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晴天の旅団  作者: 東
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第1話 王都

 

「よし、忘れ物は無さそうだな」


  この日の為に前から用意していた荷物を再確認し、よいしょという声と共に背負う。


「本当に行くんだね、ソラ」

「何年も前からクウが成人したら3人で旅に出るって言ってただろ?」

「大きな怪我をするんじゃないよ」

「うん」

「危険な事に首を突っ込むんじゃないよ」

「わかってる」

「……いつかは帰ってくるんだよ」

「……うん。行ってきます。母さん」

「楽しんできな」


  泣きそうな顔をしている母さんをギュッと抱きしめた後、もう一度行ってきますと言い、16年間暮らした家を出る。少しだけ滲んだ視界を上に向けると今までに見たことがないくらい綺麗な青空が広がっていた。


  待ち合わせ場所である村の入口には既に2人が待っていたので駆け足で近寄る。


  俺の2つ年上で、子供の頃より少しだけ濃くなったクリーム色の髪を持つ男がスカイ。

  1つ年下でこの前誕生日を迎え、成人したばっかの黒髪の男がクウ。

  2人共俺の幼なじみで、同じ夢を持つ仲間だ。


「ごめん、待った?」

「……そんなに、待ってない」

「まだ時間前だし大丈夫だよ」


  口下手で、あまり表情に出ないクウも今日は嬉しそうだ。ソワソワとしながら腰にある剣を触ったりしている。 しれっとしているスカイもめちゃめちゃ楽しそうにしているな。16年も一緒にいる俺の目は誤魔化せんぞ!

  にこーっとスカイに分かってるぞと笑いかけるとそっぽを向かれてしまう。2人共楽しそうでなによりだ。


「俺達が、早すぎただけ」

「そーなのか?なら良かった。 ……それじゃ、行こうか。」


  入口ーーとは言っても道に繋がっている所に門番のおっちゃんが立っているだけなのだが。を通り、村の外に出る。

  何度も通った事のある道が、やけに凄いものに感じて口がにやけてしまう。


「それじゃあ王都に向かって、しゅっぱーつ!!」


  おーという2人の声を聞き、俺達3人は最初の目的地である王都へと歩き出した。




 -----------------------------



  見上げてもてっぺんが見えないくらい高い、街を守るための壁。

  薔薇がモチーフだという国を示している巨大なエンブレムが描かれているその壁には、中に入る為の人の列が続いていた。

  ここが王都、アドゥニス王国の首都…!



「……って、なんだか拍子抜けする程あっさり着いたなぁ」

「まあ、王様が作ってくれた国道に着いてからは楽だったね」


  村が出てから2日くらいは、アルビ村の村人たちが通ってきた後があるくらいだったのだが、王都と観光都市ファニュを繋ぐ大きな道に出てからはスカイの言う通り特に苦労もなくここまで辿り着けたのだ。


  途中、他の冒険者の格好をした人達が俺達と同じくテントで野宿しながら王都を目指していたり、荷台がぱんぱんになっている馬車なんかも見かけたから相当な方向音痴でさえなければ誰でも迷うことはなかっただろう。


「一般向けの列はあれだね。早く並ぼう」

「うん」


  中へと続く列は3つあり、貴族様用、商人用、一般人用のとなっていて、冒険者も一般人用のに並んでいるようだった。

  数十人の人が並んでいて、時間がかかりそうだと思ったが割とスムーズに進んでいく。


「意外に、速い」

「多分冒険者が多いからじゃないかな」

「? ………!」


  俺と同じ疑問を持ったらしいクウも首を傾げていたがスカイのヒントで何か気づいたらしい。前を見ると確かに冒険者が多いがそれでなんで速くなるのか全くわからん。


「どーゆうこと?」

「きっと、冒険者は何回も通ってるから門番の人が覚えてくれてる、んじゃないかな」

「おお! なるほど! 常連ってやつだな!」

「いや違うから」


  へっ?とスカイを見ると苦笑いされる。


「冒険者には冒険者カードがあるでしょ?そのカードが時間短縮に役立ってるの」

「「へぇ~」」

「へぇ~って君たちさ……」



  列がだんだん短くなり、門番さんの手元が見えるようになってようやく分かった。

  冒険者は冒険者ギルドで作ることが出来る冒険者カードと呼ばれるものを門番さんに渡し、それを門番さんが水晶のような物にかざすだけで通れるのだが、一般人は身分証などを渡していて、それの確認に時間がかかるのだ。

  もちろんまだ冒険者でない俺達は身分証として村の住民票を持ってきている。


「次の方ー」


  俺達の番になり、スカイが俺達3人分の住民票を渡すとそれに素早く目を通した門番さんがこっちを見てニカッと笑う。

  俺達の父さんくらいの門番さんは住民票をスカイに返してくれた。


「18、16、15歳か。 若いねーおじさん羨ましい。 兄弟かい?」

「幼なじみです」

「そうかい。 王都には何しに来たの? 観光?」

「俺達は王都で冒険者になる為に来たんだ!」

「そうかそうか。 よし、通っていいぞー。 兄貴達の言うことちゃんと聞いて頑張るんだぞ、坊主!」

「……ん?」


  ぽんぽん、と優しく頭を撫でられ、何も言えずにいると背中を押されて王都に入ってしまう。そのまま次に入ってくる人達の邪魔にならないように道の端によると、スカイが限界を迎えた。


「あは、あはははははは!」

「笑うなスカイ!」

「あの、その………ごめん?」

「クウも謝るなっ!!泣くぞ!?」


  村にいた時は気にしたこともなかった。

  改めて自分の見てくれを確認してみる。


  冒険者になるために小さい頃から走り込みや剣の素振りなどを2人と同じくらいしたにも関わらず柔らかそうな腕。

  母さんの遺伝子をめいいっぱい引き継いだような低い身長。

  服で隠れてはいるがいくら腹筋を初めとした筋トレをしても割れてくれなかったお腹。

  そういえば村の女の子に「子犬見たいで可愛い」とか言われた記憶もある。子犬ってなんだ子犬って!


  ……対して2人は年下のクウまで俺より頭1つ分くらい身長は高いしぱっと見て分かるくらいの筋肉もついている。

  それに3人の代表のように3人分の住民票を渡していたスカイは俺から見ても成人したばっかりの15歳には見えないし、1歩引いて黙って見てたクウも15歳には、見えなかった、んだろう。

  それはつまり俺が3人の中で1番年下に見えるってわけで。


「くっ……くぅぅう! さ、さっさとギルド行くぞ!」

「はいはい分かりましたよ、坊主!」

「スカイ後で殴る!」


  予想外の事もあったが俺達は無事王都に辿り着き、入ることが出来たのだった。



お察しだとは思いますが、主人公3人は『空』です。


ここまで読んでくれてありがとうございました。また読んでくれると嬉しいです。

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