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もしも本当に異世界転移したのなら  作者: ヴァン
第一章
21/30

オリジナルキャラ

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

お気軽に楽しんでくださいますと幸いです!


 な、何がどうなってるの!?



 私が驚くと水面に映る"ケイ"も驚く。まさか妄想の中の人物になるなんて思ってもいなかった。名は体を表すってさっき言ったけど、表すどころじゃないわこれ。


 私は自分の顔と思わしきものをペタペタと触る。肌触りもニキビが出来やすい少しブツブツしたのじゃなくて、ツルツルでしっとり滑らか。化粧品のCMなんて余裕で出られる、なんて考えてしまう程混乱していた。


 頭の中で可愛いケイと格好いい男と(オリジナルキャラだったりアニメのキャラ)いちゃいちゃさせて物語を作っていくことが好きだった。整った顔になるのは誰しも望むことだけど、これは求めていない。



 私は見ていたい側なんだよ!



 そう心で葛藤していると、少し引っ掛かるものがあった。



 


 ん?ちょっと待って。



 本当に私のお気に入りの妄想オリジナルキャラ、略してオリキャラの"ケイ"になっていたとしたら、





 まさか––––––





 私は猛スピードでシャツのボタンを外した。そこから覗くのは真っ白で平らな肌とピンクの粒が二つ。



 いやいやいやいや。


 これだけじゃわかんないし。



 ただ単に胸が小さくなっただけかもしれない。自分に言い聞かせてズボンのボタンを外してチャックを下ろし、少しだけズボンを下げてパンツの中身を見た。そして元の位置へ戻す。




 ・・・・。




 そこにあったのはツルツルスベスベの小さなイチモツただ一つ。





 ・・・・・・・・。






「マジかあぁぁ!?」





 それ以外の言葉が出てこない。

 私は呆然とケイ、改め自分の体を眺めた。



 前の自分よりも女の子らしい括れにピンクの突起。白い滑らかな雪肌とのコントラストが余計に色気を醸し出す。



「いや・・・・いやいやいやいや、コレはないってマジで」



 誰にアピールする訳でもないのに、顔の前で手を左右に勢いよく動かし否定する。振りくる手すら美しく、愕然としながら自分の手を見続けるという不思議な図が出来上がっていた。

 まるで自分の体じゃないように思えて、でもそれは自分で、本当にわけが分からなくなってしまった。



「どうした?気分でも悪いのか?」



 声の方へ向くと少し眉を下げたレフと目が合う。私は考える間もなくレフにすがり付いた。



「レフ、どうしよう!私男の子になった!」



 シャツを左右に開いて証拠を見せる。



「胸もないし、アソコには男の子特有のアレがある。見た目もそうだけど声も変わっちゃったよ!ねぇ、いつから変わったの?」

「っ!ケイがその力を受け入れた時からだ」

「ということは、ここに入ってから契約する前だよね?あーどうしよう。全然わかんないし男の体って」



 私はレフの首に抱き付き、首元に顔を寄せた。



「トイレの仕方もわかんない!いや、想像はつくんだけど見たこともやったこともないし・・・どうしよう。うぅ、れふぅー」



 身体的・精神的に蝕んでいく"呪い"の正体がまさかの性転換。予想外過ぎて言葉も出てこない。


 力を使った後、目覚めた時に髪と目が灰色になっていたからてっきりソレだと思ったんだけど、違うならあの変化は一体何の為にあったのだろうか。頭の隅っこに残っている冷静な自分が、なんとか正確に状況を判断をしようとする。が、心は正直で、ぶっちゃけ泣く一歩手前だった。



「我にその気持ちは理解出来んが、出来るだけ協力しよう。だから取り敢えず服を着ろ!」

「服!そう、服じゃないけど変わってるの!胸に付ける下着がないの!もしかしてこの世界にないものとか、前の世界での人生を対価として払ったからなくなったとか?」



 私は思い立って持ってきていたリュックの中身を確認した。けれども無くなっているものは一つもない。



 何で下着だけ?



 もう一度下を覗く。見えるのは何故か女物の下着。



 え?え?何で!?



「レフ!何で胸の下着は無くなったのに下は女物のままなのっ?これじゃあただの変態だよ!」



 へなへなと地面に座り込む。

 徐々に滲む視界。

 傍にいるレフをすがるように見上げた。



「ぐすっ、れふぅ」



 ポロポロと落ちる涙は止まらない。あり得ない出来事に頭がついていかず混乱しているからか、言葉使いや仕草、態度まで"ケイ"になっていっている気がする。


 混乱した気持ちに拭う気力もなくて、座り込んだままレフに助けを求めた。すると、一番最初に出会った時のように、暖かいものが頬から目に触れた。レフの長い舌が涙を拭ってくれて、それにまたツンッと鼻が痛む。


 ふと影が落ちて見上げると整った狼の顔が私を覗き込んでいた。狼に整ったと使うのは違和感があるかもしれないけど、レフは本当に綺麗で格好いい。

 金の瞳に捕らえられぽやんっと眺めているとまた赤い舌が伸びて私を舐めた。



「ゆっくり馴染んでいけばよい。焦らずとも、これからは我が側にいる」



 レフのふわふわな体に包まれ、顔を舐める行為が哺乳類によくある親が子をお世話する行動によく似ている気がする。気恥ずかしいけれど心配してくれることが凄く嬉しくて、レフの体に顔を埋めてにやける顔を隠した。


 

 今だけは嫌な事もこれからのことも忘れて、この心地良い温もりに身を任せてもいいよね?
















「すぅーはぁーすぅーはぁー」



 大袈裟なほどたっぷりと深呼吸。ラジオ体操と同様に腕を大きく動かす度に、視界に映る灰色の髪が緩やかに揺れる。深呼吸のタイミングに合わせて動く小さな膨らみが微かに女性である事を主張していた。


 数回息を整えた後、閉じられていた瞳が徐々に開いていく。髪と同色の瞳は力強く、迷いは一切見られない。

 左手を胸の辺りまで上げ、掌を上に向ける。そして大きく息を吸い込んだ。




「【魔球(マジックボール)】」




 体の中を流れる血液と似た感覚が一斉に左手へと収束される。直ぐ様掌に現れた白い小さな球は綺麗とは程遠く、歪な形をしていた。そんな球が長いこと形を保つなんてことは出来ず、周りの空気を吸い込み始めた。


 吸い込む力が強すぎて周囲に風が吹き荒れる。

 使用する魔力の量を減らそうと意識をするが如何せん、所持魔力量が莫大すぎた。しかも突如手に入れた力なので体に馴染みがある訳でもなく、あっという間に暴走開始。ものの数秒でビー玉から巨大くす玉サイズへと変化を遂げた。


 これ以上は維持できないと判断し、左手を振りかぶって巨大くす玉を頭上へ投げる。投げた勢いの中で恐らくそこが頂点だろうという絶妙なタイミングでくす玉が破裂。収束していた力を今度は吐き出した為、勢いよく風が外側へ押し出されるのが視認出来た。

 咄嗟に腕で顔を覆い、目を瞑る。だが、いつまで経っても衝撃が襲ってこない。




「もう大丈夫だ」




 低いけれども優しさを含んだ声色に何が起きたのか瞬時に把握した。



「守ってくれてありがとう、レフ」



 顔を守っていた腕を下ろして周りの様子を見ると、頭上に投げた魔球モドキとの間に立ちはだかる大きな体。ふわふわな毛並みは一つとして乱れていない。暖かな瞳の中に、体に傷が付いていないか注意深く確認されているのが分かる。



「ねぇ、やっぱり今はあっち?」

「あぁ。美しく可愛らしいぞ。まぁケイはどちらでも可愛いのだがな」



 親馬鹿ならぬ身内贔屓発言は置いといて、レフの言葉に小さな溜め息を一つ。徐に自分の髪の毛を掴んで目線上に持ってくると輝く銀髪が映り込む。一本一本が細く、絹のように滑らかで触り心地が良い。



「確定だね。魔法を使うと"僕"になってしまうのは」



 先程まで自分の体の一部だった灰色の面影や胸の膨らみなんてない。今の私は"僕"なのだ。





 力を手に入れた次の日、眼が覚めると女になっていた。いや、"女に戻っていた"の方が正しい言い方か。


 何故戻ったのか原因が分からなかったが、特に不便もないので深く考えなかった。取り敢えず手に入れた力を使えるようになる為に魔力・魔法に慣れる必要があり、レフの監督の元練習を開始した。けれども、今まで体になかったモノが急に馴染んだり、手足のように無意識に動かすなんて出来る筈もなく、瞬く間に暴発。体内の魔力が外へ一気に溢れかえり、即座にレフが同等の魔力をぶつけて押さえ込んでくれので大事には至らなかった。


 そう、これは先程の魔球作成の練習と全く同様のことを行った。結果は同じく暴発。ここまで言うと何が起きたのか予想できるだろう。



 魔法を使用すると"私"から"僕"へ。

 時間が経つと"僕"から"私"へ戻る。



 何度か練習と兼ねて実験した結果、どうやら使用する魔力量によって"僕"に変わる時間が変化するみたいだ。体内で魔力を循環させるだけなら特に変化はないが、体内の魔力を少しでも外側へ放出すると変化が現れるらしい。


 現在、僕の体内には心臓の横に大人の拳分ぐらいの玉がある。それがこの神殿で手に入れた力らしく、魔力を使ったり魔法を行使する度に徐々に一体化していっているとのこと。まとめると、力の取り込みが進むと同時に"僕"へと変化していく時間が伸びるという事だ。



「うーん、あとどれぐらいこの状態が続くんだろう?」

「この後も続けて練習をするのか?今回だけなら一時間ぐらいだろう」



 変化する実験はまだ数日しかしておらず、戻るタイミングが掴めない。


 例えば同じ魔力量を初日と現在で使用したと仮定する。すると、初日は変化時間が30分ですんだのが現在は一時間も変化したままだ。日に日に変わっていく時間を完璧に予想する事は不可能。変化する前後は前兆がある為、いつもはそれで判断している。

 ただ、変化までの猶予はバラバラなので今後外に出て魔法を行使する際は気をつけなければならない。



 いきなり力を手に入れたり性転換したり魔法が上手く使えなかったりと、様々な事が起こりすぎて頭がパンクどころか破裂しかけている。けれども、少しでも早く体内に宿る魔力を取り込んで使えるようにならなければ地球に帰るなんて夢のまた夢。


 だったらどんどん練習したらいいじゃないか、とお思いのそこの貴方。気持ちは分かります。自覚有りですからね。では何故そこまで突き詰めてしないのか。



 理由は簡単、痛いから!!



 実は変化する度に結構な頻度で痛みに襲われています。これも魔力の使用量や力の取り込み具合によって変化し、酷い時には声も出ないぐらいの激痛が三分程続きました。


 レフによると、魔力が使用できる体に作り変えていっているらしい。以前の体だと魔力なんて何ソレ?状態だったから、急激に魔力を使うと体が拒否反応を起こすので、一定の段階ごとに作り変えているとのこと。


 ありがたいのかどうなのか、妄想キャラクターケイくんを忠実に再現しているこの体、実際の私よりも高く、変化時にはなんと伸びるんですよね、身長。一五五センチから一六五センチへ、十センチも伸びるんですよ。そりゃ痛くなるわって話。ちなみに成長痛よりも痛いです。



 ゆっくり丁寧に深呼吸。

 目を閉じで精神統一。



 大丈夫、できる、大丈夫–––––––



 自分に繰り返し言い聞かせる。周囲の音は聞こえなくなり、感じるものは心臓の鼓動のみ。掌サイズの魔球が出来上がっている光景を強くイメージし、頭に刻み込む。


 短く二回息を吐き出し、深く息を吸い込んだ。




「【魔球】!」




 ぐんぐん集まる魔力に触発されて、再度風までも集まり始めた。



「あ、ヤバッ–––––」



 即座に暴発。今度は顔を覆う暇すらなく怒涛の如く押し寄せる風に息が出来ない。

 

 右から左へ大きく風が動いたと感じた途端、暴風と言っても過言ではない風がピタリと止んだ。いつもならここでお礼の一つでも言葉にするのだけれども、どうやら無理みたい。左手に出現していた魔球モドキは無くなったが、魔力の流れは止まる気配がなく、未だに体内を素早く循環している。


 活発な活動に耐えきれない体を包む青いオーラ。このオーラが体内から放出された魔力だと教えてもらったのはつい先日、レフに魔法の見本を見せてもらった際の素朴な質問で初めて知った。


 どんどん溢れて膨らむオーラに引っ張られないようなんとか体内に止めようと意識するも、全く意味がない。



「深呼吸だ。安心しろ。我が側にいる」



 ふわふわな毛並みが手に触れ、額に触れた。触れ合っている箇所から温かなものが流れ込んでくる。その温もりは体内を暴れ回る魔力を優しく包み込み、穏やかな通常の流れに戻していく。



「クッ、・・・ぅあ」



 体内を巡る二つの魔力によって負荷がかかり、内側から外側へと鋭い痛みが襲いかかる。あまりの激痛に漏れ出た自身の悲鳴さえも気づかないまま、兎に角痛みに耐えてこの波が過ぎ去るのを待つしかなかった。


 その間もレフが暴れ狂う魔力を落ち着かせてくれている為、少しずつではあるが治まってきている気がする。



 早く魔力操作が上手に出来るようになりたい。初日に夢見た、魔法とかファンタジーに対する憧れなんて甘い考えではなく、今後の生活に必須だからこそ切実に願う。



「今これだけ痛かったら"私"に戻った時はどうなるんだろう・・・」




 つい零してしまった不安は拭えないまま、再度襲ってきた痛みの波に思考を奪われてしまった。



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