王都の冒険者ギルド
「冒険者ギルドへようこそ。 初めて見る顔ですよね? 依頼の申し込みですか? それとも登録?」
「登録で!」
王都に着いてすぐ、大通りにあった冒険者ギルドに入った俺達は、さっそくいくつかある受付の1つに向かい、登録するために受付にいたお姉さんに話しかけていた。
わかりましたと言ったお姉さんはカウンターの引き出しから3枚の紙を取り出し、俺達に渡す。
「1人1枚ここに必要事項を書いて下さい。代筆は必要?」
「大丈夫です」
そこで書いてくださいと言われた机に3人で並んで座り、紙を広げる。 本を読むために文字をちゃんと勉強した俺達に代筆は必要ないのだ!
ふむふむ、年齢…16、性別…男、職業……えーと、剣士? 魔法…初級をちょっと。 特技? 特技は……えーと、なんだ? あ、足が速いとかでもいいのかな。 んで、名前がアルビ村のソラ……っと。
両隣に座る2人もそんな感じの内容だったのでさっきのお姉さんに渡しに行く。
「はい。………じゃあ、スカイさんからこの水晶に手を当てて下さい」
「はい」
門番さんの所にあった水晶とは少し違う水晶にスカイが手をかざすと、夕焼けの様な優しい光が内側から溢れ出し、辺りを照らした。
おおっという声が聞こえ振り返るとギルドで仲間と話していた冒険者やギルドの中に作られている食堂のような所にいる人達から見られていた。
見定めるような視線に少しビクッとする。
お姉さんにもういいですよと言われ、スカイが手を離すと光は消えていった。
「じゃあ次はクウさん」
「……はい」
コクリと頷いたクウが水晶に触れるために前に出る。
どうやら俺のを1番上にして出したのに反対の順番になっているらしく俺が最後みたいだ。
いつものクウの無表情も珍しくワクワクとしながら水晶に触れる。すると透明だった水晶は透明感のある水色に染まり、再びおおっと声が湧いた。
スカイの光と同じくらいの明るさのその光は、3人の秘密基地にあった泉のような澄んだ色で、目を奪われていたのにクウが手を離すとすぐに消えてしまって少し寂しい。
「じゃ、最後にソラさんどうぞ」
「は、はい!」
きっとスカイとクウの結果が良かったのだろう。周囲の期待してるぞ!とでも言うような視線が痛い。本当にそういうの緊張しちゃうからやめて欲しい。
ゴクリと唾を飲み込み水晶に手を当てる。
すると2人と同じくらいの明るさのオレンジの光が溢れ出す。スカイの落ち着く夕日のような赤と違って太陽のような明るいオレンジは眩しいくらい目に刺さる。
2人と違いおおっという声が聞こえないことに若干の不安を覚えつついいですよと言われ手を離すと光は消えた。
これをどうぞとお姉さんにカードを渡される。
ちゃんと自分の名前が書かれているカードに感動しつつ書いてある内容を確認する。
名前に職業にーー得意属性、オレンジ? 属性オレンジってなんだ?
「それがあなた達の冒険者カードです。スカイさんは炎、クウさんは氷の魔法が扱いやすい魔力だということは分かりましたが、ソラさんの魔力は分かりませんでした。ただ、まくまで有利属性だというだけで他の属性も使えることを覚えておいてください。ソラさんの不明、という事は未知ということ。むしろわかっている属性より強くなれる可能性もあるので頑張って下さいね」
「はい!」
「それでは冒険者ギルドの説明をしますね」
ギルドに所属している冒険者は、強さや評判、ギルドへの貢献度によってランク分けされる。
ランクはS~Gまでの8段階あり、S.A.Bを上級、C.D.Eを中級、F.Gを下級と呼んでいる。
SSランクというランクを与えられている人もいるがその人達は最早人外の域に達しているのでならないでいい……というかならないで欲しいと言われた。何をやったんだSSランク冒険者。
基本的にはギルドで受けることが出来る依頼をこなしていくことでランクを上げることができ、FからE、CからBに上がるためには試験が必要。ただしBからAといった上級は毎回試験がある。
依頼は難易度によってランクが決まっていて1つ上のランクのものまで受けることが出来る。失敗すると罰金があるので注意。
本や村の大人に聞いていた内容と同じだな。
「ーー以上です。さっそく依頼を受けますか?」
「いや、もう夕方なので今日は宿を探してまた明日の朝に受けに来ます」
「なら、すぐ近くにある『白狼の宿』をおすすめします。安いので駆け出しにピッタリです」
「ありがとうございます、お姉さん!」
ギルドの登録だけでなく宿まで教えてくれたお姉さんにお礼を言うとなぜかそっぽを向かれてしまう。
な、何か変なことやった!?父さんに女性に失礼な事だけはするなって言われてたのに!
「……私の名前はリリナです。どうぞ、リリナと呼んでください」
「? ああ、なるほど! 俺がソラでこっちがスカイとクウです。よろしくお願いします、リリナさん!」
「……っ、よ、よろしく、ソラ君」
リリナさんにもう一度お礼を言った後、さっそく教えてくれた宿に言ってみようと入口に向かうとなぜか何人もの冒険者に取り囲まれた。
冒険者と言っても色々な格好をしていて特に鎧の大男とかに囲まれるとその、怖い。
すっと前に出てくれたクウをいい事にその背に隠れながら声をかける。クウは前に出れても声を掛けられないからな。こっちは俺の役目だ。スカイは……睨んでる。めっちゃ周りの人睨んでる。怖いから無視しとこう。
「あ、あの……なんでしょうか?」
「君……いや、君達さ」
ぐいっと近寄られ後ずさってしまう。
「俺達のパーティに入らねぇか?」
「へっ?」
予想外の言葉に変な声が出ちゃったじゃないか。
「いやいや、君達!俺の『龍の牙』に入いってくれよ!な?」
「あ?未来ある有望な若者は俺達『鉄のーー」
「うるせぇ!俺が1番に声かけられたんだろうが!」
「あ、あのぅ……?」
前にいるクウも隣で周りにガン飛ばしていたスカイもどうしてこうなったって感じの顔をしている。
そもそも俺達は冒険者になって3人で旅をしたいだけだからパーティに入るとかは考えてなかったんだけどな。
というか!こんな激しい(?)勧誘が来るなんて思ってなかった。さっきの水晶の結果が悪い……いや、良かったからなのかな。さっきから優秀な魔道士とか未知の力とか言ってるし。
ああ、どんどんスカイの怒りメーターが溜まってく。なんとかしないと。
ソラ君はパーフェクトオブ勘違いなので周りの感情をよく理解してません。だけどいい方向に進んでいきます。主人公なので。
ちなみに……
~理解度~
スカイ:完璧
ソラ:パーフェクト・オブ・勘違い
クウ:何かズレてる
って感じです。
ここまで読んでくれてありがとうございます。また読んでくれると嬉しいです!




