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転生エルフ無双! ~筋肉さえあれば魔法など不要という暴論~  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ2巻発売中』
第六章

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第48話 少女覚醒

前回までのあら筋!



愛らしいオークたちの、お・も・て・な・し♥

 誠一郎の問いに、性夜が口を開けた瞬間だった。



「それは――」



 轟音とともに大地が重々しく震動し、オーキストラの建物が揺れる。

 誠一郎と性夜が同時に視線を上げた。



「む、この気配……!」

「来たブヒね」



 性夜が白スーツのオークたちへと向けて叫ぶ。



「全員戦闘準ブヒ! 神影どもを迎え撃つブヒよー!」

「おー!」

「血だるまにして真っ赤に染めたるブヒ!」

「でもあいつら、最初から赤いブヒよ?」

「今宵の(くわ)は血に飢えとるブヒッヒッヒ……」



 どうでもいいことを言いながら、白スーツのオークたちが控え室へと駆け込んでいく。

 性夜が戻ってきたオークらから手渡された大きな鍬を肩に担ぎ、フィリアメイラを見上げて瞳を細めた。



「エルフ女子たん。僕らは身の程知らずの神影を、ちょっくらみんなで寄って集って耕してくるブヒ」

「え、耕すって……」



 オークたちの武器は農業用の鍬だ。オークロードは大斧だったのに。

 性夜は他のオークたちより横幅の広い、大きな鍬を担いでいる。時間が許すならば、なぜ斧にしなかったのかと問い詰めたい。



「神影なんてお芋さんの苗床にしてやるってことブヒよ!」

「……いやだ気持ち悪い……」



 食欲が失せる。

 性夜が斜め上方へと顔を向けて、視線のみをフィリアメイラへと流した。そうして片目を瞑り、低く渋い声で囁く。



「ただ、せっかくブヒを訪れてくれたエルフ女子たんの(ベッド)のお相手をしてやれんかったことだけが心残りブヒ。キミを魅了してしまった僕の罪を、どうか許してほしいブヒ」

「上から目線なところを申し訳ないですが、でっかいお世話です」



 キメ顔のまま、性夜は続けた。



「またまた、照れ――」

「――てません」

「ふ、ふふ。僕、この戦いに生き残れたら、気になるエルフ女子たんと結婚――」

「――しません。しない。絶対」



 フィリアメイラがぴしゃりと言い放つ。



「てか、たぶん神影に挑んでも、性夜さんじゃ何もできないまま死にますよ? ほんとはわかってるんでしょ? 死にに行くおつもりですか?」

「……それでも。それでも僕らイケメンズには、退いちゃいけない時があるんブヒよ。それに、負けると決まったわけじゃないブヒ」

「いえ、死亡フラグも立てちゃいましたし、それがなくてもどう考えても負けます。無駄死になのでやめておいた方がいいかと」

「はががが……っ」



 あまりの冷たい物言いに性夜が膝から崩れ落ちると、他のオークたちが口々に喋り始めた。



「それでもエルフたん。オークタウンはやっぱり僕らの街なんブヒよ。僕らが守らんといかんのブヒ」

「僕らもう、戻ってこられるかわからんから、念のためにだけど、お客さんたちはオークタウンから逃げた方がいいブヒ」

「そうそ。あと、お願いがあるブヒよ」

「なるべくいっぱいの村人たちにも避難を促してほしいブヒ。オークタウンには僕らの家族も住んどるブヒからね。戦えない子豚ちゃんたちやイヤラシい雌豚たちを先導したってくださいブヒ」



 女子供に対してその言い方よ……。

 心の底から思ったけれど、フィリアメイラはかろうじて言葉を呑み込む。



「とにかく僕らで時間を稼ぐブヒ。その間にみんなで遠くにいくブヒよ」

「ぶへへっ、オーキストラは本日で閉店ブヒね。でも、最後の最後で初めてお客さん来てくれて嬉しかったブヒ!」

「ありがとね、エルフ女子たん。ついでに、そこのキモい筋肉エルフも。ばいばいブヒ」



 どうやら自分たちが最初で最後の客だったらしい。

 なんという予算の無駄遣いかと、フィリアメイラは豪奢な内装を見回して思った。



「性夜さん、ほら、行くブヒよ! フラレるのなんて慣れっこでしょブヒ! さっさと起きるブヒ!」

「ぷごっ!? よ、よぅし、オーキストラのみんなで神影のやつをぶっ耕してぇ、明日は朝から酒池肉林の宴を開くブヒィィィーーーーーッ!!」



 性夜を先頭として、白スーツのオークたちが次々と雄叫びを上げながら、夜のオークタウンへと走り出ていく。

 ぽつり残された誠一郎は、テーブルに用意されていたお芋さん料理を豪快に手づかみにして、大口へと放り込んだ。



「セイさん? 何をして――」

「ふむ。まあまあうまいぞ。メイラも食べるといい。酒はだめだが、炭水化物もたまになら悪くない」

「助けに行かないんですか?」

「……助けか~。まあ、そうだな~」



 誠一郎がお芋さん料理を嚥下し、親指をぺろりと舐める。



「しまったな。助けるつもりなどなかったが、これはオークどもに一飯の恩義ができてしまった。肉体こそブヨブヨだが、心には強き筋肉を持つオークどもだ。今見捨てるのは、少々もったいない。将来的にオークロードのようになるかもしれんしな」

「素直に助けてあげたっていいんですよ?」

「フ……」



 フィリアメイラがニコッと笑って、自らも皿の上に乗ったスイートお芋さん(ポテト)をひとつまみ、口へと放り込んだ。

 砂糖は最低限、お芋さんの持つ本来の甘みで勝負している。表面の微かな焦げが食感と風味に一役買っているのも悪くない。



「甘くておいし」

「さて、お互いオークどもに一飯の借りができてしまったところで、食後のカロリー消費を兼ねて神影どもを耕しにいくか」

「はいっ、お芋さんの花のように、パァンと咲かせてやりましょう!」



 二人してオーキストラから飛び出す。

 夜のオークタウンには、すでに悲鳴がこだましていた。オークに限らず、オークタウンへと避難してきた魔族らは荷物を背負い、北へと流れている。

 もうそっちには、都市などないというのに。どこにも行き先など、なくなっているというのに。



「南か」

「行きましょう」



 二人のエルフが魔族たちの流れに逆らって走る。

 そう広くはない街だ。魔族たちの流れが途切れる頃、神影の姿はすぐに視認できた。倒壊した建造物の中で、一体の神影が白スーツを着たオークの首を片手で絞め上げている。



「あ……が……ぷぎぃ……っ」



 どうやら最初の大きな震動は、あの建造物を倒壊させた音だったようだ。

 その左手奥ではさらに十体ほどの神影が、オーキストラの白スーツの性夜たちと対峙していた。



「わたしが行きます! セイさんはオーキストラに合流してください!」

「承知した。大丈夫か?」



 自身は一度、神影に負けている。負けて、無様に気絶し、隣に立つ漢の命を危険にさらした。

 だが。



「“迷いごと叩き潰せ。そこに残ったものが真理となる”」

「経典か」

「試してみたいんです。これから先も、セイさんの隣に立ち続けられるかどうか」

「…………いなくなると……困る……」



 漢の言葉に、心に炎が灯って。



「行ってきます」



 フィリアメイラの歩幅が劇的に伸びる。

 レダ砂漠に棲まうレッドドラゴンの鱗から鋳造されたブーツで地面を抉りながら蹴って、深緑色の長い髪をなびかせて。一陣の風のように。


 三歩、二歩、一歩――ッ!



「ぃ――やあああぁぁぁぁっ!!」



 勢いのままに右足で地面を蹴って中空へと跳躍し、神影の頸部を足裏で蹴り飛ばす。

 骨の砕ける音が響くと同時、神影は絞め上げていたオークを取り落として顔面から瓦礫に突っ込み、跳ね上がって背中から大地へと落ちた。

 だが神影はすぐに跳ね起きて、曲がった頸部を自らの手で押してごきりと治す。



「ギ、ガガ、ギィ」

「ああ、そう。そうよね」



 迷いはなかった。なるほどと、今になってレーヴの言葉を噛み砕くことができた。レッドドラゴンのブーツを与えられたときに、言われたことだ。

 おまえは自分で思っているよりも、強い。


 蹴った感触で理解できた。



「わたし、こんなにも強くなっていたんだ……」



 自分はこれまで、無意識に蹴り脚に加減をしていた。脛骨を守るためだ。全力で蹴れば、自前の前脛骨筋だけでは脛骨は守れない。きっと砕けてしまうだろう。

 けれど今は、レッドドラゴンの鱗を鋳造して作られたブーツがある。

 レッドドラゴンの鱗の持つ強度と、鍛え上げた自前の柔軟なる前脛骨筋が合わされば、脳は無意識のうちにかけていたリミッターを解除する。


 めきり。薄く脂肪をまとった大腿筋が膨らんだ。

 神影が身を低くして、両手の爪を長く伸ばした。


 ――来る!



「ギャガアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーッ!!」



 真っ赤な閃光が、目にもとまらぬ勢いで夜を駆けて迫る。

 フィリアメイラは空間を引き裂く五つの爪をかいくぐり、神影の胴体部に膝を突き入れた。



「……ッ」

「グギィィ!」



 ずむり、強固な皮膚と赤い筋肉を強引に掻き分け、少女の膝が突き刺さる。神影の突進を止めた。たったの一撃で、真正面から。

 まるで、愛する漢のように。


 フィリアメイラが歯を剥いて凶暴な笑みを浮かべた。



 だが――!



 神影は目の前に立つエルフ女子を引き裂くべく、両腕をデタラメに振るう。

 しかし少女は疾風のように地を蹴って後退し、再び蹴って神影の側方へと回り込みながら、その喉元へとブーツのハイキックを叩き込んでいた。



「カ……ッ!?」



 否。とどまらない。少女の蹴りは、そこにとどまらなかった。一瞬たりともだ。

 膨らむ。大腿四頭筋と、そしてハムストリングスが、等しく、同時に、さらに。



「やああああああっ!!」



 蹴り切る。

 神影の首など、そこになかったかのように。空間だけを蹴ったかのように、ほんの一瞬の引っかかりすらもなく。鋭い刃で刈り取るように。


 次の瞬間、神影は地面を捲り上げながら数百歩もの距離を吹っ飛ばされ、手足どころか首まで千切れとび、ただの赤い肉片と化して地面と一体化していた。



「ふぅぅぅぅ……」



 片足を上げた体勢のまま深緑色の長い髪を振って、少女は静かに筋肉神の心理を口にする。



「……強めに、蹴るぅぅぅ……」



 瞳はすでに正気を失っていた。


そうだ、ようやく私の娘らしくなってきたではないか!


      彡 ノ

     ノ

  ノノ   ミ

〆⌒ ヽ彡     

(´^ω^)

⌒`γ´⌒`ヽ( E)

( .人 .人 γ /

=(こ/こ/ `^´  

)に/こ(



     おまえもハゲるといいですぞ、筋肉神!


           ミ彡⌒ミ  。彡⌒ミ。 。彡⌒ミ*・  彡⌒ミ

     .彡⌒ミ |    `ミニ彡"  `ミニ彡"  `ミ。_。/ `

     (・ω・´)∩

     ⊂   .ノ ≡=-

       Oー、_)  ≡=- ←魔法神(再)


※更新速度低下中です。

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