ、というのは、言い伝えとしてしか残っておらず、現女王に代わってからのここ500年は魔物の存在を確認出来ていないからだ。



多分、近いうちに女王の力が尽きる。


だから、私が選ばれたのだ。



ぴりっと頭痛がした。

その瞬間、一気に映像が雪崩込む。



「やっ、…なに、これぇ…!」



それは、とある人の人生のようで。

手のひらサイズの機械の中で、私と同じ髪色、目の色をした女性がキツい言葉を吐く。


『ぽっと出の平民にはわからないわ、…女王がどれだけ大変で、どれだけ努力が必要か!!』


『私は幼い頃から女王になるべく育てられた。貴女と違ってね。だから、負けるわけにはいかないわ』


『どんな手を使ってでも、引きずり落としてやるわ──!』



『…ペルラ』



ペルラ。私の名前。

じゃあ、この人は、私の未来の姿?



『いやだ、しにたくないしにたくないしにたくない』


『私は、ずっと、女王として育てられた!この生き方以外、わからないのよ!』



『この力を授かってから、親が、家族が、周りの人が変わってしまった!』



『なんで、私に力を…?』



『もう、こんな力、いらない』



『…ペルラが、魔物に!』



『しかも、かなり強大な力だ…!女王!!』



『私の力は全てアスカへと引き継いだ。──今の女王はお前だよ、アスカ』


『わかりました。…ペルラを、いえ。魔物を浄化します。…ジュリオ様』



『あっ、ルート入ってないのに騎士団長!今度こそエリオットエンドでありますよーに…!』



機械を持つ人の手が早くなる。

容赦なく叩き込まれる連撃。…手馴れてる。

気付けば黒く覆われていた画面が明るくなっていた。



『…エリオットがいない』



嬉嬉として動かしていた指先が少しずつ速度を落とす。

ENDの文字が浮かぶと、その人───女性はため息をついてベッドに転がった。



『なんでエリオットルートがないんだろう…』



画面の中で輝く笑顔、悲しそうな瞳、それしか見たことないけど、本気で好きだった。

攻略キャラやライバル、女王の情報を教えてくれるだけの存在だったけど、私は本気で好きだったのだ。



『なんでっ、ルート作ってくれないのよぉ〜…』



パラメータを1ずつずらし、好感度も様々な数値で調整した。浄化数もライバル含め色んなパターンを試した。選択肢は当然だ。

なのに、彼は会うとこう言う。


『誰の話が聞きたいの?』


『お前の話だよばーーか…』


涙が出てくる。もう半年以上このゲームに熱を上げていた。ずっと、ずっと、エリオットのためだけに。



『あのサークルさんに聞いてからずっと探してるんだけどな…あ、やば、もうこんな時間』



寝ないと明日に響く。明日は朝早いのに。

宿題は──朝やろう。多分、終わるはず。



『それ以外の生き方をを知らない、ね…』





ああ、そうだ。


これは私だ。


前の───前世の私。




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