表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生エルフ無双! ~筋肉さえあれば魔法など不要という暴論~  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ2巻発売中』
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/70

第53話 覇王の誕生

前回までのあら筋!



レヴァ子のヒロイン感!

 神域の森、南端――。

 草原はない。ないのだ。森を抜けてすぐ、眼前には荒野が広がっている。


 植物の生息域がはっきりと分かれていることからも、神域がこのアズメリア大陸において、どれほど特殊な地であるかがうかがい知れる。

 そもそも、生態系がまるで違っているのだから。



 レーヴの背中で揺られていたレヴァナントのレヴァ子が、薄目を開けた。

 神域を抜けるまでに気を失ってしまったのだ。膝から崩れ落ちるように、唐突に瞳を閉ざして仰向けに倒れた。


 魔素を主な栄養素としているレヴァナントでは、魔素の発生がない神域では呼吸を制限されているようなものであるがゆえ。



「……あ……」

「起きたか」



 レーヴが肩越しに尋ねる。



「ええ。すみません、レーヴ」

「気にするなと昨夜言った。歩けるか?」

「はい。少しずつですが、大地の魔素を吸収しますので」



 レヴァ子がレーヴの背中から滑り降りて、ドレスの皺を両手で伸ばし、顔を上げた。



「そのようなことよりも、皆様に急ぎの報告がありますの。歩きながらでも構いませんので、セイ様やお姉様も聞いてください」



 先頭の誠一郎とフィリアメイラが振り返り、レーヴとレヴァ子を左右から挟むように後退する。



「えっと……何から話していいものか……キュバ子さんからの言伝なのですけれど」



 誠一郎が小さくうなずく。



「教えてくれ。師匠の居場所でも判明したか?」

「いいえ。そうではなく、自由都市ガラディナが何者かに襲撃を受けたそうですわ」



 全員が一斉に足を止めて、表情を険しくした。



「イブルニグスか!? くそっ、思ったより移動速度が速い……!」

「あ、いえ、そうではないそうですわ。イブルニグスはまだガラディナには姿を現してはいません」

「……うむ?」

「セイ様のお師匠様がイブルニグスを度々襲撃なさるので、それがいい具合に魔神の足止めになっているそうですわ」

「では、ガラディナは何に襲われたのだ?」



 誠一郎やフィリアメイラだけではなく、レーヴまでもが困惑の表情を浮かべている。

 当然だ。亜人国家と敵対している魔族は壊滅状態、残るはストラシオンの人類くらいしか勢力がないのだから。

 けれど、人類と亜人は現状、手を結んでいる。



「あ」

「まさか」



 誠一郎とフィリアメイラが、同時に視線をあげた。



 いや、いや。あった。一つだけ。魔族の生き残り集団が。

 早くにライゲンディール地方を脱した、彼らならば。



「ディアボロス・リゼルがランデルトから動いたのか!?」

「そんな……! 長老様たちがリゼルさんと人類の接触を防いでくれていたはずなのに、防衛ラインが破られちゃったってことでしょうか!?」



 二人のエルフが狼狽する。



 防衛ラインとはいえ、エルフがたったの三人だ。いつ抜かれてもおかしくはない。

 エルフの防衛ラインを突破した人類・亜人の連合軍がランデルトのディアボロス・リゼルを攻め、それに怒りを覚えたリゼルが亜人国家に報復措置を執った。

 しかし、そんなことをしてしまったら、もはやイブルニグスを排除できたとしても、人魔戦争の開戦は避けられない。



 けれど、レヴァナントは大急ぎで首を左右に振った。



「それは違いますわ。ストラシオン騎士団と亜人の連合軍の一部は、確かにエルフ様方がストラ街道で敷いた防衛ラインを突破してリゼル一派と交戦したそうですが、肝心のリゼル一派は未だランデルトに逗留中のようです」



 レヴァ子が付け加える。



「きっとリゼル一派にとっては、その連合軍の一部はさしたる問題でもない数だったのでしょう。それに交戦後、連合軍はなぜかすぐに引き上げていったらしいですわ」



 数の詳細は不明ながら、一部なら数十名か、多くても数百名といったところか。



「じゃあ、誰がそんな……? ならやっぱりストラシオンの人王かしら。人間が亜人を裏切ったの?」

「すみません、そこまでは……」



 誠一郎が短い金色の頭を掻き毟り、舌打ちをした。



「何者かは知らんが、このような有事に面倒なことを。それで、ガラディナはどうなったのだ?」

「陥落したそうですわ。亜人王が侵略者の軍門に降り、城を明け渡したそうです。それも、たった一夜にして」



 全員が言葉を呑み、耳を疑った。

 フィリアメイラが代表して、レヴァ子に尋ねる。



「……ちょっと待って。亜人王って獅子王ジルフレアよね。亜人は魔族並に恵まれた肉体を持っていて、その中でも獅子獣人族は桁外れで、さらにその王のジルフレアは戦時には自ら先頭に立って戦線を切り開いていくような猛者って話だったけど」

「ええ。その彼が敗北を認めたのだとか」



 レーヴが珍しく、狼狽したような表情でうめいた。



「我らテュポーン派の魔族も、獅子王にはずいぶんと手を焼かされていた。どれだけの勢力で攻め込めば、あの矜持の塊たるジルフレアが自ら敗北を認めて軍門に降るというんだ。獅子王はテュポーン様と拳を交えて生き残った、まごう事なき怪物だぞ」



 フィリアメイラが誠一郎を見上げた。



「どうします?」

「ガラディナの民はどうなった?」



 レヴァ子が首を左右に振る。



「わかりませんわ。神域を抜けて自然の魔素が戻ったためか、夢がそこで途切れてキュバ子さんに聞きそびれてしまいました」

「むう、もう一度眠れんのか?」

「さすがにもう眠気はありませんわね」



 フィリアメイラがオーバースカートのスリットから片足を持ち上げてつぶやいた。



「何なら気絶してもらうという手もあるけど」

「ヒェ!? お、お姉様、夢魔の力は一晩に一度きりだそうですわっ! 夢に潜る際に使用する精力がもたないからだとかでして!」

「あ、そうなんだ」



 フィリアメイラのぶってえ足がスカートの中へと戻った。

 一同が黙りこくる。


 しばらく歩き、やがて誠一郎がつぶやいた。



「まあいい。どのみち亜人王からの助力はあてにならなかったからな」

「どうしてですか?」

「亜人は人類と共同歩調を取っている。引き換え、おれたち筋肉族は今どちらかといえば魔族側に立っていると見るべきだろう」



 フィリアメイラが顔をしかめる。

 どこもかしこもがくだらない戦争で溢れている。それも、世界の敵を前にしてだ。手を取り合うことができれば、イブルニグスを倒すことだってできるかもしれないのに。



「魔神が国を滅ぼして回っているのに、そんなことを言っている場合ではないんですけどね」

「まったくだ。だが現実問題として、人王も亜人王も、レインフォレストのエルフである我々には手を貸してはくれんだろう」

「長老様たちが、今まさにストラシオン騎士団と亜人の連合軍と戦っているはずですからね。何にせよ、ガラディナには急いだ方がよさそうです」



 そこまで言って、ふと脳裏をよぎった予感に、フィリアメイラは立ち止まった。

 同時に誠一郎もまた。



「……」

「……」

「そんな……嘘でしょ……」

「いや、だが、そうとしか……」



 まるで示し合わせたかのように眉をひそめて額に手を当て、数秒後に互いに視線を絡ませる。



「あの……セイさん……。……侵略者って……」

「ああ……」



 考えてみれば、彼の獅子王ジルフレアを軍門に降らせられる者など、このアズメリア大陸においてはさほど多くない。

 ストラ街道での防衛ラインを突破された後、三人のエルフたちは何を考え、どう動いたのだろうか。


 国境都市ランデルトに入り、ディアボロス・リゼルとともに、人類亜人の連合軍を迎え撃つ。通常ならその道を選ぶだろう。

 通常ならば。あくまでも頭がまともならば、の話だ。

 だが。ああ、そう。だが。





 彼女は脳筋である。





 臭いものは元から絶つ――!


 すなわち、騎士団を派兵し続ける人類の王都ストラシオンを機能不全に陥れた後に、自由都市ガラディナを乗っとれば、ランデルトへ派兵されていた騎士も亜人戦士らも、自国へと戻らざるを得なくなる。


 ゆえに、ランデルトへと攻め込んだ連合軍の派兵は極わずかで、それもすぐに引き上げざるを得なかったと考えれば辻褄が合う。合ってしまう。


 誠一郎が口元に苦い笑みを浮かべ、引き攣った表情でつぶやいた。



「……やってくれたな、ばーさんめ。大陸全土を敵に回すつもりか」

「で、でも、前向きに考えればリガルティア様のおかげでイブルニグスを挟撃できそうですよっ! ポジティブ、ポジティ~ブに考えましょう!」



 見上げた青空に、かつては大陸一の美女でありながら、現在は筋肉という名の無敵の鎧をまとったモヒカン頭の怪物が、笑顔を浮かべて親指を立てた気がした。




ババアの覇道伝説の始まりだ!


(´^ω^) n

⌒`γ´⌒`ヽ( E)

( .人 .人 γ /

=(こ/こ/ `^´  

)に/こ(



    _,,..,,,,_

   / ゜ 3   `ヽーっ

.  l o  ⊃  ⌒_つ

   `'ー---‐'''''"つ

.  l   ⊃  ⌒_つ

   `'ー---‐'''''"


※更新速度低下中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ