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転生エルフ無双! ~筋肉さえあれば魔法など不要という暴論~  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
第六章

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第47話 芋とオークと男と女

前回までのあら筋!



オーク肉で宴か!?

 オーク族の性夜の名刺に記された場所には、様々な色の煌びやかな魔術灯でギラつく、一軒の建造物が建っていた。

 誠一郎が、風に揺れる回転看板を見上げる。


 イケメンクラブ・オーキストラ――。

 


「ここか」

「うわぁ、何ですか、このギラつき……。やっぱりやめときましょうよ、セイさぁ~ん……」

「メイラは先に帰って休んでいてもかまわんぞ。聞き取り調査など、おれ一人で十分だからな。キミを連れて入ってオークどもを喜ばせるのも癪だしな」



 フィリアメイラは少し考えてから、長い深緑色の髪を揺らして首をかしげた。



「それって、わたしを心配して……?」

「……? 何を言っている。そんなことは当然だろう」



 そう言われると、悪い気はしない。

 ううん、嬉しい。

 頬が微かに緩みかけて、フィリアメイラは意図して表情を引き締めた。



「でも、わたしがいた方が助かるんですよね?」

「やつらは芋と異性にしか価値を見いださぬ欲の駄肉。おれでは真実を聞き出せないかもしれないからな。やつらに口を割らせるには、キミのような女性が適任だ。もちろん、キミの安全が第一だ。無理に連れて行くつもりはないが……」

「なら頑張りますっ」



 結局ついてきた。


 あの性夜とかいう白スーツのオークは気持ち悪いからもう二度と関わり合いになりたくなかったけれど、やはり誠一郎の師匠が女性であることが気になってしまうのだ。

 死の森の洞穴で誠一郎と二百年を共に過ごした女性が、彼にとってどういう人物であるのか。

 それだけは見極めておきたい。この二百と六十年近く、心に秘めてきた恋のために。

 そのためだけに、わたしはここまで来たのだから。


 ああ、真実を知ることが怖い。

 でも。



「いえ、行きましょう」

「ああ」



 スウィングドアを開くと、金銀で意匠の施された広大にて豪華なる空間が、暗色の魔術灯の中で浮かび上がっていた。



「わあ……。案外ちゃんとしてる……」



 凝った造形のテーブルに、革製のソファ、奥の厨房は赤いカーテンで隠されていて、絨毯は踏めば沈むほどの豪華さだ。調度品のセンスもいい。

 けれど、暗色照明のためか、妖しい空間に見える。


 ただ、客の姿はない。

 採算は取れているのかと余計な心配をしてしまうほどに、誰もいない。

 見事なまでの閑古鳥だ。



「ぅぃらっしゃいまっせ~」



 ドタバタと白スーツのオークたちが走ってきて、フィリアメイラを迎えるために二列に並び、片膝をついてテーブルまでの道を作る。

 道の果てにあるは、意匠の施された豪華なテーブルと、その前に立つナンバー1オーク。すなわち、一輪の花を手にした性夜だ。


 性夜が流し目で微かにうなずき、口を開けた。



「やあ、エルフの子豚ちゃん。やっぱり僕に逢いに来てくれたブヒね」



 フィリアメイラはオークたちの作ってくれた道を真顔且つ早歩きで進み、なんの躊躇いもなくそのぶってえ足を性夜の顔面にめり込ませた。



「ぶむヒっ!!」

「誰が子豚かっ! そこは普通子猫とか子鹿でしょうが!」

「おごごごむぅ……ひ、ひどいブヒよ~……」



 しかし言葉とは裏腹に、性夜の表情はエルフ女子に足蹴にされる悦びに満ちていた。



「でもでもぉ~、そぉ~んなところも、か・わ・い・い、ブヒィィン! ぶひゃあ、言っちゃったっ! エルフ女子に言っちゃったっ! これはもう今夜イケる気がするブッヒィ!」



 性夜が蹄の両手で顔を覆って、クネクネと三段腹をくねらせる。

 取り巻きオークたちが鼻息も荒く叫んだ。



「さっすがオーキストラのナンバー1オークブヒ! 僕らにはそんな大胆な褒め言葉、乙女には言えんブヒよね!」

「そうそう。僕らだとせいぜい、ハァハァ……今日の下着は何色ですかぁぁ、って言うことくらいしかできんブヒからねえ?」

「さすが、性夜さんブヒ! そこに麻痺れる呆れ果てるぅ~!」



 性夜が芋の花を口元にあてて、渋い声でつぶやく。



「それほどでもあるブヒよ。でもこんなの、みんなもすぐ言えるようになるブヒよ?」



 オークたちがボタンの弾け飛びそうな腹を揺らして一斉に笑った。

 フィリアメイラの目が死んだ。



 仲いいな、こいつら……。



「まあ、わたしが可愛いのは否定しないけど」



 個性ではない。エルフだからだ。

 誠一郎もそうだが、実際にエルフとして転生してからというもの、転生前の面影を残しながらも、かなり整った顔立ちになっている。


 それに、褒められるのはこそばゆいけれど嫌いじゃない。

 誠一郎はいつも、つけた筋肉に対しては褒めてくれても、髪型だのアクセサリーだの服装だのといった外見に関しては、ほんとに何も言ってはくれないのだから。


 もっとも、異性の外見だけを見るような男であったならば、自身がこうも長期間にわたって惹かれることはなかったのだけれど。


 乙女、ため息をつく。



「さあさ、エルフ女子たん。お席につくブヒ。――ブヒたち、お芋さん焼酎をお持ちするブヒ!」

「ガッテンブヒ!」

「あ、いえ、わたしたち、今日は聞きたいことがあって寄っただけですから、すぐに帰ります。なので、ここで」



 性夜が蹄の右手を胸にあて、流し目でこたえた。



「僕かい? 僕のスリーサイズなら、バスト百、ウェスト百四十、ヒップ百のキュッ、ボンッ、キュッさ。どう? 魅惑ボディしとるでしょ?」

「まったく聞いてません。死ぬほどどうでもいいわってかもう死んで?」

「ブヒャヒャ、冗談ブヒよ! 冗ぉ~談っ! まあま、こちらとしても無理矢理お引き留めするようなことはせんブヒから、とりあえず席についてほしいブヒ。オーキストラみんなで、おもてなしするブヒ」



 両手を蹄鉄の手につかまれながら、フィリアメイラは背後に立った漢に視線をやった。



「……どうしましょう?」

「オークたちよ。おれたちにはあまり持ち合わせがない。支払うための金銭が足りなければ少々暴れるが、それでいいか?」



 なんて大胆な食い逃げ宣言なの。むしろ清々しい、ううん、とても漢らしいわ。ステキ。

 …………断るための方便だと思いたい。そうであってください。



 ところが誠一郎の言葉を受けても微笑みを崩さないナンバー1オーク性夜から出た言葉は、さらにフィリアメイラの虚を衝いたものだった。



「お金なんていらんブヒ。置いていきたかったら、置いていきたいだけ置いていけばいいブヒよ。ブヒたちはただ、オークタウンに逃げてきた人たちに元気になってほしいだけブヒからね」



 オークたちは向かい合いながら上半身を横に倒して、「ねー?」と言い合っている。

 誠一郎とフィリアメイラが、ぽかんと口を開けた。



「そーブヒそーブヒ」

「楽しくお芋さん焼酎を酌み交わすことに意味があるブヒ」

「んで、明日からまた、にっこにこになるブヒよ」

「僕らオーキストラがおる限り、オークタウンを涙で沈ませたりはせんブヒ!」

「そ、そそ、そしてあわよくば、このオークタウンを訪れた旅人の女子たちにイタズラしたいブ――ギャッ!?」



 とりあえず最後の発言をしたオークだけは側頭部を蹴って、ふかふかの絨毯に転ばせておいた。



「……そっちの本音……は……出しちゃ……だめだった……ブヒか……?」

「だめに決まっとるブヒよ……」



 絨毯に転がって白目を剥いたオークの足を持って、裏方のオークたちがカーテンの向こう側へと引きずっていく。チームワークは抜群だ。

 性夜が苦い笑みを浮かべてつぶやいた。



「ごめんブヒ。本音がチョロ漏れしたブヒ」

「正直ね……」

「僕ら、嘘はつかんブヒよ。オークタウンを笑顔にしたいのも、女子たんたちにイタズラしたいのも、両方本音ブヒ。つらいことや痛いことを経験して、オークタウンに流れてきた人たち、みんなみ~んな、幸せになればいいブヒもんね。みんなでお芋さん育てて、ここで生きていけばいいブヒ」



 性夜はつま先立ちになって、蹄の両手を目一杯広げて微笑む。



「きっと楽しいブヒよ。イケメンクラブ・オーキストラは、そのためにあるブヒ。女の子が流す涙の一滴でも止めることができたなら、ブヒたちはそれでいいんよ」



 判定が難しいところではあるけれど、悪いオークではないような気がしないでもないような、それでいてそうでもないような……。


 性夜がフィリアメイラの手を引っ張った。



「さあさ、エルフ女子たん。こっちいらっしゃいなブヒ。焼きお芋さんに、お芋さんの煮っ転がし、蒸かしお芋さんや、女子が大好きなスイートお芋さんも用意しとるブヒ。もちろんお芋さん焼酎も」



 スイートポテトには惹かれるものがある。



「みんなブヒたちが畑で耕したお芋さんでできとるブヒー!」

「せっかく来たんだから、エルフ女子たんは食べてくといいブヒ」

「セ、セイさぁ~ん……」



 フィリアメイラの視線を受けて、誠一郎が尋ねる。



「おい、貴様らの芋は、男子が食ってはいかんのか?」



 明らかに態度を変えた性夜が、笑顔を消して面倒くさそうに言い捨てた。



「好きに食えばいいブヒ? 男はどっちでもいいブヒよ? 芋食って屁ぇこいて、この街のために働くがいいブヒ。おまえは僕の次に強そうブヒから、オークタウンの用心棒にでもしてやってもいいブヒ! ただし、お給料は芋払いブヒよ?」

「ほう……?」



 許可は出た。食べてもいいと、出たのだ。

 不承不承でありながら、歓迎はすると。オークたちは結論づけた。


 だが、そう。

 だが。


 漢は空気を読まなかった。

 唐突に目を見開いて、雷轟のごとく叫ぶ。



「だが断る! おれたち筋肉族にとって、炭水化物だけの食事など以ての外! 貴様らの情けなくも弛んだ腹は――」



 ゴキリ、ゴキリ、両手すべての指を鳴らして、誠一郎が不気味な笑みを浮かべながらオークたちに影を落とした。



「クック、ここで切り離してやろう」

「ブ、ブヒ? なんブヒ……?」

「な、ななな何をするつも……」

「待って、セイさん!」



 強制ダイエットを施すつもりだ。

 かつて誠一郎はオーク族と遭遇した際、その両手の握力のみで、オーク族の(バラ)肉を抉り取るという血の惨劇(強制ダイエット)を執行した。

 そのことを思い出し、フィリアメイラは大慌てで誠一郎の腕に自身の腕を絡めて引いた。



「セイさん、セイさん!」

「ん? なんだ、メイラ?」

「お師匠様のことを聞きに来たんでしょ?」



 ここで喧嘩を売ってしまったら、せっかくの情報を得る機会が失われてしまう。自身の恋になるべく早く決着をつける意味でも、それは避けたい。



「おおっ。そうか。あまりにゴチャゴチャと長いこと喋っていたもんで、忘れていた」

「な、何ブヒ?」



 誠一郎が性夜に向き直る。



「オークよ。ディアボロスを名乗る女が、この地を訪れなかったか?」



話が進まなすぎてハゲそう


      彡 ノ

     ノ

  ノノ   ミ

〆⌒ ヽ彡     

(´・ω・)

⌒`γ´⌒`ヽ( E)

( .人 .人 γ /

=(こ/こ/ `^´  

)に/こ(


※更新速度低下中です。

 しばらくはこの状態が続きます。

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