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もしも本当に異世界転移したのなら  作者: ヴァン
第一章
4/30

4


 これって本当に現実?



 だってさ、あれ何?





 何で





 何を持って走ってんの?





ヒュッ



ガランガランッ





 風を切る音と共に右頬が熱をもつ。




 何




 顎にかけて()()()()()()()伝う




 そして感じる痛み。





 なになになになになに





 後ろから強く揺さぶられたと思ったらさっきまで怯えていた少女が乗っていた。


 必死な形相で私の背中を強く叩く。

 痛いとか何で勝手に後ろに乗ってんのとかそんな感情一切なくて、とにかくここを離れるので精一杯だった。



 私達とこちらに近付いてくるモノの間には一軒家五軒分ぐらいは離れていた。尚且つ夜なんだから暗いはずだよね。でも向こうの姿はハッキリと見えてしまった。

 近付いてくるモノの周りには、光の玉らしき物が何個かふよふよ浮かび、露わになる男達の姿。それはその手に握られた鋭利な刃物–––剣と思われるモノまで鮮明に浮き彫りにした。



 単純明快


 意味不明



 雄たけびを上げながら迫ってくる男達。





 時たま風を切るような音がして



 光の玉が顔を(かす)めて



 背中は殴られ続けて



 それでも必死で漕ぎ続けた。




 左右には密林が広がり、足場の悪い砂利道を猛スピードで駆け抜ける。顔に枝先や蜘蛛の巣が引っ掛かろうとも関係ない。


 そんなもの見えていない。



 もう三十分は漕ぎ続けただろうか。

 わからない。

 体感と実際が違っている気がしなくもない。

 わからない。



「!!──!───!!」



 大人しくなっていたはずが、また私の背中を叩き出す。さっきよりは幾分かマシだがなかなかの強さだった。顔の横から腕が伸び、その手はまたどこかを指していた。



 そのまま進み、やがて開けた場所で後ろに乗っていた人物を降ろした。というより勝手に地面に足をつけて止めて自ら飛び降りただけ。



 何処よここ



 立派とはとても言えない木造建築物がある程度の間隔を開けて自由に立ち並び、畑や家畜などの小屋が置かれていた。



 こんな場所近くにあったっけ?



 家の近くにある藁っぽいのとか中央にあるキャンプファイヤーみたいなのとか、どこの村。てか私の帰り道にそんなのないし。見たこともないし。



 ない。



 じゃあここは何処?





「───っ!!──!!!」

「─────!!」




 ふと目線を上げると視界に移る数十人の村人。恐らくここの村人だったのだろう、両親と思わしき方々と抱擁を交わしていた。そしてその周りを村人たちが囲い皆で喜び合っていた図が完成していた。



 そう、していた。






「ねぇ、入れて」



 顔を真っ青にしながら退くその腕を掴んで自分を指差し



「私も一緒に」



次は少女の家と思わしきドアを指す。



「入れて下さい」



 通じないかもしれないけど言葉は敬語にした。お願いする立場だし何よりもここに残りたくない。




 背後から少しずつ大きくなる、嘲るような笑い声





 そう、アイツ等が追ってきたのだから。





 そこからの時間はスロー再生のように長く、ゆっくりと感じられた。

 掴んでいた腕を振りきられ胸を思い切り押された。地面に尻餅をついた感触と少女を見たのが同じタイミング。


 その時の少女の事は一生忘れないだろう。




 ドアノブにかけられた震える手



 滑り込むようにして家に入った体



 月夜に反射して輝く金に近い髪



 そして怯えの奥にどこかほっとした表情が覗く淡いブラウンの瞳



 私の願いも空しくドアは閉じられた。








「────てよ」




「──けてよ」




「開けてよ。開けてよ!あけてあけて!!」




 私は無我夢中でドアを叩いた。


 痛みなんて感じない。ぞわぞわとくる恐怖しか感じられない。



ドンドンドンッ



「開けて下さい!一緒に入れて下さい!お願いします!」



ドンドンドンドン



「お願いします、何でもしますからっ。中に入れて下さい!」



ドンドンドンドンッ



「開けて下さい!あけて・・・あけてよ!あけてあけてあけてあけ」



バンッ



 大きい音と共に願い続けたドアが開いた。急いで中に入ろうと足を踏み出したら何故かまた尻餅をついていた。じわじわと感じる鼻の痛みに頭がぐらぐらする。

 目の前には少女の父と思わしき人物が浅い呼吸を繰り返し、こちらをものすごい形相で睨んでいた。足は軽くあがったままで手には包丁のような物が握られていた。




 あぁ、蹴られたんだ




 汚いものでも見るかのように冷たく、怯えて、それでいてさっきの少女と同じどこか安堵した表情。

 これ以上近づくなと、警戒のために振るわれた刃物を私の肌は難なく受け入れ、血を飛ばした。



 そして私の視界はブラックアウトした。












 目が覚めた私の目に映ったものは何も無い。というより、暗すぎて判別できないと言った方がいいのだろうか。背中付近を触るとなんとなく木の感触がしたので森の中、若しくはそれに近い何かだとは思う。


 しばらくじっとしていると慣れてきた目はやはり森を捉えた。周りに生い茂る木や草などの植物たち。見晴らしは全然よくない。私は何故か横に置いてあった自分の鞄の中からペットボトルを取り出し、水を二口飲んだ。


 そして右手を振りかぶって自分の頬にフルスイング。少し反響したが音はすぐに納まった。





「・・・いたい」



「・・・・・・いたいよ」



「んで・・・・何で痛いんだよ!」


「意味分かんない!何で痛いの?鼻も痛いし体の節々だって痛い。おまけに肌は切れた後かわかんないけど血が固まってるし、頭痛いし森の中だし、荷物とかバイト帰りのままだし」


「うざい女いたしさ。勝手に自転車の後ろ乗るしキーキー叫ぶし叩いてくるしさ、なんなのアレ?クソ自己中な女やん。住んでるとこまで運ばしてハイ、サヨナラ、ってなめとん?ふざけんなよマジで。ありがとうもないんかい。言葉通じなくても身振り手振りで感謝表せやボケが。仕舞いには親が刃物振り回すとか終わってる。完全に頭イッテるしほんまありえへん。恩を仇で返すとはこのことかよ。あの世に逝って地獄に落ちろクソどもがあああああ」





「・・・家に帰りたい。ここ何処?何でこんな目にあわなきゃいけないの?」



「家に帰してください」









 神様、私は何か悪い事をしましたか?


主人公の性格、たまに出る関西弁について、序章に追加で記載・補足しています。

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