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もしも本当に異世界転移したのなら  作者: ヴァン
第一章
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6

短めです。



「────っていう夢を見てさ、もーマジで死ぬかと思った」



 台所で夜ご飯を作る女性にべったりと引っ付きながら、その夢の出来事を語った。



「やっぱさ、同じ言葉で話せるのってありがたいよね。外国にいっても英語はある程度通じるけど、あの世界は何喋ってるかわかんないんだもん」

「やっぱりアンタの脳はファンダジーでできてるんだねぇ」

「またそれ?お母さんはいっつも同じこと言うんだから!否定できないけど、馬鹿にされてる気がするからやめてよね!」



 はいはいと笑いながら言う母。そう言いつつ直さないことは家族皆が知る事実だ。

 私は母に言い聞かすのを諦めてソファーに横になった。いい感じに当たるクーラーの冷気が気持ちいい。瞼が重くなってきた。



「ごめん、ちょっと寝るわ」

「寝るならお布団いきなさいよ。つかいけ」



 母の小言すら子守唄に聞こえる私は相当疲れていたのだろう。


 バイトに変な遭遇の夢。

 いつも以上に体力を消耗したのは仕方の無いこと。



 私は欠伸を一つすると安心して目を閉じた。


 だってここは自分の家だから。


 体から徐々に力が抜ける。











「夢じゃねぇよ」




 つり上がった口


 濁った目


 掻き上げられたオールバックヘアー


 傷で無くなった左眉


 手の甲の三本傷


 這い回る右手











「うあああぁぁぁぁああぁぁあああ」




 夢、現実、幻、嘘、事実



 わからない




 わからないわからないわからないわからない





 ハッキリしていることは一つだけ。




 私はまだ死んでいないということ。






 理解した瞬間目が覚めた。そして横になっていた体を起こし、直ぐさま立ち上がる。そして走り出した。こんな力があったのかと自分でもびっくりするぐらいの速さで体が動いた。目に止まった窓に向かって何も考えず思いっきりジャンプ。




バリンッ



ドサ




 三秒も経たない内に衝撃が体を襲う。

 早すぎる。

 もしやと顔をあげると、そこにあったのは自分の身長よりも低い位置にあるだろう割れた窓。



 一階かよ。



 私はすぐに立ち上がり他に何か無いか探す。



 この命を絶つ為の道具を。



 右には適度に育った木。左には農具置きの小屋のようなものが建っている。そして正面には大きな池。



 溺れるのは苦しすぎる気がするので最後の手段にしよう。



 というわけで、最初は右から行ってみることにしたのだが、何故かな、全然進まない。



 腕は振りかぶっている、よし。

 顔も右に向いてる、よし。

 足も動いている、よし。



 ・・・ん?



 腰に回っているこの手は何だ?



 ゾワリと嫌な予感が背中を伝う。






「いやああぁぁぁああああ」



 もてる力全てを使って暴れた。


 誰の手?

 決まってるでしょアイツしかいない。

 もう見つかったの?

 どうして?

 あの大木は私を殺してくれなかったんだ。

 ならせめて自分の手で死にたい。


 死ぬよりも

 アイツに

 アイツが




 怖い




 死を恐れなくなった私は襲われたあの時のようにただ恐怖に支配されることはなくなった。アイツの顔を見ていないせいなのかもしれないが、まだ動ける。


 しかしながら、そんな私の抵抗も虚しく、腰にあった手はそこから更に成長して腕まで見え、私の体を捕らえた。何とか解こうとするが何してんの?ってぐらい何の影響もない腕を見て意図も簡単に逃走心を折られてしまった。



 きっと腕は窓から伸びていたのだろう、私の体は引き摺られるように窓の内側へと戻された。

 そういえば窓があるって事はどこかの建物なのだろうか。木も池もあり、更には小屋まであるということは何か飼育とか農業をしていると思われる。窓枠も今見れば立派な装飾が施されていた。



 裕福なところに売られたのかな。



 まぁ、どっちでもいいか。

 私には関係ない。




 やがて引き摺る体をどこかに下ろされた。ふわんと弾む身体。どうやらソファーに下ろされたらしい。真っ白い大きなソファーが私の身体に一部潰されていた。

 やはりかなりの金持ちの家だ。


 体からいつの間にか手が離れていると気づいたときには前に落ちた影。



 あぁ、愈々か。



 俯いていた顔をゆっくりと上げた。








「────え?」





 どうして




 どうしてそんな悲しそうな顔をしているの?




 私が見たのは、眉間に皺を寄せ、今にも泣き出しそうな顔をしている金髪の男。潤んだエメラルドグリーンの瞳は見窄らしい私を映していた。



 え?え?え?

 何、そうゆうプレイ?

 演じろって言われても多分言葉理解できないんだけど。



 混乱する私をほったまま状況は更に悪化する。男が私を抱き締めたのだ。



「──。────」



 いや、だから分からないって。

 思いが通じたのか一層強くなる力。これは抱擁というより締め付けだ。というより、力に頼ればいいってもんじゃないんですけど!


 首に見事に決まった技を掛けられている私の息は残り少ない。



「───!─────。────」



 いや、死ぬから。



 死にたいとは思っていたけど、まさか窒息死を選ばれるとは予想すらしていなかった。悪趣味で拷問とかそういうのはある程度は想像していたけど、まさか一番メジャーなものでくるとは・・・。



 でもまぁ、死ねるなら何でもいいや。



 最後の息を吐くと同時に力を抜いた。





「──!!───!!!」



 ぐわんぐわんと揺れる視界。天井と思わしきものが右にも左にも回っていた。



「───!!!!」



 死にかけだと思われて、目を覚まさそうとしているのだろうか。


 いや、覚めてますけど。寧ろ肩を掴んで思い切り揺らされているせいでもう一度夢に飛びそうですけど。


 このままじゃいつまで経っても終わらないと思い、なんとか相手の腕を渾身の力を込めて掴んだ。男はハッとしたように動きを止め顔を近づけてきた。ぐらぐらする頭を支えながらその元凶を見る。



「ごめんなさい。言葉わからない」


「────?」



 それに私は頭を振った。



「わからないんです」



「言葉も、ここが何処かも、あなたが誰なのかも、



 何もわからないんです」



 どうせ通じないけど、無意識に自分の口から零れていた。


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